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第六十七話 二人だけのお茶会の始まり

 馬車はオクタヴィノール殿下の屋敷に着いた。


 この屋敷は、ルクシブルテール王国のデュヴィテール王国における出先機関になっている。


 オクタヴィノール殿下は、ここからいつも学校に通っている。


 転生一度目は、ここに来たことはなかったので、実際に来たのは初めてだ。


 王都の中にある屋敷の中でも、有数の広い敷地を持ち、屋敷自体も大きい。


 わがボードリックス公爵家の屋敷は、この王国の中でも二番目に家格が高いこともあり、規模は大きいのだけれど、それを凌駕するほどのものだ。


 もし戦争になった場合、軍事的な拠点にされる可能性がある。


 でも、そういう懸念は、この両国については今のところ、ほとんどないと言っていい。


 そうでなければ、もう少し小規模な屋敷になっていただろう。


 デュヴィテール王国の王室とルクシブルテール王国の中が長年良好なこともあって、こういう待遇を許しているという話は聞いている。


 わたしは屋敷に到着すると、オクタヴィノール殿下と執事の出迎えを受けた。


「リディテーヌさん、ようこそ」


 微笑みながら言うオクタヴィノール殿下。


 身だしなみをきちんと整え、凛々しい姿をしている。


 ああ、ますます好きになってくる。


「ご招待いただき、ありがとうございます」


 わたしはそう言った後、頭を下げた。


 そして、わたしはオクタヴィノール殿下の案内で、屋敷の庭にセットされたテーブルに、オクタヴィノール殿下と向い合せになって座った。


 テーブルには、紅茶とお菓子が置かれている。


 空は青く、陽が照り付けている。


 夏本番と言っていい。


 ただ木陰にいるのと、湿度がそこまでは高くないので、それほど暑さは感じない。


 暑さにそれほど強くなりわたしにとっては、助かるところだ。


 しかし、暑さの方はまだいいのだけれど、屋敷に着いてからここに来る間に、わたしはだんだん緊張してきていた。


 そして、胸のドキドキが大きくなってくる。


 何と言っても、わたしは今日初めてオクタヴィノール殿下と二人きりで話をする。


 舞踏会の時は、ダンスが終わった後、少ししか話をすることはできなかった。


 オクタヴィノール殿下のダンスのことを褒めようとする人たちがたくさんいて、そこから離れざるをえなかったからだ。


 もう少し話をしたかったのだけれど、仕方がない。


 その分、今日はたくさん話をしたいと思っていた。


 でも、わたしは好きな方と二人きりで話をするということの意味がわかっていなかった。


 二人きり。


 しかも、わたしが好きで、推している方と一緒にいる。


 胸のドキドキが大きくなってくるのを抑えることは難しい。


 それでもわたしはそれを抑えようと一生懸命努力を続けていた。




 オクタヴィノール殿下とわたしは、二人だけのお茶会を開始した。


 オクタヴィノール殿下は優雅に紅茶を飲んでいる。


 わたしも優雅に過ごして行きたかったのだけど……。


 胸のドキドキは抑えられてきたとはいうものの、まだ大きいまま。


 わたしも紅茶を飲んで、気持ちを落ち着かせようとするのだけれど、難しい。


 ああ、オクタヴィノール殿下、好きです。好きでたまりません……。


 そう言いたいと思う気持ちも大きくなってきた。


 すると、オクタヴィノール殿下は、


「わたしはあなたのことをもっと知りたいと思っています。あなたの方もわたしのことをもっと知りたいと思っていることでしょう。今日は、ここでいろいろお話をさせていただいて、お互いの理解を深めていきたいと思っています」


 と言ってくれた。


 わたしはその言葉を聞いて、胸のドキドキがおさまり始めていく。


 そうだ。


 ここでお話をすることによって、オクタヴィノール殿下との距離を縮めていくことが大切だ。


 今日ここにわたしが来たのは、この為だったのだ!


 わたしは改めて心を整えていく。


 そして、オクタヴィノール殿下も心を整えた後、話をし始めた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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