第二十三話 転生二度目
わたしはこうして、出発点の人生を思い出した。
それは、悲惨としかいいようのない人生。
体が弱かったこともあるけれど、二十歳になることなく、この世を去ってしまっていたのは、わたしにとって大きな衝撃だ。
しかも、幼馴染と恋人どうしになり、二人だけの世界にも入っていながら、後から幼馴染と親しくなった女子に恋人の座を奪われてしまう。
自分で自分がかわいそうになってくる。
この世を去る時、わたしは、来世というものがあるのであれば、乙女ゲーム「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」の登場人物であるオクタヴィノール殿下のような方と恋人になり、結婚したいと思っていた。
来世というものがあること自体、信じ切れてはいなかったわたし。
来世は存在した。
そして、「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」の世界に転生することはできた。
わたしが好きだったゲームの世界だ。
そこまではよかった。
しかし、その転生先は、わたしの望んでいた主人公ではなかった。
なんと、リディテーヌという悪役令嬢に転生していたのだ。
この時の転生で、出発点での人生を思い出すことができず、そして、「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」の世界にいることを認識できなかったわたしは、「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」での悪役令嬢リディテーヌそのままの人生をおくり、最後は処断をされてしまっていた。
こうして転生している以上、出発点での人生よりも前の人生である過去世もあると思いたいところだ。
そこでの人生は、さすがにこの二つの人生よりはましだったと思いたい。
しかし、今のわたしはこの二つの人生しか思い出すことはできない。
いずれも、
「浮気をされてしまい、心も体も壊れてしまった短い人生」
「悪役令嬢として生き、処断されてしまった人生」
という悲惨きわまりない人生になってしまっている。
この悲惨な二つの人生を思い出したことで、わたしの心の中に大きな傷ができてしまった気がしていた。
いい思い出はほとんどなく、つらいところばかりが心の中に浮かんできて、わたしを苦しめていく。
こんな苦しみを味わうぐらいであれば、思い出さなければよかったと思う。
ただ、この心の大きな傷は、今生きているわたしの心の底に、もともとあったのだろう。
それを思い出したということなのだと思う。
わたしの過去世の中で、この二つの人生よりもいい人生をおくった時があるのであれば、癒されるとは思うのだけど……。
残念ながら、この二つ以外の人生を思い出すことはできないままだ。
しかし……。
今、一番大切なことは、過去を振り返ることではない。
これからどう生きていくかだ。
わたしは、転生二度目も悪役令嬢リディテーヌとして、既に十七年も生きていた。
処断をされる十八歳の時までは、後わずかの時間しかない。
もう既に、「悪役令嬢」としてのわたしのイメージは、かなりの部分で形づくられている。
このまま何もしないでいれば、処断をされるルートに進むだけだろう。
いや、多少のイメージチェンジをする努力をしたところで、周囲の今までのイメージを変えるのは難しい。
特に、継母とその連れ子のわたしに対するイメージを変えるのは、絶望的だと言っていい。
その周囲の理解のなさが嫌になって、結局は、「悪役令嬢」に戻ってしまう可能性も強い。
そう思っていくと、わたしは落胆せざるをえない。
しかし、落胆しているままでいるわけにはいかない。
わたしはこれからの人生について、様々な検討をし始めた。
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