第九十話 王宮に入る
そして、わたしたちは、わが屋敷を出発してから二日後の夕方、ルクシブルテール王国の王都にある王宮に入った。
わたしと側近・護衛は、それぞれ部屋を割り当てられた。
しかし、少しの間休んだ後、国王陛下と王妃殿下の謁見が待っていた。
わたしは、その部屋で、持ってきた中で一番いいドレスに着替えた。
迎えに来たオクタヴィノール殿下は、
「リディテーヌさん、あなたはいつもにも増して、美しい」
とうっとりとした表情でわたしを褒めてくれた。
わたしはうれしかった。
わたしとすれば。その場で抱きしめてほしかった。
しかし、さすがにそれは無理だったので、残念ながら断念せざるをえなかった。
そして、オクタヴィノール殿下と一緒に、国王陛下と王妃殿下の待つ謁見の間に向かった。
いよいよオクタヴィノール殿下との婚約を認めてもらえるかどうか、決まる時がきた。
緊張してくる。
オクタヴィノール殿下は、わたしとの婚約のおおよそのところを、国王陛下と王妃殿下には認めてもらっていると聞いている。
ただ、それでも、わたしを謁見して幻滅されたら、認めていく方向だったのを、認めない方向に変えてしまうことも、可能性としてはないとは言えない。
しかし、そうは言っても、わたしに言えるのは、
「オクタヴィノール殿下への熱い想い」
「オクタヴィノール殿下と一緒に幸せになること」
「ルクシブルテール王国の人たちを幸せにしていくこと」
ということだ。
この想いを、一生懸命伝えていく。
そうすれば、国王陛下も王妃殿下も、わたしのことをオクタヴィノール殿下の婚約者として認めてくれるだろう。
わたしは、オクタヴィノール殿下と一緒に謁見の間に向かいながら、そう思うのだった。
そして、わたしは今、国王陛下と王妃殿下の謁見を受けていた。
緊張している。
もしオクタヴィノール殿下が一緒にいなければ、胸のドキドキは頂点にまで達していたかもしれない。
国王陛下は、六十三歳。
ゲームでは、オクタヴィノール殿下ルート以外では、主人公オディナティーヌと話すことはないので、名前の登場だけになる。
オクタヴィノール殿下ルートでは、体調が良くない状態で、主治医にもそれほど長くはもたないと言われていたので、オクタヴィノール殿下の婚約を急いでいた。
しかし、オクタヴィノール殿下とわたしが婚約の方向に向かい始めてからは。体調が回復していく。
二人の婚約に向けての動きが、国王陛下の体にいい影響を与えることになったのだと思っている。
わたしは、オクタヴィノール殿下とわたしの婚約も、同じように国王陛下の体にいい影響を与えることを願っていた。
国王陛下は、今の時点でも体調は良くないと聞いていた。
その為、力のない姿での対面になる可能性もあると思っていた。
しかし、実際に対面すると、威厳があり、圧倒されてしまう存在だ。
大臣クラスでさえも、毎回、国王陛下の前では、その威厳に圧倒され、萎縮してしまうことが多いと言う話。
今だけなのかもしれないが、体調が良くないということはないように思えた。
その国王陛下に圧倒され、萎縮することがないオクタヴィノール殿下は、それだけでもすごい方だと思う。
わたしはその点でもオクタヴィノール殿下に心が傾いていく。
ルクシブルテール王国内では善政を行っていて、国民からは怖れられつつも尊敬されている。
王妃殿下は五十一歳。
穏やかな顔立ちをしていて、美しい方だ。
やさしく、しかも芯の強い人柄で、国民に慕われている存在だ。
剛の国王陛下と柔の王妃殿下。
お互いに支え合って、理想的な形だと言える。
デュヴィテール王国にまでその名声は聞こえてくる。
こうして対面をするだけでも、自分が小さい存在に思えてしまう。
この方たちの前で、話をすることができるのだろうか?
特に国王陛下には圧倒され、萎縮してしまい、どもってしまって、何も言えなくなってしまうのでは?
そういう弱気な気持ちにもなってくる。
しかし、そういうことを言っている場合ではない。
ここで、わたしが国王陛下と王妃殿下を幻滅させたのでは、オクタヴィノール殿下に申し訳ない。
そして、継母には、ここぞとばかりに反撃されるだろう。
ここはわたしの運命を決める時なのだ!
わたしは心を整えた後、
「国王陛下、そして王妃殿下、初めてお目にかかります。わたしは、ボードリックス公爵家令嬢リディテーヌと申します。本日は招待をしていただき、まことにありがとうございます」
とあいさつし、頭を下げた。
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