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第十二話 わたしのライバル

 二学期になると、冬伸ちゃんについて、付き合っている女子がいるという噂が流れ始めた。


 その付き合っている相手がわたしであればよかったのだけれど、残念ながらそういうわけにはいかなかった。


 わたしと冬伸ちゃんの仲はそこまで進展していなかったからだ。


 噂の相手は、隣のクラスの美少女。


 夏休みにデートをしていたという噂まで耳に入ってきた。


 本当に付き合っているとしたら、それは脅威だった。


 今まで築き上げてきた冬伸ちゃんとの関係。


 それが思わぬ横やりで壊れてしまう可能性が出てきている。


 もし冬伸ちゃんが、その女子と恋人どうしになっていたとしたら、ただの幼馴染にしかすぎないわたしは、見向きもされなくなるだろう。


 今まで、冬伸ちゃんとの仲を進展させようとしなかったツケがここで出てきている。


 わたしは、夏休みの終わり頃になると、その仲を進めていこうという気になっていたのだけれど、それでは遅かったのかもしれない。


 わたしはその噂を聞いて、先を越されたと思い、落胆した。


 ただ、よくわからないのは、冬伸ちゃんが、付き合っている女子の噂があるのにも関わらず、登校は二学期になってもわたしと一緒にしていることだ。


 今までと変わらない態度で接している。


 これはどういうことなのだろうと思った。


 普通、他の女子と付き合い始めたのであれば、わたしと一緒に登校することは遠慮するはずだと思う。


 もしかしたら、周囲が間違った認識を持っているだけかもしれない。


 わたしは、その噂を聞いた翌日、冬伸ちゃんに直接、噂のことを聞こうと思った。


 しかし、それはなかなか言葉になってこない。


 結局その日は、噂のことを冬伸ちゃんに聞くことはできなかった。


 そしてその後も、確認することができないまま、二日、三日と経っていく。


 わたしの心の中では、あせりの気持ちが大きくなっていった。


 噂の女子と付き合っているとすれば、時間が経てば経つほど、その仲は深まっていくことになるからだ。


 それは絶対に避けたい。


 そう思っていると……。




 ある日の休み時間。


 わたしが廊下を歩いていると、わたしのクラスの近くで、冬伸ちゃんとその女子が仲良さそうにおしゃべりをしていた。


 この光景を見るのは初めてではなく、今度で三度目。


 初めて見た時は、あまり気にはならなかった。


 しかし、三度目ともなると違ってくる。


 なんといっても二人は、楽しそうにしている。


 そして、心が通じ合っているようにも思える。


 これは、初めて見た時にはなかったことだ。


 こういう光景を見たら、付き合っているという噂が流されても仕方がないと思う。


 でもわたしは、付き合っているという噂は信じたくはない。


 二人はただの友達でいてほしい。


 しかし、付き合っていなかったとしても、ただの友達であったとしても、親しそうにしているところをこうして見るというのは、決して気分のいいものではない。


 もちろん、冬伸ちゃんはわたしと付き合っているわけではない。


 他の女子と話をしていても、わたしがそれをとやかく言う権利はないのは理解している。


 理解はしているのだけれど……。




 その日の夜。


 ベッドで横になっていると、わたしの心の中で、冬伸ちゃんを独占したいという気持ちが湧いてきていた。


 わたしは冬伸ちゃんのことが好きだ。


 最近、冬伸ちゃんと幼い頃にした「結婚の約束」を思い出し、改めて幼馴染との仲を深めたいと思うようになってきている。


 冬伸ちゃんは他の女子のものではない!


 奪われてなるものか!


 冬伸ちゃんはわたしのものだ!


 急速に冬伸ちゃんへの想いが高まっていく。


 わたしは、冬伸ちゃんに告白することを決意した。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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