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魔王の生まれ変わりの少女~赤ん坊時代~

魔王の生まれ変わりの赤ん坊は劣悪な環境に置かれていた。

魔王の怨嗟がたまりつつあるその場所に、とある組織にいる者達が訪れ赤ん坊を奪うようにさらっていく。

彼らの真意は──




 私の前世は魔王だった。

 厨二病?

 残念、事実なのだ。

 私は一度世界を壊そうとして、そして──

 うん、そこからの記憶が曖昧なのだ。

 取りあえず、夫と養子達を教会の連中に殺されたから魔王になったのは覚えてる。

 だが、魔王になって世界を壊そうとしてそこから先の記憶が曖昧。

 世界は壊れていないから、多分誰かに殺されたんだと思う。

 誰に殺されたのか分からないが、取りあえず今は世界を壊そうとか考えていない。


 何故か。


 私は劣悪な環境で生まれた。

 俗に言う育児放棄をされたのだ。

 本来ここでぶっ壊すポイントがたまるはずが、とある組織に引き取られ、そこで外の世界とはあまり触れあわずに暮らしているからだ。

 私自身、外の世界に出たい気分では無い。

 無菌室で育てられたようなものだ。


 組織の目的は只一つ。

 魔王を蘇らせない。

 魔王の復活阻止。

 つまり私が魔王に覚醒しないのが組織の目的なのだ。


 覚醒したら世界は終わるから、しゃーないね。


 で、これはそんな場所で育つ私の育成記録でもある。





「その子を渡せ」

 黒髪の美しい男性が、いかにも柄の悪そうな男に声をかける。

「あ゛あ゛?! なんだってガキを渡さなきゃ──かひゅ」

 男性は男の首を掴み、そのまま上に持ち上げた。

「もう一度言う、死にたくなければその赤ん坊をこちらに渡せ、まともに育てるつもりがないのだろう?」

「わ、渡すわ! だから命だけは!!」

 化粧で着飾った女が赤ん坊を持ってくる、男性は男を放り投げ赤ん坊を受け取る。

「……」

「ぁぶぅ……」

 不満げな声を上げる赤ん坊を見て、男性は息をつく。

「赤ん坊なのに、もう記憶を持っているのか……どこまで記憶を持っているのやら」

 男性は独り言を言うとその場から立ち去った。

「け、警察……!!」

「馬鹿野郎! 警察に連絡したら俺達の──」

「そのことについては心配無用です」

 若い女性が現れスマートフォン片手に話出す。

「な、なんだテメェ」

「貴方達二人が行った子どもへの虐待はしっかり報告致しました、警察もここに来るでしょう」

「な……」

「に、逃げなきゃ!!」

「どこへ?」

 女性が二人をたたきのめす。

「貴方達は塀の中でゆっくり反省するといい、今は虐待に関して厳しくなってますからね」

 女性は警察が来ると、事情を話し二人が連れて行かれるのを見送る。

 そして、警察が衰弱している子ども達を保護し、連れて行くのを見送ると姿を消した。





 赤ん坊らしからぬむすっとした顔をしている赤ん坊を、ベビーベッドに寝かせてそこで職員らしき人々が顔をのぞき込む。

「本当にこの赤ん坊が魔王の生まれ変わりなんですかね?」

「生まれ変わりだとも、魔王の『息子』の私が保証しよう」

 黒い服に身を包んだ黒髪の美しい男性がそう言った。

「嫌な保証ですね……」

 女性の職員が呟く。

「この子、どうやって育てます?」

「この組織で育てよう、外には出さず、ここで一生を終えて貰う」

 男性は淡々と述べた。

「それはいくら何でも……」

「なら紛争、人種差別、性別差別など色々な魔王の地雷を踏む世界を見せて育てるのか?」

「そうですね……それはちょっと……」

「だからだ、この子を魔王に覚醒させてはならない、絶対にだ」

「わ、分かりました」

「それにしても赤ちゃんならもうちょっと可愛い顔をしてくれないかなー」

「むすっとしてますもんね」

「ああ、記憶を持ってるから覚醒する気が今かなり高い、あの産んだ連中の育児放棄と暴力で覚醒するつもりだったんじゃないか?」

「き、危機一髪でしたね、黒夜(こくや)さん」

 職員は男性(黒夜)にそう言うと、黒夜は静かに頷き、赤ん坊をのぞき込み優しく撫でた。

「どうか、魔王にならないでくれよ」

「あーうー」

 赤ん坊は、黒夜の指を掴んで口に含んで黒夜を困らせた。

「……赤ん坊だな、どうすればいい」

「消毒済みっすからそのままでいいでしょう、赤ちゃん吃驚する程力強いですし」

「むぅ……」

「それよりも名前よ名前、あの連中がつけたキラキラネームなんかじゃ無くて普通の名前をつけましょう!」

「そ、そうっすね」

「名前辞典もってきたよー」

「ネットでも調べましょうよ!」

 職員が総出で、あーでもない、こーでもないと話し合い、赤ん坊の名前は結衣(ゆい)となった。

 名字は七曜(しちよう)となり。

 七曜結衣という女の子として育てられることとなった。



「あぶー」

「結衣ちゃん、それは食べちゃダメっすー!」

「おしゃぶりは何処だ?!」

 組織の職員は育児にてんやわんやすることとなった。


 何せ普通の赤ん坊に見えて、既に普通の赤ん坊では無い。

 目を離すと組織の施設内のどこかに移動して何かしてるのだ。

 外に出ないのだけは幸いだが。


「よしよし……」

「やっぱり前世が息子さんなだけあって懐くんですかね」

「いや、この子はそれを感じ取ってない、ただ私と似たものを感じているのだろう」

「……魔王の血ですかね」

「だろうな」

「あぶぶー」

 赤ん坊はバシバシと胸を叩いた。

「分かった、分かった、誰かミルクを持ってきてくれ」

「普通の赤ん坊と違って泣くのがあんまり無いから泣く時がなんなのか分かりやすいですよね」

「良い事がわからんがな」

「黒夜さんそんな悲観しないでくださいよ」

「はーい、ミルクもってきましたよー」

 女性の職員が黒夜に哺乳瓶を渡すと黒夜は哺乳瓶の口を赤ん坊に近づけた。


 赤ん坊は自分の両手で瓶を持ってんくんくとミルクを飲み始めた。


「こういう所が他の赤ん坊とやっぱり違うところね。私の姪っ子と大違い」

 ミルクを飲み終わると哺乳瓶を黒夜に渡し、またバンバンと叩き始めた。

「はいはい、ゲップだな」

 黒夜は赤ん坊の背中をとんとんと叩いてゲップをさせて上げた。

「どんな女の子になるのかしら結衣ちゃん」

「魔王属性もった子にだけはならないで欲しいっす!」

「同感だ」

 黒夜はほ乳瓶を女性職員に渡し、赤ん坊を抱っこし続けた。



 黒夜がいるときは比較的赤ん坊は大人しかった。

 だが、黒夜が外出すると決まって組織内は騒動になった。

「結衣ちゃん何処ー?!」

「わーまた黒夜さんに怒られるー!!」

「いた、あそこだ捕まえろ!!」

「って逃げ足速い!!」

 等という騒動が毎回繰り返されていた。



 黒夜は最初はその騒動を信じなかったが、監視カメラの映像を見て信じた。

 そして赤ん坊が何故ここまで職員を困らせるのか分からなかったが──


「結衣、私がいないからと言って他の人に迷惑をかけるのはダメだぞ」

「あぶぅー……」


 と、黒夜に言われてから赤ん坊は若干大人しくなった。





 ──これが私が赤ん坊の頃の記憶。

 いや、生まれて早々親が反吐が出る人間だったから人間不信の赤ん坊だったのよ。

 だから黒夜がいないとまぁ、職員さんに迷惑かけちゃってたのよね。

 反省はしている。





 さて、次は私が物心つく、と言われる位の年の話──








魔王が前世で魔王にならない為に施設で育てられる赤ん坊。

箱庭とそこの人々は、彼女に何をもたらすのでしょうか?

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