第二十五話 絶望的状況からの脱出
わたしは「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」という乙女ゲームの悪役令嬢リディテーヌというキャラクターに転生をしていた。
それも、一度だけではなく二度も。
このまま運命に従って生きていけば、破滅が待っている。
それは絶対に避けたい。
わたしは一生懸命検討を続けていたのだけれど、破滅を避けるには、これから数日後に行われようとしているルシャール殿下との婚約自体を避けるしかないという結論になった。
ゲームをしていた時は、ルシャール殿下と並んで推しの対象だったオクタヴィノール殿下。
ルシャール殿下とオクタヴィノール殿下は、どちらもイケメン。
成績はいつも学校で一位と二位と争う間柄。
剣術、武術、馬術はオクタヴィノール殿下の方が上で、ルクシブルテール王国一の腕前と言われている。
ルシャール殿下の方もデュヴィテール王国の中では、トップ十位以内に入る腕前と言われていた。
二人とも好きなキャラクター。
わたしは、オクタヴィノール殿下が一番の推しのキャラクターだった。
オクタヴィノール殿下の方が、より明るく笑い、親しみやすくて、心やさしく、思いやりのある魅力的なキャラクターとして描かれていたからだ。
そして、一度愛した女性を一生懸命愛し続けるキャラクダーだ。
このようなところにわたしは惚れていて、だからこそ、もし転生ということができた時はオクタヴィノール殿下のような方と恋人どうしになり、結婚したいと思ったのだ。
ルシャール殿下の方も、魅力的で、心やさしく、思いやりのあるキャラクターとして描かれている。
一度愛した女性を一生懸命愛し続けると言う点も、オクタヴィノール殿下と一緒だ。
しかし、ルシャール殿下と比べた場合、怒り始めると、抑えのきかなくなるキャラクターとして描かれている。
もちろん、それはよほどの場合だ。
ルシャール殿下ルートにおいて、リディテーヌが「処断」まで行ってしまったのは、リディテーヌの「悪役令嬢」的なところが、それだけルシャール殿下を怒らせてしまったということだ。
とはいうものの、主人公であるオディナティーヌには、そういった態度を示すことはない。
その為、怒り始めると、抑えがきかなくなるという点を嫌うプレイヤーはほとんどいないと言っていい。
ルシャール殿下のことが好きなファンも多く、一大勢力を築いている。
わたしもゲームをプレイしていた時は、推しのキャラクターだった。
ただ、ルシャール殿下については、推していたとはいうものの、恋人どうしになり、結婚したいとまでは思わなかった。
ゲームのこととはいうものの、オクタヴィノール殿下以外の男性との結婚を思うことは、オクタヴィノール殿下に失礼なことになると思っていた。
でも、あこがれの対象で、わたしにとっては、好感度の高いキャラクターだった。
恋ではなく、あこがれであれば、オクタヴィノール殿下に対して失礼にはならないと思っていたのだ。
転生一度目で、婚約破棄をされ、処断をされるまでは、あこがれを持ち続けていたし、好感度も高いままだった。
しかし、転生二度目を迎えたわたしは、転生一度目のことを思うと、さすがにルシャール殿下への好感度は下げざるをえない。
そして、改めて、オクタヴィノール殿下との結婚を目指したいと思っていた。
とにかく、まずは、ルシャール殿下との婚約を成立させないこと。
そして、オクタヴィノール殿下との仲を良くしていくことだ。
とはいうものの、どちらも難しい話。
もともとルシャール殿下の婚約者候補にこのボードリックス公爵家の令嬢が選定されるのは、幼い頃から、王室とボードリックス公爵家の間で決まっていたことだった。
その為、リディテーヌは有力な候補になっていた。
ただ、王室側は、ボードリックス公爵家令嬢の中で一番妃として適任な女性とルシャール殿下を結婚させたいと思っていたので、リディテーヌそのものが選定されていたわけではない。
その後、リディテーヌの義理の妹になったオディナティーヌもボードリックス公爵家令嬢となった為、婚約者候補に入ることになった。
とはいうもの、幼い頃から妃としての教育を受けてきているリディテーヌを婚約者候補としてお父様は強力に推していたので、継母はオディナティーヌを推していたものの、大きな勢力にはならず、ほぼリディテーヌで決まりそうな雰囲気だった。
わたしの力では、それを覆すことはできない。
しかし、婚約が成立してしまえば、もう破滅のルートに乗ったのも同然だ。
それ以前に、オクタヴィノール殿下と恋人どうしになり、結婚するという夢は、その時点で壊れてしまう。
どうすればいいのだろう?
わたしの前途には絶望しかないのだろうか……
そう悩んできたわたし。
いや、できないことはない!
わたしの妹であるオディナティーヌとルシャール殿下が婚約すればいいのでは?
そういう思いが心の中に浮かんできた。
転生一度目と同じく、今の人生がルシャール殿下のルートに進んだ場合、どちらにしても、ルシャール殿下は、オディナティーヌと結婚することになる。
だとすれば、もう今の時点で、婚約者の座をオディナティーヌに譲ってしまえばいいのだ。
継母だって、その方がいいに違いない。
ゲームでのルシャール殿下ルートでは、
「オディナティーヌの方がルシャール殿下の婚約者にふさわしい!」
と強く主張する継母との戦いがエスカレートしていった。
それが、わたしの婚約破棄と処断につながっている。
婚約者の座をオディナティーヌに譲っても、継母は、わたしに嫌味は言い続けると思う。
しかし、わたしに対する憎しみについては、大きく減っていくのではないかと思っている。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。




