第二十六話 継母と義理の妹
ルシャール殿下とわたしの結婚は、もともと王室とボードリックス公爵家との関係を維持していく為の政略結婚という位置付け。
オディナティーヌは、当主であるお父様とは血はつながってはいないが、養子縁組をしていて、ボードリックス公爵家令嬢であることには変わりはない。
しかも、血筋的には、ボードリックス公爵家直系令嬢であるわたしよりも上だ。
わたしの継母は、グドノディラド公爵家の出身。
このグドノディラド公爵家は、わがボードリックス公爵家よりも家格は下。
しかし、嫁いだ先のオクノラール公爵家は、わがボードリックス公爵家よりも上。
継母は、このオクノラール公爵家でも後妻として嫁いできて、オディナティーヌを産んだ。
継母はこの王国の中でも五本の指に入ると言われたほどの美人。
夫である当主も彼女のことを愛していて、二人の仲は良好だった。
しかし、前妻の子でオクノラール公爵家の後継者となっていた令息とその継母は、仲がいいとはいえなかった。
わがままで傲慢な態度を取るのが、本来の継母。
オクノラール公爵家に来てからは自重していたものの、令息の前では、傲慢な態度を取ることが少なくなかったことが、仲良くならなかった大きな要因だった。
オディナティーヌは、その母親のような傲慢な態度はとらないし、わがままでもなかった。
とはいうものの、母親の言うことには従順だった。
本人は令息と仲良くする気持ちはあったようだけれど、母親の影響で、令息とは距離を置くようになっていた。
そのような状態の為、令息の方も、オディナティーヌとは距離を置くようになっていたので、この二人の仲は、決して良好なものではなかった。
しかし、当主は、
「この三人はいずれ仲良くなってくるだろう」
と思っていたようで、特に対策をとることもなく過ごしていた。
夫である当主がこの世を去るとともに、令息は当主となった。
彼は、二人について、自分と同じ屋敷にそのまま住んでもらい、母・妹としての待遇はそのままにした。
継母が贅沢をするのを許したし、わがままや傲慢な態度を取るのも許していた。
しかし、政治には一切介入させないようにした。
新当主としては、贅沢はそのまま許すということで、納得してもらおうと思っていた。
最初の内は、それで継母は納得したように思っていた。
とはいうものの、継母にとって新当主は、自分の子供ではないので、心の底では納得をしていたわけではなかった。
政治に一切介入ができないということは、待遇に納得できないと言う心を大きくさせていくものだった。
こうして、一旦はおさまったように思えた継母の新当主への反感は、再び大きくなり始め、それが新当主への冷たい態度にも現れ始めていた。
このことをそのままにしておくと、オクノラール公爵家内の勢力争いに発展する危険性もないとはいえない。
その為、新当主は継母への対応にだんだん苦慮し始めていた。
しかし、ここで新当主を救う話が持ち上がってくる。
それが、わたしのお父様と継母の縁談だった。
わたしはリディテーヌの父親であり、オディナティーヌの義理の父親のことを、ゲームをしていた頃からお父様と呼ぶようにしていた。
この方は、領内に善政を行って、領民に名君として慕われていた。
そして、実の娘のリディテーヌだけではなく、義理の娘である主人公オディナティーヌに対しても、愛情深く接していたので、領主としても父親として尊敬できる人物だと思った。
その為、その尊敬の意味を込めて、そういう呼び方をするようになった。
お父様の妻であるリディテーヌのお母様は、リディテーヌが五歳の時に病気でこの世を去っていた。
幼い時のことだったので、転生一度目と二度目のいずれもお母様についての記憶はほとんどない。
しかし、ゲームの中では、才色兼備で心やさしく、領民に慕われた方だったと説明されていたし、転生一度目と二度目のいずれの時も、お父様にその話を聞いていたので、わたしはこの方についても尊敬の意味を込めて、お母様と呼ぶようにしていた。
リディテーヌが典型的な「悪役令嬢」になったのは、お母様がわたしの幼い時にこの世を去ったことが、大きな要因の一つとなっている。
お父様は、それ以来、独り身を通してきたのだけれど、お互いに連れ添った伴侶を失っていたということで、縁談が持ち上がったのだった。
特にオクノラール公爵家としては、このままだと新当主の負担は増えるままなので、積極的にこの縁談をボードリックス公爵家に勧めてきた。
その際、新当主と継母・オディナティーヌが対立しているという話は、ボードリックス公爵家には入ってこなかった。
継母については才色兼備で、ボードリックス公爵家の奥方にふさわしいという話。
オディナティーヌについても才色兼備で、ボードリックス公爵家の令嬢にふさわしいという話。
二人を褒めたたえる話しか入ってきてはいなかった。
お父様は、初めは乗り気ではなかった。
お父様が決まることなので、リディテーヌには口出しはできない。
でも、リディテーヌは、継母やその連れ子と仲良くできたという話をあまり聞いたことがなかったので、賛成はできなかった。
二人とうまくいかなければ、心が苦しいものになってしまう。
お父様も、リディテーヌのことを気づかってくれていたのだと思う。
しかし、周囲が全員勧めるので、継母と会うことを承知せざるをえなかった。
お父様は会った後で断るつもりでいた。
継母は、お父様の想像以上の美人だった。
お父様は、寂しい思いをずっとしてきたこともあり、あっという間に継母に心を奪われてしまった。
継母の方も、お父様に心を奪われた。
二人は、仲睦まじくなっていく。
そして、婚約をした後、結婚した。
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