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第五十七話 わたしはオクタヴィノール殿下とのダンスを受け入れる

 舞踏会が始まった。


 凛々しく礼服を着た令息たちとここぞとばかりに着飾った令嬢たち。


 王室楽団の演奏する心地良い音楽に合わせて、ダンスを踊る。


 この会場でお互いに踊る相手を見つけている人たちも多い。


 そういった人たちは、お互い初めて踊ることになる。


 しかし、この日に合わせて、それぞれダンスの練習をしてきたのだろう。


 初めて踊る相手であっても、そうでなかったとしても、それぞれいい動きをしていると思う。


 わたしはオクタヴィノール殿下と一緒にダンスを踊ることについて、すぐには心の準備が整わなかった。


 あこがれの存在、オクタヴィノール殿下。


 リディテーヌはダンスのレッスンを幼い頃から受けてきた。


 上手に踊れる自信が心の中にある。


 でも想いを寄せている方と踊るのは別だ。


 どうしても、


「失敗して迷惑をかけてしまったらどうしょう……」


 という恐れが心の中で大きな勢力を占めていく。


 わたしは、この会場に入る直前にも、


「わたしのようなものと踊ってよろしいのでしょうか? ご迷惑にならないでしょうか?」


 とオクタヴィノール殿下に言っていた。


 もともとは上手に踊れる自信を持っている、


 それなのに、失敗することを恐れてしまう。


 転生のことを思い出す前のリディテーヌだったら、オクタヴィノール殿下に心を動かすかどうかはともかく、ダンスについては、強気で進むところだ。


 なぜここまで弱気になってしまうのだろう?


 自分でもそう思わざるをえない。


 せっかくオクタヴィノール殿下と親しくなれるチャンスだと言うのに……。


 しかし、オクタヴィノール殿下は、


「迷惑だということはありません。気になさらないでください。あなたは今まで、一生懸命ダンスを練習してきたのでしょう?」


 とやさしく言ってくる。


「そうでございます」


「では、少しリディテーヌさんの心を整えてから踊ることにいたしましょう。ルシャール殿下がこの後、ダンスを披露すると思います。そのダンスが終わった後、一緒に踊りましょう」


 オクタヴィノール殿下は微笑みながらそう言った。


 その微笑みに、わたしは自信を取り戻し始める。


「ご配慮いただき、ありがとうございます、オクタヴィノール殿下。一生懸命踊りますので、よろしくお願いします」


 わたしがそう応えると、オクタヴィノール殿下は、


「思い出に残るダンスをしていきましょう」


 と言ってくれた。


 やがて、ルシャール殿下とオディナティーヌの踊る時がやってきた。


 踊っていた人たちは、一旦、踊りを止め、二人の踊りを待つ。


 出席者が盛大に拍手をした後、二人は踊り始めた。


 オディナティーヌはまだまだ動きがぎこちないところはあるけれど、そこはルシャール殿下がうまくフォローをしている。


「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」のゲームの世界では、デュヴィテール王国一のダンスの名手と言われていたけれど、その名の通りのうまさだ。


 わたしは二人を眺めていると、オディナティーヌに対する嫉妬心がどうしても湧いてくる。


「あの場にいるのは、わたしだったはずだったのに」


 そう思わざるをえない。


 どうしてそういう思いを持ってしまうのだろう?


 それはわたしがリディテーヌだからなのだと思う。


 わたしは、リディテーヌとして生まれ、生きてきた。


 ルシャール殿下によって、婚約破棄をされ処断されるとはいっても、婚約をするキャラクターなので、ルシャール殿下に対する想いがある。


 ゲームではそこまでの描写はなかったのだけれど、リディテーヌの心の中では、時が経つにしたがって、ルシャール殿下に対する想いがだんだん強くなっていた。


 今のわたしはオクタヴィノール殿下と婚約・結婚したいと思っている。


 しかし、一方で、転生の記憶が戻ってからは、リディテーヌとしてのその想いが心の中に残っている。


 オディナティーヌに対して嫉妬心を持つのは、仕方のないことなのかもしれない。


 しかし、わたしは今、推しのオクタヴィノール殿下のそばにいる。


 ルシャール殿下のことはもう忘れて、オクタヴィノール殿下とダンスを踊ることに集中しなければ!


 そして、オクタヴィノール殿下と仲良くなっていきたい!


 わたしはそう強く思うのだった。


「面白い」


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