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第七十四話 わたしはオクタヴィノール殿下と二人だけの世界に入っていく

 わたしはオクタヴィノール殿下とキスをした。


 わたしたちは相思相愛になり、恋人どうしになった。


 舞踏会で会い、一緒にダンスを踊ってから、一週間目のことだった。


 このわずかの間に、お互いの恋する心は、一気に増大していった。


 わたしは、もともと「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」でのオクタヴィノール殿下が好きだったし、推していた。


 しかし、この一週間のオクタヴィノール殿下への想いの増大は、わたし自身が困惑するほどのものだった。


 そして、オクタヴィノール殿下とキスをした後は、オクタヴィノール殿下なしでは生きていられないと思うようになるまで、オクタヴィノール殿下のことが好きになっていた。


 わたしたちは、結構長い時間、キスを続けていた。


 やがて、わたしたちは唇と唇を離す。


 わたしは少しガックリした。


 夢のような時間の終わりがきた気がしたからだ。


 それほどオクタヴィノール殿下とのファーストキスは、素敵なものだった。


 オクタヴィノール殿下は、


「リディテーヌさん、これはわたしにとってのファースキスです、一生忘れられない素敵なキスになりました。わたしはあなたのことが好きです。わたしはリディテーヌさんに夢中になっています」


 と言ってくれた。


 わたしも、


「オクタヴィノール殿下、これはわたしにとってもファーストキスです。一生忘れられないほどの素敵なキスになりました、ありがとうございます。わたしもオクタヴィノール殿下のことが好きです」


 と応える。


 わたしたちは見つめ合った。


 オクタヴィノール殿下は、キスだけではなく、その先を望んでいるように思う。


 このまま進めば、恋人どうしとしての最高の段階の一つである、二人だけの世界に入っていけそうな雰囲気になってきていた。


 わたしは、今までの人生では、出発点の人生の時に、二人だけの世界に入ったことはある。しかし、この人生では、その後浮気をされてしまい、つらい思い出になっている。


 また、出発点の人生より前の過去世で、経験している可能性はある。


 でも、それは、思い出そうとしても思い出せない。


 そして、転生一度目では経験することはできなかった。


 この転生一度目は、わたしの前世ということにもなるので、経験できなかったことは、今生きているわたしに大きな影響を与えているようで、そのようなことをほんの少し思うだけでも恥ずかしい気持ちになってしまう。


 それでもわたしは、恥ずかしさと戦いながら、今後、もしオクタヴィノール殿下と相思相愛になり、キスまで進む時が来るならば、キスの後、すぐに二人だけの世界に入っていけるよう、心の準備を一生懸命行っていた。


 今、わたしは、その二人だけの世界に入ろうとしている。


 キスの後、少しおさまり始めていた胸のドキドキは、また大きくなり始めていた。


 まだ心の準備は万全とは言い難い。


 しかし、わたしはオクタヴィノール殿下のことを心から愛している。


 恥ずかしがっている場合ではない。


 わたしはオクタヴィノール殿下の言葉を待った。


 そして……。


「リディテーヌさん、わたしはあなたと恋人どうしとして、もう一段高いところに進んで行きたいと思っています。そして、わたしはあなたのことをもっと良く理解したいのです」


 オクタヴィノール殿下は、恥ずかしさを抑えつつ、そう言った。


 その瞬間、わたしに強烈な恥ずかしさが襲ってくる。


 二人だけの世界へのお誘い。


 わたしは、今までそのことに対して、一生懸命、心の準備をしてきたとは言うものの、この恥ずかしさはつらいものだ。


 しかし、何とかそれをこらえていく。


 そして、わたしは、


「わたしはオクタヴィノール殿下のものです。オクタヴィノール殿下、好きです。よろしくお願いします」


 と応えた。


 オクタヴィノール殿下は、


「ありがとうございます。リディテーヌさん、愛しています」


 と言うと、唇をわたしに近づけていく。


 わたしも、


「わたしもオクタヴィノール殿下のことを愛しています」


 と言った後、オクタヴィノール殿下に唇を近づけていく。


 そして、唇と唇が重なりあった後、わたしたちは二人だけの世界に入っていった。


「面白い」


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