第百話 増えていく理解者
しかし、リディテーヌは、わがままで傲慢な態度をクラスの人たちに取り続けた。
そして、クラスの中の少なくない人たちに、嫌味を言い、イジメることもした。
違うクラスのルクディアさんとはライバルで、嫌味の言い合いは日常茶飯事だった。
こうしたことが、「つらい思いをしてきた少女は、素敵な人に出会い、溺愛されていく」のルシャール殿下ルートにおいて、ルシャール殿下による「婚約破棄」「公爵家追放」「処断」の一つの大きな要因になっていた。
わたしは転生の記憶を思い出した時に、周囲に友達がいないことに愕然とした。
そして、さらに驚いたのは、「取り巻き」と言われている人たちさえもいなかったことだ。
リディテーヌというキャラクターがそういう設定になっていることは知っていた。
しかし、自分がそうなってみると、これほど寂しいことはない。
わたしは、生まれ変わる決意をした時、学校においては、とにかく嫌味を言ったり、やイジメをしたりすることをすぐに止めようと思った。
気品は持ちながらも、いつもにこやかに笑って、心やさしくする。
わたしはクラスメイトたちにそういった態度で接していった。
ルクディアさんに対しては、同じ態度を取りつつも、毅然とした態度を取るべきところは取っていくことにした。
こうした態度の変化は、なかなかすぐには受け入れられなかった。
しかし、それでも少しずつ理解者は増え始めていく。
ルクディアさんとは嫌味を言い合うことはなくなっていった。
友達も少しずつでき始め、おしゃべりを楽しむことができるようになり、お茶会も開催できるほどの仲になっていった。
そして、わたしの評判が良くなってくると、後輩たちの中でわたしを慕う人も出てくるようになった。
転生の記憶を思い出したのが卒業式の一年ほど前で、こうして学校内の生活を楽しめるようになったのは、五か月ほどでしかなく、その点は残念に思った。
卒業式も思い出深いものになった。
出発点の人生では、病気の為、そこにたどり着く前にこの世を去ってしまった。
転生一度目の時も、「処断」されてしまったので、そこにたどりつけてはいない。
それだけに、卒業式に出席することができたのは、涙が出るほどうれしいことだった。
この日、わたしは友達とお互いに祝い合うことができた。
ただ、わたしは四月以降、ルクシブルテール王国へ行ってしまう。
友達とわたしは、別れを惜しんだ。
そして、慕ってきた後輩にもお祝いをされると同時に、別れを惜しまれた。
わたしはルクディアさんに対しても、気品を維持しながら心やさしく接し続けた。
その結果、ルクディアさんのわたしに対して敵対心は弱まっていった。
そして、友達というところまで仲良くはなれなかったものの、お互いの卒業を祝うことができるというところまで、仲を改善することができたので、その点はうれしく思っていた。
五か月ほどだったとはいうものの、こうして友達や後輩と仲良くすることができたのは、とても良かったと思っている。
オディナティーヌは、わたしが放任主義をとって最初の内は、わたしの態度がもとに戻ることを恐れていたので、心を開こうとはしなかった。
しかし、わたしの努力を理解し始めてからは、妹としての普通の対応をしてくれるようになってきた。
わたしたちの仲も、普通の姉妹だと言うことができるぐらいに良くなってきたと思う。
わたしが転生のことを思い出す前は、いくら義理とはいうものの、姉妹とは到底呼ぶことができなかった状態だった。
その頃に比べると、大きな進歩だと思っている。
わたしとオディナティーヌが人間的に成長してきたということだと思う。
それはわたしにとってはうれしいことだった。
ルシャール殿下とオディナティーヌの婚約式は、前々年の三月に行われた。
わたしが転生時の記憶が戻り、オディナティーヌにルシャール殿下の婚約者の座を譲った後のことだ。
この時は、小規模なものだった。
その後、七月の舞踏会でお披露目会を行い、二人の婚約を祝った。
年末に行われる舞踏会は、毎年、大規模に開催されるものであるのだけれど、その年の年末である十二月の下旬に行われた舞踏会では、改めてルシャール殿下とオディナティーヌの婚約を祝うことになり、大いに盛り上がった。
わたしは、もうこの時には、ルシャール殿下のことは「遠い日の思い出」の状態になっていた。
この舞踏会の時、
「オディナティーヌ、改めてルシャール殿下との婚約、おめでとう!」
と心の底から祝うことができて、良かったと思う。
二人の結婚式は、オディナティーヌが二十歳を迎えた後の、今から一年後の九月に予定されている。
その時は、わたしも出席する予定だ。
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