第二十話 幼馴染を寝取られた
冬伸ちゃんの言った言葉は、わたしのだいたい予想していた通りのものだった。
わたしが冬伸ちゃんの恋人という地位に安心している間に、ものの見事に古土沼さんによって、その地位を奪われてしまったのだ。
冬伸ちゃんや古土沼さんに対しても腹が立ってくるのだけれど、わたし自身にも腹が立ってくる。
もう少しわたしが冬伸ちゃんの心をつかむことができていれば……。
いや、今からでもまだ遅くはない!
「冬伸ちゃん、わたしは冬伸ちゃんのことが好き。愛しているし、結婚したいと思っている。別れるということは言わないでほしい。今まで通り、恋人どうしとして付き合っていきたいと思っているの」
わたしは冬伸ちゃんへの熱い気持ちを込めて言う。
胸が熱くなってきて、目に涙がたまってきていた。
そして、
「それに、古土沼さんとは、まだその、恋人としてのステージの大きな段階にはまだ進んでいないんでしょう?」
と言った。
わたしは冬伸ちゃんが、
「りくらちゃんと恋人として一緒に進んだ段階までは、まだ到達していないんだ」
と言ってくれるのを期待していた。
もし、キスにも到達していないのであれば、わたしに挽回できる可能性は十分あると思った。
キスにまで到達しているとなれば、挽回することは難しくなってくるものの、まだ挽回することはできるだろうと思っていた。
問題は、二人だけの世界にまで入っているかどうか。
ここまで二人の関係が進んでいると、さすがに挽回は難しい。
キスまでは仕方がないかもしれない。
しかし、せめてキスの段階までにしてほしいという気持ちは強い。
わたしは、冬伸ちゃんの返事は待った。
冬伸ちゃんは、少しの間、黙っていたが、やがて。
「りくらちゃん、俺は古土沼さんと既にキスをしているんだ」
と言った。
予想はしていたとは言うものの、きつい言葉だ。
「もう一か月近くも付き合っているのだから、それは仕方のないことだと思う」
わたしは自分に言い聞かせる意味でそう言った後、
「でも、それ以上の関係には進んでいないわよね?」
と言った。
お願い!
進んでいないと言ってほしい!
そこまで進んでいなければ、まだわたしたちは恋人どうしとして、やり直すことができる!
わたしは強くそう思ったのだけれど……。
冬伸ちゃんは、また少しの間、黙っていた。
そんなに長い時間ではなかったのだけれど、わたしにとっては長く感じられる時間だった。
そして、冬伸ちゃんは、
「冬伸ちゃん、俺、古土沼さんとは、もう恋人どうしとしての最高の段階にまで進んでいるんだ」
と言った。
その言葉は全く予想できなかったわけではない。
しかし、いざ言われてみると、わたしの心にとてもない打撃を与える言葉だった。
冬伸ちゃんは、浮気をしていた。
既に二人だけの世界に入ってしまっていて、もうそこにはわたしの入る余地はなかった。
そして、冬伸ちゃんは、わたしを捨てる決断をしたのだ。
「俺たちは、もうそこまでの領域に到達している。俺は古土沼さんに夢中だし、古土沼さんも俺のことを愛してくれている。俺はもうりくらちゃんのことを恋人として愛することはできない。好意はまだ持っているけど、それは幼馴染としてのもの。恋人としての愛情はもうなくなってしまったんだ。だから俺はりくらちゃんと別れなければならない。二人を同時に愛することはできないからだ。りくらちゃんには申し訳ないと思っている」
淡々と話をする冬伸ちゃん。
わたしは受けた打撃が大きすぎて、何も言えない状態だった。
「こんな状態になって、身勝手かもしれないけど、俺はりくらちゃんとは幼馴染としてこれからは過ごしていきたいと思っているんだ。りくらちゃんは俺にとって、大切な幼馴染だ。その関係はこれからも壊したくはないと思っているところなんだ」
冬伸ちゃんはそういう言葉をわたしに投げかけてくる。
今までのわたしであれば、
「わたしはせっかく冬伸ちゃんの恋人になったというのに、浮気をされてしまったのよ! もう恋人としての愛情がなくなったからと言って、ただの幼馴染に戻ります、という都合のいい話が通ると思っているの? わたしは冬伸ちゃんのことを一生懸命愛してきたのよ。それなのに、こんな冷たい仕打ちを受けるなんて……。恋人どうしでなくなったら、幼馴染としての関係も断ち切られるのが当然の話。ただの他人になり、口も聞かない関係になっていくだけのこと。冬伸ちゃんはそんなことも理解できないの?」
と言い返すところだ。
しかし、心が一気に壊れ始めたわたしは、ただ呆然としているだけだった。
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