第九十四話 ボードリックス公爵家の次期の当主
わたしはさらに胸が熱くなり、涙声で、
「国王陛下、そのような待遇をしていただき、まことにありがとうございます」
と言った。
オクタヴィノール殿下も、
「父上、わたしからも御礼を申し上げます」
と涙声で言った。
すると、国王陛下は、
「よし。これで婚約のことは認めた。しかし、これはあなたたちにとって第一歩にすぎない。あなたたちが婚約者どうしになり、そして、結婚するということは、それだけ重荷を背負うことになるということは忘れてはいけない。あなたたちにとって、一番大切なことは、この王国の為に尽くしていくことだ。それは、わたしが言うまでもなく、二人とも理解してくれていると思う」
と厳しい口調に戻って言った。
それに対し、オクタヴィノール殿下は涙を拭くと、
「もちろん理解しております。リディテーヌさんと二人一緒に、この王国の為に尽くしてまいります」
と応え、わたしも涙を拭くと、
「わたしも理解をしております。オクタヴィノール殿下と一緒にこの王国の為、尽くしてまいります」
と応えた。
国王陛下は、
「二人の決意を聞いて、わたしはうれしい。今の決意を忘れることなく、この王国を二人でより一層発展させてほしい」
と言った。
そして、わたしの方を向くと、今までとは違って、少し微笑みながら、
「わたしとしても、このような素敵な方がオクタヴィノールの婚約者、そして、やがては結婚して、王妃になってくれるのはうれしいことだ」
と言った。
国王陛下が自分の家族以外に笑顔を見せることは、ほとんどないと聞いていた。
わたしに対して。その微笑みを向けてもらえるのは、心の底から喜んでいるということなのだと思う。
胸がまた熱くなってくる。
王妃殿下も、わたしの方を向き、
「リディテーヌさん、オクタヴィノールと二人で力を合わせて、この王国をより一層発展させてくださいね」
と微笑んでくれた。
そして、オクタヴィノール殿下もわたしに微笑んでくれている。
胸がますます熱くなり、また涙がこぼれてきた。
わたしは、オクタヴィノール殿下と一緒に、国王陛下と王妃殿下、そして、この王国の人たちを幸せにしていきたいと強く思うのだった。
オクタヴィノール殿下とわたしの婚約は、想像以上の速さで進んだ。
わたしたちが舞踏会で出会ったのは、七月。
それから八月下旬にはルクシブルテール王国の国王陛下と王妃殿下に婚約者として認めてもらった。
まだ二か月近くしか経っていない。
婚約式自体は、学校卒業後の翌年四月初旬になったものの、それは形式的なものだった。
わたしたちは、この八月下旬以降、婚約者どうしとしての扱いを受けていた。
結婚式は、オクタヴィノール殿下とわたしが学校を卒業した一年後、わたしたちが二十歳になった後の、七月上旬に行われることが決まった。
わたし自身は、翌年三月に学校を卒業した後、四月上旬にルクシブルテール王国の王宮に行くことにしていた。
その場所で婚約式を終えた後は、王太子妃になる為の準備を行うことになる。
そして、同じく学校を卒業するオクタヴィノール殿下は、卒業後の四月から国王陛下から権限の多くが移譲されることになったので、そのオクタヴィノール殿下の政務の補佐もすることになった。
もともとリディテーヌは、お父様の方針により、領内経営についての教育を受けていた。
いずれボードリックス公爵家の当主になった時に、必要になるということだった。
その教育が、オクタヴィノール殿下の補佐をするに際し、役に立つことになったのだ。
わたしはオクタヴィノール殿下に嫁ぐことになった。
そして、ボードリックス公爵家の次期の当主の方も私に決まった。
お父様が決めたのだ。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。




