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第四十八話 ルクディアさんと友達になれるかもしれない

 ルクディアさんは、わたしが話をした後、しばらくの間黙り込んでいた。


 やがて、


「今までのあなたでは言わないことを、今のあなたは言っている。しかも、ていねいな言葉。聞いているこちらの気持ちが悪くなってくるわ。いつものもっと高慢ちきな言葉づかいをするのがあなただと言うのに、全く何をしているのかしら。そういう対応をされた方がこちらとしても張り合いがあるのよ。それにあなたは、自分で何を言っているのかわからないの? あれほど周囲には傲慢な態度を取っていて、わたしと一生懸命張り合っていたあなたが……。あなたの今言っていることは。わたしに負けたと言っているものなのよ。貴族として一番大切な気品も捨てようとしているから。なぜあなたはそれに気がつかないの? 周囲を寄せ付けないという意味では行き過ぎはあったとは言っても、あなたはわたしの次ぐらいには気品を持っていたのに、先程の話はそういうことを捨てようとしているしか思わない。全く情けない話だわ」


 と高笑いをした。


 ただ、今までのような力強さは少し減っている気がする。


 わたしの持っている気品が失われることを本心から心配してくれているのかもしれない。


 わたしは、


「心配してもらってありがとうございます。でもルクディアさんは、傲慢な態度と気品を少し混同されている気がします。わたしは気品を捨てようとは全く思っておりません。気品を持って生きていこうと思っております。また、ルクディアさんとは、もう勝ったとか負けたという関係ではないと思っています。もちろん、そう判断するのは人の自由です。ルクディアさんがわたしに勝ったと思うのであれば、勝ったのでしょう。それをとやかく言うつもりはありません」


「あなたはわたしに負けたことは認めるのね?」


 ルクディアさんは勝ち誇った表情になり始める。


 そして、


「ということは、わたしの軍門に降るということでよろしいかしら?」


 と言ってきた。


 しかし、わたしは、


「わたしがここで負けたからと言って、ルクディアさんに服従するとかそういう話ではありません、これからは、友達どうしとして接していきたいと思っています」


 と柔らかい口調で返事をした。


「あなた、いきなり何を言ってくるの?」


 ルクディアさんは驚いた様子。


「友達になりましょう」


 わたしが微笑みながら言うと、ルクディアさんは、


「もう調子がくるってしょうがないわ。友達の話は論外。わたしのライバルだった人間だったというのに、もう残念ながらわたしのライバルではなくなったようね。残念だわ」


 と渋い表情で言う。


 そして、


「もうわたしは帰る。あなたのようにわたしのライバルという立場を捨てようとしている人とは話をする気はなくなったわ」


 と言うと、そのままこの場を去っていく。


 わたしはルクディアさんが帰っていくのを見守っていた。


 これでルクディアさんには、わたしが生まれ変わろうとしていることが伝わったと思う。


 ルクディアさんがわたしの教室にきて、嫌味を言う回数もこれで減るだろう。


 今までは、お互いの嫌味の言い合いが、お互いの評判を悪くすることにつながっていた。


 わたしの方は既に嫌味は言わなくなっていたけれど、ルクディアさんが嫌味を言いにくる状況は続いていたので、抜本的な評判の改善にはつながっていなかった。


 これにより、わたしの評判だけでなく、ルクディアさんの方の評判も、良くなる方向に向かうと思う。


 また、ルクディアさんが今までわたしに対して持っていたトゲのような感情も少し薄まった気がしていた。


 まだまだ道は遠いものの、友達どうしになれるかもしれない、という希望も湧いてきていた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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