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第二十一話 わたしは幼馴染に振られた

 わたしは冬伸ちゃんに振られた。


 幼馴染としてずっと一緒に過ごしてきて、せっかく恋人どうしになったというのに、古土沼さんという高校生になってから出会った女子に恋人の座を奪われてしまった。


 冬伸ちゃんは。


「りくらちゃんは俺にとって、大切な幼馴染だ。その関係はこれからも壊したくはない」


 と言っていたけれど、一旦恋人どうしにまで進化した関係が、ただの幼馴染にまで後退するということの意味を全く理解していない。


 わたしは冬伸ちゃんのことが好きで、愛してきた。


 わたしは冬伸ちゃんのものだと思ってきた。


 冬伸ちゃんもわたしに対して、


「俺はりくらちゃんのものだ」


 と言ってくれたというのに……。


 わたしは冬伸ちゃんに振られた後は、あまりにも大きな打撃を受けたので、泣くことはできず、呆然としていた。


 泣くことにより、冬伸ちゃんの心を変えようという気持ちも湧いてこないほどだった。


 家に帰ってからも、その状態は続いていた。


 しかし、夜寝る前になった時、今まで抑えていたものが、一気に押し寄せてきた。


 そして、しばらくの間、泣いた。


 泣いている内に、心がどんどん壊れていき、気力がなくなっていくのを感じていた。


 それでもその翌日、少なくなった気力を振り絞って、なんとか学校に向かう。


 いつもは冬伸ちゃんの家に寄り、冬伸ちゃんの家に合流してから向かっていた。


 でも、今日からはその必要もなくなった。


 冬伸ちゃんの家で合流してから、今まで一緒に登校していた冬伸ちゃんは、そばにはいない。


 幼稚園からずっと続いていた日課は、これで終止符をうたれたことになる。


 冬伸ちゃんはわたしのところからどんどん離れていく。


 それは胸が苦しくなることだった。


 しかし、それはまだまだ序章にすぎなかった。


 冬伸ちゃんと古土沼さんは、休み時間になると、廊下を歩いているわたしの前で堂々と仲睦まじいところを見せつけたのだ。


 いや、わたしに見せつけているわけではないだろう。


 わたしを振ったことで、正式に二人は恋人どうしになったのだ。


 そのうれしさを体全体で表現しているということだと思う。


 今まで、二人でのおしゃべりは、冬伸ちゃんの恋人だったわたしに遠慮していたと思う。


 でも、今の二人にはそうしたものが全くない。


 わたしがそばを歩いていても関係がない。


 幸せそうな笑顔を周囲に振りまいている。


 わたしはその光景を見て、怒りがこみあげてくるとともに、胸がますます苦しくなっていく。


 そして、ますます心が壊れていくとともに、体の調子も急速に悪くなってきていた。


 なんとか一日、学校で過ごすことはできたものの、明日以降の登校は無理そうなところまできていた。

 そんなわたしに、さらなる試練がやってくる。


 なんと、放課後、二人は肩を寄せ合いながら下校をしようとしていた。


 わたしは一人寂しく帰ろうとしていて、校門に向かって歩こうとしている時に、二人と会ったのだった。


 二人の楽しそうな姿。


 わたしは怒りを抑えつつ、冬伸ちゃんに、


「もうわたしは冬伸ちゃんの恋人には戻れないということね」


 と寂しく言った。


 かなわないとは思いつつ、


「いや、俺はもう一度りくらちゃんとやり直したい」


 と言ってくれるのを期待していた。


 しかし、そんなことはありえない話。


「りくらちゃん、正式に俺の恋人を紹介するよ。古土沼さんだ」


 冬伸ちゃんはそんなわたしの心も理解しようとはせず、うれしそうに古土沼さんを紹介した。


 古土沼さんも、


「鞍町くんの恋人になった古土沼居織です」


 とうれしそうに言った。


 古土沼さんはもともと、気配りができる方のタイプだと聞いてはいた。


 でも今日の古土沼さんはわたしに気配りをする気は全くないようだ。


 冬伸ちゃんの恋人であることを、心の底から喜んでいる。


 たいした話もできないまま、


「さようなら、冬伸ちゃん」


 と言うと、冬伸ちゃんは、古土沼さんと手をつないで一緒に帰っていく。


 わたしはそれを眺めているしかなかった。


 残りわずかになった気力を振り絞り、


「わたしは、まだ冬伸ちゃんのことが好き。あきらめたくない!」


 と叫ぼうとしていたのだけれど、仲が睦まじすぎて、叫ぶ気力は、あっという間になくなってしまった。


 そして、わたしの心はもう修復できないほど壊れてしまった……。


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