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第四十四話 わたしとルクディアさん

 わたしがルクディアさんの攻勢に対して、少しの間黙っていると、


「リディテーヌさん。いつもの気概はどうしたの? 黙っているということは、わたしたちの軍門に降りたいと思っているのかしら? もしそうなら、すぐにでも受け入れてあげるんだけど」


 と言って高笑いをした。


 一々腹の立ってくる態度だ。


 しかし、もうわたしはルクディアさんの相手はしない。


 これからのわたしは、心穏やかに対応すると決めたのだ。


 わたしは、


「ルクディアさん、わたしは今日から生まれ変わりましたの。わがままを言ったり、傲慢な態度を取ったりすることはもうありません。そして、もうあなたと張り合わないことにしました。この学校で一番美しい女性は、あなたであることを認めますわ」


 と言って、微笑んだ。


 わたしは、この言葉を言うことによって、今まで、ルクディアさんと言い争いをしていた自分の愚かさから脱却できると思った。


 こういう言い争いで時間を使うよりは、その時間で少しでも自分を磨いていった方がいい。


 そして、わたしはルクディアさんのことをこの学校で一番美しいと褒めることによって、だんだんうれしい気持ちになってくる。


 褒めるということは、自分自身もうれしくなることだということを、わたしはあらためて認識した。


 今までのリディテーヌは、ルクディアさんと張り合おうとして一生懸命だった。


 そこには、お互いの嫉妬と憎しみの心があった。


 ルクディアさんはこの言葉を受けてどう思うかはわからない。


 それでもわたしに嫌味を言ってくる可能性は強いだろう。


 でもわたしは、もうそれに一々対応する気はない。


 気品を持ちながら、心からのやさしさと微笑みで対応していくのだ。


 そう思うと、わたしは、爽やかな気持ちになってくる。


 ルクディアさんは、しばらくの間、呆然としていた。


 やがて、


「あなた、どういうつもりで言っているの? 急にわたしのことを持ち上げたりして。そうやって、わたしが有頂天になった時に、いきなり、『冗談で言っているのよ。本気になになっているの? 恥ずかし人ね』と言って、わたしを笑いものにするんではないの?」


 と言ってきた。


 そのように言いたくなるのもわかる。


 ルクディアさんとリディテーヌとの過去のやり取りでは、お互いにそういう場面があったからだ。


 でももう今回は違う。


「今までのわたしだったらそう言う態度を取ったかもしれません。でも今は違います。わたしはルクディアさんの美しさを心の底から褒めているのです」


 わたしがそう言うと、ルクディアさんは顔を赤らめ始める。


 そして、


「あなたもようやくわたしの美しさを理解したようね」


 と言った。


「その通りですよ。ルクディアさん。あなたの方がわたしよりも美しいです」


 わたしがそう言った瞬間、ルクディアさんの顔はさらに赤くなっていく。


「認めてくれればいいのよ、認めてくれれば」


 ルクディアさんは、うれしさを懸命に抑えているように思える。


 しかし、やがて、満面の笑みになっていく。


 うれしさが抑えきれなくなったようだ。


「ついにわたしの方が美しいと認めてくれた。ルクディアさんはわたしの軍門に降ったのね。今日は、とてもいい日だわ」


 軍門に降った気はないのだけれど、ここでそれを言ってもまた言い争いになるだけだ。


 それに、ルクディアさんがそう言葉で言っているだけの話で、


「家臣として実際に服従」


 をするわけでもない。


 もし、本当にそうしたいのであれば、ブルトフィーノ公爵家とボードリックス公爵家の間で話を正式にする必要がある。


 それは、家格がほぼ同格である以上、ありえない話だ。


 ルクディアさんが、わたしを軍門に下したと思い、得意になっているのだけれど、実質的なことは何もないのだから、それでいいだろう。


 それにしても、リディテーヌというキャラクターの特性上、仕方のないことではあったのだけれど、どうして今までこういう気持ちになれなかったのだろう……。


「今日は、ここまでにしとこうと思う。またここに来るので、よろしくお願いするわ、リディテーヌさん」


 ルクディアさんは、そう言って、高笑いをしながら、取り巻きの二人を従えると、自分の教室に戻っていった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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