第三十九話 婚約者候補に決まる義理の妹
すると、お父様は、
「そこまでお前が申すのなら仕方がない。王室の方で、お前のことを名指しで婚約者候補にしたいという話であれば、いくらお前の望みでも断ることはできない。しかし、わが公爵家の二人の令嬢の内、わが公爵家として一番適任であると思った方を婚約者候補にしてほしいというのが、王室のもともとの依頼だった。もちろん婚約者候補といっても、よほどのことがなければ、そこですぐに婚約者になるのだから、わが家からの婚約者候補は、候補として選定した時点で婚約者と同じ意味になる。そういう条件である以上、オディナティーヌに婚約者候補を変更しても特に問題はないことは、理解はしている。だからといって、わたしはまだ納得はしていないのだ。先程申した通り、わたしは、お前を婚約者候補、そして婚約者にしたかった。この気持ちは理解をしてほしい」
「お父様……」
お父様は、心を整えた後、
「ボードリックス公爵家としての、ルシャール殿下に対する婚約者候補は、オディナティーヌに変更する。リディテーヌは今までの通り、この家で自分を磨いていきなさい。よろしくお願いする」
と言った。
どこか寂しそうだった。
「わたしの願いを受け入れていただき、ありがとうございました」
わたしはそう言って頭を下げた。
お父様が寂しそうにしているのは、つらかった。
しかし、それ以上に、
「これで、婚約破棄、処断は避けられそうだ」
という安堵の気持ちの方が大きかった。
この後、お父様は、継母とオディナティーヌを呼び、オディナティーヌがルシャール殿下の婚約者候補に決まったことを告げた。
オディナティーヌは、わたしに遠慮したのか、喜びを抑えていた。
しかし、継母は、
「ありがとうございます。オディナティーヌを選んでいただき、これほどうれしいことはありません」
と言って、わたしがそばにいるにも関わらず、うれし涙を流していた。
今までのリディテーヌも人のことは言えないけれど、継母もつくづく人の気持ちというものを考慮しない人だと思う。
わたしが婚約者候補の座を譲ったことに対し、
「ありがとう」
の一言も言えないのだろうか?
わたしは腹が立ってくるのを一生懸命抑え込もうと努力した。
継母については、ゲームではここまで細かい描写がされていなかった。
その為、悪印象を持ってはいっても、ほどほどのところまでしか到達はしていなかった。
しかし、こうして実際に接していくと、どうしても悪い印象は深いものになってきてしまう。わたしが婚約者候補の座を譲ったことで、継母の攻勢が鈍ることは期待されるけれども、嫌味を言ってくるのは、これからも続いていくのだろう。
そのことを考えるだけでも、うんざりしてくる。
得意そうな表情の継母。
意地悪そうな微笑みをわたしに向けてくる。
わたしに勝ったのがうれしくてしょうがないのだろう。
今までのリディテーヌだったら、言い返すところだと思う。
でも、今のリディテーヌは、わたしと意識が融合している。
今までのリディテーヌとは違うのだ。
わたしは、なんとか腹が立つのを我慢した。
そして、
「お母様、オディナティーヌ、おめでとうございます」
と無理やり微笑みながらそう言った。
お父様も継母もオディナティーヌも驚いているようだ。
やがて、オディナティーヌは。
「お姉様、ありがとうございます」
と少し震えながら言った。
今までのオディナティーヌであれば、絶対に出てくることはなかった言葉だ。
それでもわたしのことを恐れている。
当然のことだろう。
とにかくわたしは、このオディナティーヌとの仲を良くしていく必要がある。
ルシャール殿下との婚約はしないことになったので、婚約の破棄や処断ということもなくなった。
ルシャール殿下が、今後、全くわたしに興味を示さないとは言えない。
舞踏会等で会って話をする機会がないとは言えず、その時に、わたしに興味を持つこともありえるだろう。
しかし、その可能性は限りなく小さいと思う。
もともとルシャール殿下とオディナティーヌと結婚するのが、このゲームの主な流れの一つなので、ここでわたしが婚約をしなければ、オディナティーヌとの仲は深まっていき、わたしに心を移すことはほとんどないと思っているからだ。
一安心だと言える。
ただ、わたしのボードリックス公爵家の中での評判は良くない。
これを改善していかなければ、ボードリックス公爵家から継母に追放されるという懸念がある。
継母との仲を良くするのは難しいと思っている。
それができないのであれば、少なくともオディナティーヌを味方につけておけば、オディナティーヌから継母を動かすことができるようになる。
そうすれば、わたしがボードリックス公爵家を追放される可能性は小さくなるだろう。
わたしはそう思い、
「これからわたしはあなたを応援するわ」
とオディナティーヌに言った。
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