第三十二話 わたしと侍女
継母とオディナティーヌは、お父様の前では、リディテーヌとの仲は、悪くない素振りをしている。
いつもはリディテーヌに嫌味しか言わない継母も、お父様の前では、ほとんど言うことはない。
しかし、リディテーヌと話すことは極力避けようとしていた。
リディテーヌとの話を避けている点はオディナティーヌも同じだ。
リディテーヌと話をすると、嫌味の言葉が出てくることを、継母とオディナティーヌは認識しているのだろう。
リディテーヌがこの二人と合わないということをお父様に言わなかったのと、この二人が気をつけていることもあって、この二人とリディテーヌのお互いの仲についてお父様は、そこまで深刻な話だとは思っていないようだった。
お父様と継母は仲睦まじく過ごしているので、今までのリディテーヌは、継母との仲が良くないことを、自分の方からお父様に言うことはできなかった。
「悪役令嬢」化しつつあったリディテーヌだけれど、お父様の幸せをじゃまするようなことはしないようにしていたからだ。
お父様は、一旦はリディテーヌの申し出を認めたものの、その後も、
「少しがぐらいの体調の悪さであれば、一緒に食事をしてほしい」
と言ってきていた。
それだけではない。
「わたしはお前と食事がしたいのだ」
と言うことも言ってきていた。
リディテーヌは、お父様の頼みを聞かないわけにはいかず、少々の体調の悪さであれば食事を一緒にとらざるをえなかった。
一緒に食事をするからには、継母の態度も、少しは変化するかもしれないと期待をしていた。
しかし、それは全くなかった。
嫌味こそ言うことはないけれど、オディナティーヌと合わせて雰囲気は良くないままだ。
最近、継母やオディナティーヌと同席することがますます嫌になっていたところだった。
わたしは、今日の三食を自分の部屋で取ることに決めた。
いつもの体調が良くない時以上に体調が良くない。
この状態で二人と食事を一緒にとったら、その雰囲気の悪さによって、まずます体調が悪くなりそうだったからだ。
そう思っていると、侍女のジゼルアさんが、ドアをノックし、
「リディテーヌ様、おはようございます。そろそろ朝食の時間でございます」
と言ってきた。
わたしが部屋に入るように言うと、ジゼルアさんは、
「失礼します」
と言った後、おびえた様子で部屋に入ってきた。
このジゼルアさんに対して、リディテーヌはいつも冷たい態度を取っていた。
厳しい言葉を投げつけることも多かった。
わたしに対して、恐怖心を持つのも仕方がないと思う。
しかし、これからのわたしは違う。
わたしの人生の出発点である蒼浜りくらが持っていたやさしさと、このリディテーヌが心の底では持っているやさしさを、気品を維持しながら融合していく。
まずは、このジゼルアさんに対して、そのやさしさを示していくことから始めていくのだ。
わたしは、
「今日は体調がいつもより悪いので、一日中、この部屋にいることにします。三度の食事もこの部屋でとります。食欲もあまりないので、食事の量はいつもの半分でお願いするわ。ただ、医者を呼ぶのほどのことはありません。いつものように、執事には、『医者を呼ぶほどのことではありませんが、体調が悪いので今日一日静養し、食事は自分の部屋でとります』と伝えてください」
と極力やさしい気持ちを込めて言った。
通常、リディテーヌの体調が良くなくて、食事に参加をしない場合は、ジゼルアさんがそのことを執事に伝えた後、執事がお父様に伝えることにことなっている。
ジゼルアさんはとても驚いていた。
そして、しばらくの間、呆然としていた。
やがて、ジゼルアさんは、
「あの、失礼なことを申し上げると思いますが、リディテーヌ様は、今日、今までとは違う対応をわたしにしていると思っております。いつもであれば、厳しい口調でわたしにおっしゃられますが、今日はそういうところがありません。今までとは違い、リディテーヌ様のやさしさが伝わって来るような気がいたします。これが一時のお戯れではないことを、わたしは信じたいと思っているのでございます」
と言った。
ジゼルアさんにわたしの気持ちが伝わったと思っていると、ジゼルアさんは。
「わたしとしたことが、大変失礼なことを申した気がいたします。申し訳ありません」
と言って頭を下げた。
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