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魔王の生まれ変わりの少女~三歳頃~

三歳になった結衣は誕生日を職員と黒夜に祝われて幸せだった。

だが、それもつかの間、魔王を覚醒させようとする組織の襲撃に遭う──





 三歳の誕生日。

「結衣ちゃん、誕生日おめでと~!」

「めでたいっす!」

「うん、あいがと……」

 組織の皆に祝福されるが落ち着かない様子の彼女に黒夜が近づく。

「結衣、誕生日、おめでとう」

「あいがと、こくや」

 黒夜が近づき、座るように促すと、漸く落ち着いてケーキと向き合った。

「……きれぇ」

 綺麗に飾られて、ろうそくが立てられたケーキに、結衣は漸く見入る。

 先ほどまでは見向きもしなかったのに。

「結衣ちゃんの為のケーキですからね、一人で食べていいんですよ」

「これ……ひといでたべてもいーの?」

 結衣はケーキを指さす、結衣が食べきれるサイズのケーキだ。

 職員達が食べることは考えて作られていないのが分かる。

「……こんどは、みんなでたべたい」

「じゃあ来年からは皆で食べる大きさのケーキにしますね」

「結衣ちゃん優しいっす!」

「本当、優しいわ」

 褒められて、結衣は居心地が悪そうにしていた。

「結衣、君は優しい、それだけじゃない、負い目も負っているんだな」

「……」

 黒夜のささやきに、結衣はこくりと頷いた。



 幼いながらも、結衣は前世の事をはっきりと覚えていた。



 食べる力さえなく、死に絶えていく子ども達、老人達。

 彼らが何をしたというのだろうか?

 この残酷な世界はどうしてこんな人々にだけ残酷なのだろうか?

 変えなければ、変わらせなければ──



「結衣!!」

 黒夜に呼ばれて、結衣は我に返ったようだった。

「……今は深く考えず、自分の誕生日を楽しむんだ」

「……あい」

 職員達も壁際に逃亡していたのから戻ってくる。

「覚醒するんじゃないかとヒヤヒヤものでした……」

「心臓に悪いっす」

「じゃあ、皆で歌を歌いましょうか」

「うた?」

「お祝いの歌よ、結衣ちゃん」

 女性の職員が言う。


「「「「「ハッピーバスデートゥユー、ハッピーバスデートゥユー、ハッピバスデーディア結衣~♪ ハッピーバスデートゥユー♪」」」」」


「はい、ろうそくの火を消して」

 いつの間にか3の数字の形をしたろうそくに火がつけられていた。

 結衣はふーっと息を吐いてろうそくを消した。


「おめでとう!」

「おめでとうっす!」

「おめでとう、結衣ちゃん」

「おめでとう、結衣」

「そう言や黒夜さんだけ歌ってなかったっすよね」

「……恥ずかしかったんだ」

「なんすかそれー!?」

 それを見て、結衣はくすくすと笑った。

「結衣、どうした?」

「こくやらしい」

「……」

「結衣ちゃん御公認でよかったっすね!」

「それとも来年は歌ってみます?」

「いや、遠慮する……ホラ、結衣食べなさい」

 黒夜は結衣にフォークを持たせ、ケーキを近づける。

 結衣はケーキをじろじろ見始めた、どうやって食べるか悩んでいるようだった。

「食べやすいように切ろうか?」

「おねがい」

 結衣に言われ、黒夜はナイフを取り出すと、ナイフでケーキを食べやすいように切った。

 それで結衣は漸く食べ始めた。


 一口食べると目を煌めかせた。


「おいしい!」


「本当?! 作った甲斐があったわー!」

 ケーキを作った女性職員が嬉しそうにガッツポーズを取る。

「来年も美味しいのを頑張るからね!」

「ほんとう?」

「本当」

 ケーキを作った女性職員の手を握る。

「結衣ちゃん?」

「……しなないでね」

「結衣ちゃん……」

 不安げに言う結衣に、女性職員は微笑んだ。

「大丈夫、体の丈夫さには自信があるの」

「……でも、しんじゃうときは、しんじゃうよ」

「心配してくれてありがとう」

 結衣は不安そうな顔のまま、女性職員を見つめた。



 それから一週間後、組織の施設が襲撃された。

 魔王覚醒を目指すカルト組織による犯行だった。

 黒夜は急いで組織に戻り、襲撃者達を打ち倒していく。

「結衣!」

「ま、魔王覚醒はもうじき……」

「させてなるものか……!」

 黒夜は強力な魔力を感じ取り、その場所へと向かう。

「結衣!!」

「……」

 結衣は黙って、女性職員を抱きしめている。

 壁には貼り付けにされた襲撃者達いた。

 黒夜は結衣にかけより、女性職員も抱きしめて言う。

「結衣彼女は生きている! 治療が優先だ! 愚か者達を殺すなど君がする必要はない!」

「……こくや」

 泣き顔を見せて、結衣は黒夜を見上げた。

「しょくいんさんたちをたすけて……」

「大丈夫全員助けた、だから落ち着こう」

 そう言うと、結衣は気を失った。

「……結衣、ちゃんは、大丈夫?」

「大丈夫だ、あと保護する職員は貴方だけです、治療を」

「わかってる、ケーキ、来年も、再来年も、ずっと作るって約束したもの」

 女性は弱々しかったが、それでも命を繋いでいた。

 他の無傷の職員が来て、負傷した職員達を運んでいく。

 また手の空いた職員が、結衣を別施設に搬送する。


「……」


 黒夜は、拘束から解放された襲撃者に剣を向ける。

「こんな腐った世の中を変えてくれるのは魔王様しかいないというのに何故邪魔──」

 首を切り落とした。

「だからこそ、彼女を魔王にさせられない、人を『滅ぼす』と言った魔王にさせられない」

 黒夜は襲撃者達の息の根を止め、死体から得た情報を元に襲撃者達の組織に向かって壊滅させた。

 一人残らず。





 黒夜の組織も、結衣の居場所がバレたこともあり、全員引っ越しとなった。

 また、結衣の死体を偽装し、結衣の命を狙う輩も欺く工作をした。


 結衣は襲撃事件の後、しばらく塞ぎ込んでいた。

 自分が原因で襲撃されたのを、幼いながらに理解しているからだ。

 新しい自分の部屋でベッドの上で毛布を被りくるまっている。

「結衣」

 後始末を終えた黒夜が戻ってきて、結衣に声をかける。

 結衣は泣きはらした顔で、結衣が黒夜にかけより抱きついてきた。


 黒夜は結衣を抱きかかえ、扉を閉めて、背中をとんとんと叩く。


「どうした?」

「ゆい、うまれちゃいけなかった?」

「そんな事は無い」

「でも……」

「結衣、君はどんな境遇でも、私達には望まれて生まれてきてくれたんだ」

「のぞまれて……」

「君の生みの親は知らんが、私達は君が生まれるのを心待ちにしていた」

「……」

 黒夜は嘘は言っていない。

「だから泣く必要は無い」

「でも、けがしたしょくいんさんたちが……」

「彼らは彼らの職務を全うしただけだ、君が責められる言われはない」

「……」

「もし責めてくるものがいたら私に言ってくれ、私が責められよう」

「どうして……」

「君の事が大切だからだ」

 黒夜の言葉に漸く落ち着いたのか、結衣は黒夜の腕の中で眠り始めた。

 黒夜はベッドに結衣を寝かせると、側に腰を下ろした。

「結衣、どうか今世では心穏やかに暮らしてくれ……」

 黒夜は眠る結衣の頭を撫でた。





 これがものこごろつく頃の出来事。

 私の前世が魔王だからとかそういうので思い悩んだけど黒夜や職員さんがいたから乗り切れた。

 さて、次は私の小学生時代に相当する時期のお話──







三歳で既に思い悩むのは前世が魔王だからでしょう。

さて、小学生時代に相当する時期では何が起きるのでしょうか?

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