第八話 わたしの意地
わたしはこの時点で、ようやく自分の考えが甘かったことに気づいた。
通常であれば、ボードリックス公爵家ほどの名門であれば、いくら殿下でもすぐに「処断」を下すこと
などできない。
わが公爵家は、王国の中でもかなり大きい軍事力を持っていて、敵に回し、妥協ができなければ、戦争にまで発展する可能性があるからだ。
しかし、ここまでルシャール殿下や継母、そして、オディナティーヌが言うということは、既にボードリックス公爵家の中は、三人の意見に支配され、わたしのことを排斥するということでまとまっているのだろう。
多分、誰も反発することはなかったのだと思う。
寂しい話だ。
わたしは、この三人の策略によって「処断」されることになったことを、今さらながらに認識した。
認識するのが遅すぎたのかもしれない。
今日のことは、三人の間で細かい打ち合わせが行われ、作戦として組み立てられたのだろう。
そして、わたしはその作戦の通りに動かされてしまい、三人が最終的に意図していたと思われる「処断」というところに到達してしまった。
自分のことながら、三人のやり口は見事という他ない。
いや、ただ単にわたしがお人よしだっただけなのかもしれない。
今となっては笑うしかないだろう。
出席者たちも、今までのわたしの評判からして、こういう経過をたどっていけば、「処断」されるのは当たり前だと思っているようだ。
誰もルシャール殿下のことを止めようとする人はいない。
もちろん、ここでルシャール殿下を止めようとすれば、今度は止めようとした方が処断されるかもしれないので、仕方がないことだとは言える。
とはいうものの、わたしに対しては、誰も同情する様子がないのは心にこたえてくるものだ。
それどころか、声にこそはださないが、わたしが「処断」されるのを喜んでいる雰囲気でさえある。
ルシャール殿下は、
「リディテーヌよ。最後のチャンスをあげよう。今までのことを全面的に反省するならば、幽閉ですませてやる。きみだって、ここで生命を失いたくはないと思っているだろう」
と気持ち悪いぐらいのやさしい声で言ってきた。
継母も、
「ルシャール殿下がせっかくあなたの為を思っておっしゃっているのですから、従ったらどうです」
と言ってくるし、オディナティーヌも
「これはあなたに対して、ルシャール殿下が下さった最後のチャンスです、従ってください」
と言ってくる。
二人ともルシャール殿下と同じで、表面上はやさしい声だ。
しかし……。
三人の突然の態度の変更で戸惑ったが、これはわたしを一旦ホッとさせて、その後、ものすごい打撃を与えようとしているのだろう。
それで三人は、
「こんなことでだまされるなんて、おかしくてしょうがない」
と口々に言って、わたしを笑いものにする気なのだろう。
その手にはのらない。
もはやわたしは、どういう対応をしようとも「処断」されてしまう存在でしかない。
ならばせめて手厳しく申し出を断り、意地を見せておきたい。
そう思ったわたしは、
「ルシャール殿下やお母様、そして、オディナティーヌが何と言おうとも、謝る気は全くありません。わたしは今まで、正しいことをずっとしてきたのですから」
と胸を張りながら言って、申し出を断った。
一瞬、爽快な気持ちになる。
「よくぞわたしの申し出をコケにしてくれたものだな! ここまできみに気配りをしてきたのに、それを無碍にするとはな!」
ルシャール殿下は怒鳴ってくる。
「面白い」
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