第五十五話 オクタヴィノール殿下のお願い
オクタヴィノール殿下は、リディテーヌと会ったことを覚えていると言ってくれた。
これは、仲良くなれるのもそう遠くはないのでは?
一瞬、そういう希望が湧いてきた。
リディテーヌと会った記憶があるということは、それなりにリディテーヌのことを気にしているということだ。
もしかすると、それは、わたしに対する淡い恋心なのかもしれない。
そういうことも心の中に浮かんできて、少し恥ずかしい気持ちになってくる。
しかし……。
オクタヴィノール殿下は続けて、
「でもわたしはあなたの名前を知らないのです。申し訳ありませんが、お名前を教えていただけませんでしょうか?」
と言ってきた。
わたしは少しガクッときてしまった。
オクタヴィノール殿下はわたしの名前を知らない……。
オクタヴィノール殿下と以前会った時、リディテーヌは、
「ボードリックス公爵家のリディテーヌでございます。この王国の学校で学んでおります。よろしくお願いします」
と自分の名前を言って、自己紹介をしている。
まだ一度しか会ってはいないものの、オクタヴィノール殿下は微笑んでいた記憶があるので、名前を憶えてもらっていたものと思っていた。
会ったことまで覚えていないことよりはましだと思うものの、名前を記憶していないということは、そこまでの認識しかされないということだろう。
しかし、それはそうだろうと思い直した。
オクタヴィノール殿下ほどの身分になると、今までもたくさんの人々と話をしている。
一度会ったぐらいの人間に、覚えてもらうということは、無理な話だ。
会ったことを覚えてもらっているだけで、本来はすごいことなのだと思う。
とにかく、せっかく会うことができたのだ。
今日は、少しでも仲良くなっておきたい。
恥ずかしい気持ちはあるけれど、それは乗り越えていかなくてはならない。
わたしは、
「ボードリックス公爵家のリディテーヌでございます。この王国の学校で学んでおります。今日はオクタヴィノール殿下のような、とても素敵なお方にこうして会うことができて、光栄に思っております。よろしくお願いします」
と言った後、頭を下げた。
なんとか言葉を紡ぐことはできた。
しかし、胸のドキドキが大きくなり、心のコントロールが難しい。
あこがれの方の前で話をするということ。
それがこんなに難しいことだとは思わなかった。
オクタヴィノール殿下は、
「リディテーヌさん……」
とつぶやいた後、
「ああ、そうでした。あなたが自分の名前をおっしゃっていたことを、今思い出しました。あなたの方はわたしの名前をきちんと思い出していただいていたのに、申し訳なく思っています」
と言って頭を下げた。
わたしはあわてて、
「オクタヴィノール殿下、わたしのようなものに、お気づかいをさせてしまって、こちらこそ申し訳なく思います」
と言った後、再び頭を下げた。
それに対し、オクタヴィノール殿下は、
「これからはもう名前を忘れないようにします。リディテーヌさん」
と言って微笑んだ。
この微笑みに、わたしはまた甘い気持ちになり始める。
オクタヴィノール殿下の方は、というと、なんだか少し顔を赤らめている気がする。
もしかすると、少しわたしのことを意識しているのでは?
そうだったらうれしいのだけど……。
そう思っていると、オクタヴィノール殿下は、
「では改めて自己紹介をさせていただきたいと思います。わたしはルクシブルテール王国の王太子オクタヴィノールです。わたしもこの王国の学校で学んでおります。今日はあなたのような美しい方と出会うことができて、うれしく思っております」
と言った。
少し恥ずかしそうに話をしている気がする。
わたしも、
「美しい方」
と言われたので、なんだか恥ずかしい気持ちになってきた。
そして、オクタヴィノール殿下は心を整えた後、
「あなたにお願いしたいことがあります」
と言ってきた。
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