第十六話 恋人どうしになっていくわたしたち
わたしは、
「冬伸ちゃん、誰か好きな人はいるの?」
と聞いた。
これはどうしても聞いておきたいことだった。
幼馴染として過ごしてきたことが、恋人の関係に変化していく上で。妨げになっていることは、予想していた通りだ。
しかし、まだ冬伸ちゃんからは言っていないのだけれど、好きな人がいるので、わたしとの仲を深めていきたくないのでは、ということはどうしても思ってしまう。
わたしが冬伸ちゃんへの告白を決意させる大きな要因となった古土沼居織さんという存在。
わたしの告白をすぐに聞き入れてくれば、古土沼さんのことをどう思っているか、ということについては聞く必要がなかった。
でも、わたしの告白を聞き入れる気を今のところはない以上、どうしても古土沼さんのことは聞いておきたかった。
「それは……」
と言った後、冬伸ちゃんはなかなか返事をしようとはいないので、わたしは、
「もしかして古土沼さんのことが好きなの?」
と言った。
顔を赤らめる冬伸ちゃん。
やがて冬伸ちゃんは、
「好きと言えば好きだ。りくらちゃんもかわいいけど、古土沼さんもかわいいから。でも別に付き合っているとかそういうことではないんだ。ちょっと気になる友達というところかな」
と言った。
しかし、友達とはいいつつも、少し恥ずかしそうに話をしているところは、どうしても気にならざるをえない・
これは少なくとも意識はしている表情だ。
わたしの心の中に、
「冬伸ちゃんはわたしのもの! 古土沼さんのものではない!」
という気持ちが、急激に湧き上がってくる。
そして、わたしは。
「冬伸ちゃん、お願い! 古土沼さんではなくて、私と付き合って! わたしを好きになって!」
と頭を下げてお願いをした。
先程までは、お願いの仕方をしたら、「強制」になってしまい、この場は良くても、長続きしないと思っていたのに、古土沼さんの話を聞いた途端、抑えていたものが、一気に吹き出てしまった。
これはわたしの失敗だったと思う。
いつもはもう少し人の気持ちを考慮しながら話をするわたしなのに……。
しかし、この時のわたしは、冬伸ちゃんの気持ちを考える余裕が全くなくなっていた。
冬伸ちゃんは、わたしの剣幕に押されていく。
しばらくの間は、困惑していたのだけれど、やがて、
「りくらちゃんの気持ちは理解した。そうなると、俺の気持ちも伝えなければならないと思う」
と言った。
「冬伸ちゃんの気持ち?」
「そうだ。俺はりくらちゃんのことが幼い頃から好きだった。でも、最近、りくらちゃんに対する気持ちが、自分でもわからないことがあったんだ。俺は単に幼馴染としてりくらちゃんが好きなのか、それともそれ以上の存在として好きなのか、とはいっても、りくらちゃんを恋の対象として、意識しているわけでもない。自分の気持ちがよくわからなくなってきていたところに、今日りくらちゃんは告白してくれた。俺はこの告白を聞いた時、困惑はしたけど、それ以上に、心が沸き立ったんだ。そして、俺はりくらちゃんに無意識の内に恋をし始めていたことを認識した。自分の気持ちに気が付いていれば、俺から告白していたのに……。古土沼さんのことで、心を苦しめてしまったようだし、申し訳ないと思っている」
「冬伸ちゃん……」
「俺からもりくらちゃんと付き合うことをお願いしたい。まだりくらちゃんも俺に恋し始めたところだと思うけど、俺はりくらちゃんと本物の恋人どうしになりたいと思っているんだ。その為にも、りくらちゃんのことを今まで以上に理解していきたいと思っている」
と言った。
「面白い」
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