第五十三話 オクタヴィノール殿下と会いたい
舞踏会に来たからにはオクタヴィノール殿下と会いたい。
そして、話をしたい。
いや、ただ話をするだけではダメだ。
今日の時点である程度仲良くなりたい!
そう思いながら、わたしはオクタヴィノール殿下がいそうなところへ向かって歩く。
「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」のオクタヴィノール殿下ルートで、オクタヴィノール殿下とオディナティーヌが出会った場所のことは思い出している。
舞踏会が開催されるホールのすぐ近くにある部屋だ。
ここは、出席者が休憩するところとして使われていた。
ラウンジといっていいだろう。
この時のオディナティーヌは、舞踏会に参加するのは初めて。
この会場の華やかな雰囲気に慣れることができないでいたオディナティーヌは、少し気分を悪くしていた。その為、一緒にきていた母親と離れて少しここで休んでいた。
そこで同じように休憩しようとしていたオクタヴィノール殿下と出会ったのだった。
オクタヴィノール殿下は、デュヴィテール王国の王室から、一室の提供は受けてはいた。
しかし、少し距離が遠くなるので、オクタヴィノール殿下は近くのこの部屋で休憩をしようと思った。
そして、この部屋に入っていった時にオディナティーヌと出会ったのだった。
オディナティーヌとわたしリディテーヌの違いはあるとはいうものの、そこへ行けば会えるだろうと思っていた。
オディナティーヌの方は、既にルシャール殿下のルートに入っているので、ここにはこない。
今頃は、ルシャール殿下と楽しくおしゃべりをしていることだろう。
そう思うと、少し腹立たしい気持ちになる。
ルシャール殿下の婚約者の座をオディナティーヌに譲ったことについては、まだ心残りが少しある。
婚約破棄や処断を避ける為とはいうものの、この決断でよかったのだろうか?
そういう気持ちはどうしてもある。
そういう気持ちはなくしていこうと一生懸命努力はしていた。
それでも婚約者の座を譲るという決断をしなければならなかったということで、継母やオディナティーヌ対する腹立ちはまだ残っていると言わざるをえない。
しかし、腹を立ててはいけない。
それではまた昔のリディテーヌに戻ってしまう。
わたしはオクタヴィノール殿下一筋と決めたのだ。
もうルシャール殿下のことは忘れよう。
そう思いながら、その部屋へ向かっていった。
ところが、そこへ行くとオクタヴィノール殿下はいなかった。
他に数人の出席者は部屋にいたものの、オクタヴィノール殿下の姿はない。
わたしはこの部屋で待つことにした。
もし、この部屋を出て、歩いている途中でオクタヴィノール殿下と出会ったとしても、オクタヴィノール殿下ほどの方になると、多くの人たち、特に貴族令嬢たちが会いにくるので、近づくことは容易ではない。
それならば、ゲームのように、この部屋で会えるのを期待した方がいい。
わたしは待った。
しかし、期待に反して、なかなかオクタヴィノール殿下はやってこない。
このままだと舞踏会は始まってしまう。
そうなると、オクタヴィノール殿下と近づける可能性はほぼなくなる。
舞踏会が終わるとオクタヴィノール殿下は、一緒に踊った令嬢たちと一緒におしゃべりを楽しむことになり、その中に入ることはできないからだ。
「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」のゲームでは、オクタヴィノール殿下ルートでない場合、何人かの令嬢とダンスを踊ることになる。
オクタヴィノール殿下はルシャール殿下と違い、この王国の王太子ではないので、この舞踏会が開催される前から、ダンスを一緒に踊る約束をする令嬢はいなかった。
その為、ダンスを踊る相手になる為には、舞踏会が始まる前に、オクタヴィノール殿下と会って約束をしなければならない。
しかし、申し込み者が多いので、その調整に時間がかかっている可能性は大いにあると思う。
わたしはオクタヴィノール殿下とは今回、会って少し話すことができればいいと思っていて、いきなりダンスを踊るつもりはなかった。
それはもう少し親しくなってからでもいいとは思っていた。
ただ、オクタヴィノール殿下とここで会えないのは、これからの人生の計画を見直さなければならないことにつながってくる。
それは避けたいと思っていた。
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