最終話 運命の人
1年後……
「二宮先輩、品出しと新人教育お願いします!」
「はいよ店長! 任せろし」
美影書店は今も存在している。
そして俺が店長として、また正社員として働かせてもらっている。
もちろんそんな甘い話ばかりではなくて、毎月の売り上げとかを社長である日菜の父親に報告しなければならないのだ。まぁそれでも続けられている理由がある。
「すみませーん。異世界帰りの書店員さんってこちらですか?」
「はい! 俺ですよ」
「あぁよかった。私、ネットニュースを掲載しています浜田と申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ今日はよろしくお願いします」
「あれ? もう1人異世界帰りの書店員さんがいるんですよね?」
「あ、はい。日菜ももうすぐ出勤してきますよ」
「よかったよかった。インタビュー、期待していますよ」
「はい! 期待していてください」
美影書店が存続できている理由の一つ、二宮先輩の投稿を見た企業からのインタビューだ。
9万いいねを見たフォロワーが店に来ることはほぼなかったけど、興味を持ったライターがネットニュースで取り上げた。それにより多くの企業が注目するようになり、こうしてインタビューを受けて記事にしてもらうわけだ。
フォロワーさんたちよりネットニュースの方が読む側の年齢層が高く、紙の本にこだわる人たちも多い。だからネットニュースになってからは美影書店に多くの客が来るようになった。
「こんにちはー」
「あ、奥さんですね?」
「お、奥さんではないです! ……まだ」
日菜は顔を赤くして手を振った。否定ではあるが、拒否はしていないので安心だ。
「よっ、インタビュー行こうぜ」
「うん。じゃあ由香さんお店をお願いしますね」
「おけおけー」
大学3年生になり、就活等も忙しいらしいが二宮先輩は新人教育のためにバイトに協力してくれている。
一応部下になるんだけど、先輩呼びは抜けそうにない。
インタビューは従業員室で行われる。これでインタビューは8回目くらいだが、毎回もっといい部屋が欲しいなと思う。
「ではインタビューを始めます。お2人は異世界に行っていた……という設定で本屋さんを切り盛りしているんですよね?」
「あはは……まぁ実際に行っているんですけどね。信じるか信じないかは読者さん次第ということで」
ニュースのコメント欄を見ると信じる、信じないは半々くらいだ。
でも俺たちの異世界トークに夢をのせてくれる人もいるし、無下にはしたくない。
異世界での思い出はほとんどがろくでもないものだけど、絶対にひと言添える言葉がある。
「では、異世界に行って良かったことは何ですか?」
「そうですね……これは日菜と同じだと思います」
「うん。店長の拓人くんと同じです」
それは……
「「運命の人に、出会えたことです」」
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