第七十話 わたしとルシャール殿下、そして、継母と義理の妹
ルシャール殿下にとっては、リディテーヌは、決して嫌なタイプの女性ではなかった。
だからこそ、ルシャール殿下は、リディテーヌに対して、「愛の言葉」をささやいてきたのだと言える。
そういうルシャール殿下だったので、リディテーヌについての悪い評判は誇張した話だろうと思っていたのだ。
リディテーヌのその姿を壊そうとしたのが継母とオディナティーヌだった。
二人は、リディテーヌが学校に通って六年目、すなわち学校での最終年の年の四月、涙ながらに、リディテーヌからイジメを受けたという話をルシャール殿下にしたのだ。
二人は、イジメられた話をして、ルシャール殿下の同情を得ようとしていたのだろう。
しかし、継母の方はそれだけでなかった。
これを機にオディナティーヌをルシャール殿下の婚約者にしたいと思ったのだ。
「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」は、継母とオディナティーヌの方のサイドに立つので、描き方は、
「『悪役令嬢』のリディテーヌから、心やさしい主人公のオディナティーヌがルシャール殿下を救う」
というものになっている。
したがって、継母の行動も。自分の野心というよりは、ルシャール殿下とオディナティーヌの為という描かれ方だ。
実際この世界で生きていると、オディナティーヌの方はともかく、継母はかなりの野心家で自分の利益の為に動いている女性だと思うようになってくる。
リディテーヌを「悪役令嬢」として強調する為に継母を良く描こうとしたのは、理解はする。
でも、今ここで生きているわたしにとっては、なかなか納得はし難いところだ。
ただ、この時のルシャール殿下は、決断をするほどのことではないと思っていた為、何も動かなかった。
その後も二人は、ルシャール殿下にイジメの話をしたのだけれど、ルシャール殿下が動くことはなかった。
しかし、リディテーヌがこの二人だけではなく、学校内でもイジメをしていて、ルシャール殿下の前以外では、わがままで傲慢な態度をとっているという話が、ルシャール殿下のもとに入ってくるようになってきた。
継母やオディナティーヌの話に触発され、リディテーヌの悪い評判をルシャール殿下に伝える人が増えてきたのだ。
リディテーヌは、その後もルシャール殿下の前では、淑女として振る舞い続けていた。
しかし、リディテーヌの悪い評判を聞き続けてきたルシャール殿下は、リディテーヌに対して、淑女という認識を持つことはは次第にできなくなっていった。
そして、ついに、
「婚約者としてふさわしくない」
とルシャール殿下も認識するようになった。
そして、決断をすることになったのだ。
転生の記憶が戻ったわたしからすれば、リディテーヌはこの決断をさせるほどの酷いことはしていないと思っている。
ただ、ルシャール殿下以外の人たちにやさしくできなかったことは確かだ。
それが。結果的にルシャール殿下を怒らせることになってしまった。
この二の舞は避けたい。
オクタヴィノール殿下と婚約まで到達した場合では、わたしはデュヴィテール王国の人間で、ルクシブルテール王国の人間ではないので、オクタヴィノール殿下にできるのは、できるのは「婚約破棄」だけだ。
「ボードリックス公爵家からの追放」「処断」をする権限は、オクタヴィノール殿下は持っていない。
しかし、この「婚約破棄」自体がとてもつらいこと。
わたしはオクタヴィノール殿下に、わたしの悪い評判が耳に入っているかどうかを聞くことにした。
聞きづらい話ではある。
でもここで聞いておき、しっかりオクタヴィノール殿下との意思疎通をしておく必要がある。
わたしは今、生まれ変わる為の努力を一生懸命している。
しかし、そのことを理解していない人たちはまだまだたくさんいた。
この人たちが、わたしの今までの悪い評判をオクタヴィノール殿下に伝える可能性がある。
そしてそれが、オクタヴィノール殿下とわたしの仲を壊す要因になっていくと思っていた。
聞きたくはないけれど、聞かなくてはならない。
そう思ったわたしは。
「オクタヴィノール殿下、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
と言った。
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