魔王の生まれ変わりの少女~13歳~15歳の時期~
中学生くらいの年になり、制服を着たがるようになった結衣。
職員達は結衣が望む制服をデザインしようと努力し──
「制服を着てみたい?」
「うん、学校行けないけど、制服を着て『中学生になったんだ』的な気分を味わいたい」
黒夜にそう提案すると、他の職員がのってきた。
「いいっすね! 皆で最高の制服を考えないっすか?」
「それいいわね、結衣ちゃんどう?」
「うん、それがいい」
その言葉に黒夜はふぅと息を吐いた。
「いいだろう、結衣が望む制服を考えてやってくれ」
「あれ、黒夜さんは参加しないっすか?」
「そういうのには向いていない、私は別の仕事をする」
「……」
その言葉に何処か結衣は寂しそうな表情を浮かべた。
「だから、最終段階で二択か三択やらに絞れたら教えてくれ、私も意見を出す」
「了解っす」
「では行ってくる」
「行ってらっしゃい、黒夜」
「行ってくる、結衣」
黒夜がいなくなると、職員達が結衣の頭を撫でた。
「結衣ちゃん、黒夜さん大好きだねー」
「うん、黒夜のこと好き」
「職員の中で一番っすか?」
「うん、一番」
「じゃあ俺は何番っす?」
「……他の職員さんはみんな同じくらい好き」
「なるほどっす」
「じゃあ、制服のデザイン考えましょうか」
「うん」
一人の女性職員がスケッチブックとタブレットと本を持ってきた。
皆で、ああでもない、こうでもないとスケッチブックとタブレットに書き込み始めた。
夕方、黒夜が帰宅すると、職員達は悩み、結衣も悩んでいた。
「どうなった?」
「四つまでは絞れたんですが、そこから先が……」
「うん……」
黒夜は制服のデザインを見る。
一つ目はセーラー服、二つ目はブレザー服、三つ目は吊りスカート、四つ目はジャンパースカートだった。
黒夜はしばし考え込んでから一つを指さした。
「私はこれだな」
ブレザー服だった。
「一番スラックスも、スカートも気分で着替えられそうだからな」
「黒夜が言うならそれにする」
「では、作成の方は頼んだぞ」
「了解っす」
「結衣ちゃん、スリーサイズと身長測りましょうねー」
「うん」
こうして、結衣の制服は作られ始めた。
数日後──
「じゃーん! どうっすか黒夜さん!」
「……」
紺色をメインカラーとし、リボンを赤い色にしたブレザー服を着た結衣がいた。
「ああ、似合っているよ」
「本当? 嘘じゃない?」
「嘘をついてどうするんだ」
その言葉に、結衣は嬉しそうに笑いくるりとターンした。
スカートがひらめく。
「……スカート、大丈夫か? 下着が見えたりしないか?」
「? スパッツはいてるから平気だよ」
そう言って結衣がスカートをめくると、黒夜は慌ててその手を離させた。
「いいか結衣、男性、男子のいる前ではスカートはめくるものではない」
「はぁい」
「今後めくらないように気をつけなさい」
「スパッツはいてるのに」
「それでもだ」
黒夜に言われて不満そうだったが、結衣はしぶしぶ従った。
「あと、いまスカートをめくった時思いっきり見た職員」
男性職員数名がぎくりとする。
「反省文を出すように」
「「「げー!?!?」」」
「うら若き乙女がスカートめくったのを目に焼き付けようとしたんだ、それくらいは当然だろう」
「そうよ、全く」
「そう言えば白のハイソックスだったな、ストッキングかタイツでも良かったのでは?」
「あ、それは俺っす、そうなると黒一色になっちゃって何か微妙だったので」
「そういうことか、ならいい」
「お前何で反省文書かないんだよ!」
「女子がスカートめくるのを見るのは大罪っす! 女子同士ならともかく、野郎が見たらいけないものっす!」
唯一、スカートをめくった際即座に目を伏せた男性職員がそう反論する。
すると他の男性職員は渋々、反省文を書き始めていた。
「……」
結衣は学習時間なので勉学に励んでいた。
学習時間と復習時間が終われば好きに時間を使っていいので、学習時間と復習時間は真剣に集中して勉強に取り組んでいた。
学習時間と復習時間が終わり、結衣は漸く息を吐き出す。
「ふぅ」
そうして伸びをすると、学習道具を片付けてしまい、レクリエーションルームへと移動していった。
レクリエーションルームに来ると、何名か職員が遊んでいた。
「ねぇ、何してるの??」
「ああ、新作のゲームを遊んでるんだよ」
「隣で見てていい?」
「勿論だよ」
結衣は、遊んでいる職員の隣に座り、テレビの画面に見入る。
しばらくして──
「結衣食事の時間だ」
「あ、もうそんな時間?」
黒夜が呼びに来て、時間経過に気づく。
「お前達も行ったん休憩して食事をしろ、あと職務は終わっているか?」
「バッチリっすよ!」
「勿論終わらせて提出済みです」
「わかった。確認しよう。結衣は夕食を食べてなさい」
「はぁい」
結衣はそう言って、食堂へと向かった。
食堂へ向かった結衣は、カレーライスとサラダを食べていた。
「職員さんのつくる料理、何でも美味しい」
「おや、嬉しい事言ってくれるねぇ」
調理担当の職員が嬉しそうに結衣の元にやってくる。
「ねぇ、そろそろ料理を料理を教えてよ」
「そうだねぇ、黒夜さんに許可が貰えたらね」
「何の話だ」
「黒夜、私そろそろ料理覚えたい」
「何故?」
「いつも皆にしてもらってばっかりだから、私からも何かしてあげたいの」
「……そうか、ならいいだろう」
「本当?」
結衣は嬉しそうに黒夜に抱きついた。
料理の練習も一日の計画に組み込まれてから、結衣は勉強も料理も真剣にこなした。
職員達はそんな結衣を微笑ましそうに見ていたが、一人黒夜だけ厳しい表情をしていた。
ある日──
「ねぇ、黒夜。どうしてそんな不安そうな風にも見える険しい表情しているの?」
二人きりになると、結衣は黒夜に問いかけた。
「……結衣の目はごまかせないか」
「他の人からすると無表情かもしれないけど、私からはそうじゃないからね!」
「手厳しいな」
「で、実際問題、どうしたの?」
結衣は再度たずねる。
「──君はあまりにも善良に育ちすぎた、我が儘もろくに言わない」
「そんな事ないよ、我が儘いっぱい言ってるよ?!」
黒夜の言葉に結衣は信じられないと言わんばかりの表情を浮かべる。
「君のは我が儘じゃなくてお願いだ、だから職員の皆は君の願いを叶えたがってる」
「……」
「そんな君がもし悪逆に見つかり、それを目の当たりにしたときの免疫が0な事を考えると、恐ろしくてたまらないんだ」
「ここは安全なのに?」
「ああ、安全だ。それでも──」
「私は、君の善良性を利用する輩が出るのでは無いかと心配なのだ」
そういう黒夜に結衣はため息をついた。
「黒夜、言っておくけど、私そこまでよい子じゃないよ、もうじきわかるから」
「何?」
「それまで内緒」
結衣はそう言ってその場から立ち去った。
これが私の中学時代とも言える時期。
さて、ここまでは私の過去。
これからは今と未来について話をしよう──
さて、結衣がいい子じゃないという理由はどこにあるのでしょうか?
タイトルで予想ができた人は凄いかな。
いや、私の小説読んでたら予測は出来てた可能性が高いですね。
いずれにせよ、次回も宜しければ読んでください。