第三十話 寝取られた恋人と寝取った人の、その後のみじめな人生
わたしはこれからの人生のことを検討し始めていた。
すると、わたしの出発点の人生が終って、この世を去った後の冬伸ちゃんと古土沼さんの状況が、わたしの心の中に流れ込んできた。
二人は、そのまま幸せになっていくのだと思っていたのだけれど……。
わたしが失意のまま若くしてこの世を去ったことは、その時点では二人の関係に影響するものではなかった。
それだけ二人は熱愛状態になっていたので、わたしのことなどどうでもいいと思っていたのだろう。
わたしはこの熱愛ぶりが心に流れ込んできた時、さすがに腹が立った。
こんなことで怒ってもしょうがないと思い、抑えようとすると、今度は涙が出てきた。
どうして冬伸ちゃんは古土沼さんを選んだのだろう……。
そう思うと涙がとめどなく流れてくる。
しかし、二人の幸せは長くは続かなかった。
わたしがこの世を去ってから二か月ほどが経ったある日のこと。
冬伸ちゃんは、その半月ほど前からから古土沼さんとフィーリングが合わないと思い出していた。
古土沼さんもそれは認識し始めていたようで、次第に二人の間にぎくしゃくとした空気が流れるようになった。
そして、その日の放課後の帰り道、二人一緒で歩いている時に、冬伸ちゃんは、
「俺はりくらちゃんを選ぶべきだったのかなあ……。俺の選択は失敗だったということになるのかもしれない」
と古土沼さんの前で言った。
それを聞いた古土沼さんは、
「何を言い出すの? わたしは冬伸くんのお嫁さんになる女性よ。冗談でも言ってはいけないことをあなたは言ってるの!」
と言って怒り出した。
こうして、冬伸ちゃんと古土沼さんがケンカをし始めた。
冬伸ちゃんは、わたしより古土沼さんとのフィーリングが合うと言っていたのだけれど、それはただの思い込みにすぎなかった。
二人の亀裂は深まり、修復できないほどのものになっていく。
その結果、ケンカを初めてから一か月後、
「こんなにケンカばかりしていたんじゃ、もう付き合い続けるのは無理だ。こんなに短気な人だとは思わなかった。俺はなぜこんな子を選択したのだろう……。りくらちゃん一途で生きていくべきだった、申し訳ないが別れよう」
と冬伸ちゃんが申し出ることになる。
古土沼さんはこれに対し、
「別れたくない。確かにこの一か月間。ケンカをしたきたけど、それはあなたのことが好きだったから。もう一度あなたとやり直したい!」
と涙声になりながら言った。
しかし、結局、二人の心は近づくことはなく、別れることになった。
二人は熱愛状態に到達していたので、別れた時の心のダメージは、二人にとって大きいものだった。
冬伸ちゃんは。わたしがとても大切な存在だったことに、ようやく気が付いたようだった。
それは、冬伸ちゃんにとって、さらなる心のダメージを与えるものだった。
冬伸ちゃんは、その後、毎日わたしのことを思い出しては。
「俺が間違っていた。りくらちゃん。ごめん」
と言って、涙を流すようになっていく。
古土沼さんも冬伸ちゃんと別れた後、大きな心のダメージを受けていた。
「わたしは蒼浜さんから冬伸くんを奪い取る為、一生懸命だった。それなのに……」
「わたしは冬伸くんを熱愛していたのに……」
「わたしは冬伸くんと結婚するはずだったのに……」
毎日涙を流し続ける古土沼さん。
そして、
「こんなことなら、蒼浜さんから冬伸くんを奪わなければよかった……」
と言うようにもなっていた。
でも、二人はもう間に合わない。
冬伸ちゃんは、それからほどなくして病気になり、この世を去った。
古土沼さんも、冬伸くんと同じ時期に病気になり、この世を去った。
みじめな人生だと言わざるをえない。
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