第七十三話 ファーストキス
わたしはオクタヴィノール殿下の想いに応ええなければならない!
そう強く思ったわたしは、心を整えた後、
「オクタヴィノール殿下、わたしに対するもったいないお言葉、恐縮しております。そして、ありがたいという気持ちで一杯になっております。わたしもオクタヴィノール殿下と先程の舞踏会で出会った時、『運命の男性』とお会いすることができたと思ったのです。そして、ダンスをオクタヴィノール殿下と一緒に踊っている内に、オクタヴィノール殿下のダンスの上手さに心を奪われるとともに、オクタヴィノール殿下に対する好意も高まってきたのでございます。そして、ダンスが終わった時には、オクタヴィノール殿下のことを恋焦がれる存在になっておりました。それからのわたしはオクタヴィノール殿下のことが好きで、好きで、たまらなくなっています。わたしはオクタヴィノール殿下のような素敵なお方にふさわしくなるには、まだまだ自分を磨いていかないといけないと思っています。こういうわたしではございますが、恋人として受け入れていただけき、またその後、妃として受け入れていただけるのであれば、これほどうれしいことはございません」
と言った。
出発点の人生、転生一度目と通じて、今までで一番熱意を込めて言った言葉だった。
「それでは、あなたはわたしの告白を受け入れていただけるのですね?」
「もちろんでございます。これほどの名誉なことはありません。そして、うれしいです」
「ありがとうございます。わたしもこれほどうれしいことはありません」。
オクタヴィノール殿下はそう言うと、少し涙をこぼし始めた。
こうしてわたしたちは相思相愛になった。
ラブラブな恋人どうしになった。
わたしも胸が熱くなってくる。
そして、涙がこぼれてきた。
ああ、オクタヴィノール殿下、好きです!
オクタヴィノール殿下は涙を拭くと、席から立ち上がる。
そして、わたしの席の前に来ると、わたしの手を取った。
オクタヴィノール殿下のやさしさが流れ込んできて、わたしの心は沸き立っていく。
わたしはオクタヴィノール殿下と手をつなぎながら立ち上がった後、オクタヴィノール殿下と恋人とつなぎをしながら、歩いていく。
そして、オクタヴィノール殿下の寝室に案内された。
わたしの胸のドキドキはどんどん大きくなってくる。
寝室に入った後、オクタヴィノール殿下とわたしはベッドの上に座り、向き合った。
オクタヴィノール殿下は、
「わたしはあなたと今すぐにでも結婚したい。それほどあなたのことが好きなのです」
と熱意を込めて言う。
この熱意を受けて、わたしの胸はますますドキドキしていく。
「わたしもオクタヴィノール殿下のことが大好きです」
「リディテーヌさん……」
「オクタヴィノール殿下……」
オクタヴィノール殿下とわたしは見つめ合った。
ああ、なんと凛々しい表情……。
うっとりした気持ちになってくる。
そして、オクタヴィノール殿下はわたしのことを抱き寄せた。
そのまましばらくお互いに抱きしめ合う。
出発点の人生でも、愛した人と抱きしめ合い、キス、そして二人だけの世界へと進んでいくことはできた。
しかし、その後、浮気をされてしまったので、今ではつらい思い出になってしまっている。
一度目の転生の時は、婚約者ということで、ルシャール殿下とは、キスはまだしていなかったものの抱き合ったことはあった。
ルシャール殿下はリディテーヌに対して、「愛の言葉」を言っていた。
ルシャール殿下も、最初の内は、リディテーヌのことは好きで、そう遠くない時期にキスするところまで進みたいと思っていた。
リディテーヌの方は、ルシャール殿下のことを好きなことは好きだった。
しかし、熱烈に恋をするというところからは遠かった。
それでも好きという気持ちはだんだん大きくなっていたし、キスをしたいと思うようにはなってきていた。
しかし、ルシャール殿下が自分に向けてきたほどの「愛の熱量」は持っていなかった。
ルシャール殿下の愛は一方的だったと言わざるを得ないところがある。
その為、二人を相思相愛の仲というのは難しいと思っている。
リディテーヌは。もともとそういうキャラクターなので、仕方がないとは思うものの、ルシャール殿下に対する「愛の熱量」が強ければ、二人は相思相愛になり、その後の状況も変化した可能性はあったのでは、と思うこともある。
今回は違う。
オクタヴィノール殿下とわたしは相思相愛だ。
こうして抱きしめ合っていると、お互いのやさしい気持ちが伝わってくるよう気がする。
「リディテーヌさん、好きです。愛しています。わたしはあなたを幸せにします」
「オクタヴィノール殿下、わたしはオクタヴィノール殿下に尽くしていきます。そして、一緒に幸せになっていきたいと思います」
オクタヴィノール殿下は、わたしの唇にその唇を近づけてくる。
わたしの心は沸騰していく。
そして、重なり合っていく二人の唇と唇。
オクタヴィノール殿下とわたしのファーストキス。
ああ、オクタヴィノール殿下、大好きです!
わたしは幸せな気持ちになっていった。
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