二面性の陰日向
ある時、僕は行きつけの飲み屋でとある初老の男性に出会った。
その男性はたまたま隣に座っていた僕に話しかけてきた。
話を聞くとその店のママの知り合いらしい、軽く紹介されて話をする事になった。
男性は僕の顔をじっと見るなり「オドオドしている」と言った。
「そうですか?」
そう聞き返すと男性は頷いた。
「挙動ではなく、目がオドオドしている。泳いでいる訳ではないが自信が無いのが見て分かる。」
何かを見透かされているような感覚にドキっとしながらも、不思議な人だと感じた。
「でも良い物もたくさん持っている、自信を持っていないのが不思議でならない。自信を持ちなさい。」
何かたくさん話をしたのは確かだが、覚えている会話はこれだけだ。
後日、その男性の自宅を尋ねていた。
何か気になって飲み屋のママにコンタクトをとってもらったのだ。
何故かまた話をしたくなった。
初対面で気になっている所を見透かされたからだろうか、それとも自分がもっている「良い物」を知りたかったからだろうか。
その男性は飲み屋で出会ったあの時とは少し違い、お酒が入っていないからだろうか、とても穏やかに話をしてくれた。
2時間みっちり話をした。
男性自身の話、僕の話。
その中でも特に印象に残っている話がある。
「人は二面性があって深みが増すんだ。」
この言葉がずっと頭に残っている。
裏表が無い人、これ良い意味で言われる言葉だと僕は思っている。
でも裏がある事を良い意味で話す人に、僕は初めて出会った。
「精神論が話したいなら、いつでも来なさい。飲みでもいい。」
そう言って男性は僕を見送ってくれた。
本当に不思議な出会いだったと思う。
また話したいな。
気難しくて、話す事も難しい時があるけど。
不思議とそう思える人だった。




