第四十二話 わたしは恐れられている
わたしは自分の教室に入った。
そして、自分の席にたどり着く前に会った人たちそれぞれに、
「ごきげんよう」
と言った。
これだけならばいつもすることだ。
しかし、今日は違う。
今までは傲然と胸を張り、周囲をあざ笑う調子で歩いていたリディテーヌ。
自分がこの中で一番偉いということを誇示していたのだ。
転生の記憶が戻る前とは言うものの、恥ずかしい話だ。
それを、気品を持ったやさしい微笑みに変えていく。
会った人たちは、
「リディテーヌ様、ごきげんよう」
と返してはくる。
しかし、みなわたしを恐れている様子。
震えている人もいる。
今までのリディテーヌは、それほど恐ろしい存在だったのだろう。
今日、やさしい態度を取ってからといっても、それはすぐに変化するものではない。
わたしは自分の席につくと、ため息をついた。
リディテーヌは、取り巻きの人たちを作ろうとはせず、ずっと一匹狼的な存在だった。
友達という存在もいない。
こうして席についても、近づこうとする人はほとんどいない。
近くの席にいる人たちは、リディテーヌに話しかけられないように、縮こまっていた。
今までのリディテーヌは、自分に近づいてくる人がいると、嫌味を言うのが通例だった。
内容としては、礼儀作法のことについて、言うことが多かった。
本人にしてみれば、あたり前のことを言っていたという認識だろう。
公爵家の令嬢が、
「ありがたく教えてあげる」
という認識だ。
しかし、それを言われる方はたまらない。
言い方が穏やかならばまだしも、きつい言い方のことがほとんどだ。
それをみな嫌がった結果、リディテーヌの隣の席にいる人たちは、話しかけられることを極力避け、その他の人たちは、リディテーヌの席周辺を歩くことをなるべく避けていた。
この学校内での態度の悪さによるリディテーヌの人望のなさは、ゲームをしている時は、
「そうなっても仕方がない」
という認識だった。
特に同情を寄せることなかった。
しかし、こうして自分がその立場になると、厳しい状況だと思わざるをえなかった。
ルシャール殿下ルートでは、この学校内での態度が婚約破棄の理由の一つになった。
今は、そのルシャール殿下ルートから外れつつあるものの、このままだと今度はオクタヴィノール殿下の愛をつかめなくなる可能性がある。
今の態度を改めていったとしても、そう簡単には、わたしの評判は良くならないだろう。
今の悪い評判がオクタヴィノール殿下に伝われば、オクタヴィノール殿下はわたしと付き合いたくないと思う可能性は強くなってくる。
もちろん、そこから挽回していくということもできなくはないと思っている。
でも、オクタヴィノール殿下との仲を進めていきたいと思った時、スタートで好感がない状態よりは、少しでも好感を持った状態からスタートした方がいいと思う。
まずは、このクラス内でわたしの評判を良くしていく。
それには、まず今実践した、クラスメイトに気品を持ったやさしく笑顔で接していくことを、毎日続けていくことだ。
そして、嫌味は一切言わないことにする。
こうして態度を変えていけば、わたしの評判も良くなっていくと思う。
その評判がオクタヴィノール殿下に入り始めた時点で、わたしはオクタヴィノール殿下と会って話をする。
今までもあいさつ程度はしたことはある。
しかし、次に会う時は、二人だけできちんと話がしたい。
そこで、オクタヴィノール殿下にわたしのことを理解してもらうきっかけをつかむ。
そして、仲を良くしていこうと思っていた。
とはいうものの、オクタヴィノール殿下と話ができる機会は、これからも多くはない。
その少ない機会を生かす必要があった。
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