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2-14 能あるイケメンは実力を程よく隠す

 チャリで繰り出し、公園入り口に辿り着く。

 ここは市内でも最大規模の敷地を持つ公園で、大会でも使われる陸上のトラック、更には屋内プール揃っている。足を運ぶのは去年の中体連の全校応援以来だけど、相変わらずのデカさだった。

 バスケットコートでは、既に何人かが集まって練習をしている。

 青地のコートには白いラインのコートは、アメリカンでストリートな雰囲気がプンプンしていて、

 リア充が入ると全てのステータスが倍加しそうなフィールドだった。


「一之瀬君」

 練習するバスケ勢を見ていたら白鳥秋良達、野球メンバーに声を掛けられた。


「ごめん。遅くなった」 

「一之瀬君も来てくれて良かった。持ってきた甲斐があったよ」

 白鳥は肩に掛けていたスポーツバッグを地面に置くと、中から赤いグローブを取り出す。


「もし、良かったらこのミット使ってよ。赤坂さんの投げる球、痛いでしょ?」

 手渡された後で良く見ると、それはキャッチャー用の分厚いミットだった。

 使い込まれて柔らかくなった感触からすると、白鳥が中学時代に使っていたものらしい。


「いいのか?」

「うん、大丈夫」

 白鳥は無邪気な表情で頷く。でも、こんな小柄で少年っぽい見た目でも、俺より遥かに野球歴の長いベテランキャッチャーなのだから侮れない。


「一杯あるから皆に貸すつもりで持ってきたんだ。学校のグローブは紐が切れてるのとか、固くなっちゃってるのも多いし」

 そう言いながら、集まっていた数人にグローブやら軟式ボールを配っていく。


「とりあえず、風晴君達もバスケが終わったら顔出してくれるって」

「そうか。それは良かった」 

 そんな事を白鳥とかわしていたら、丁度西崎がこちらに来るのが見えた。

 すぐに取り巻き女子と合流し、俺には見向きもしない。

 さっきのやり取りが完全に無かった事になっている。

 まあ、こっちとしてもさっきのアレは気まずいので、このまま関わらずに済むと助かるぜ。


「それにしても、上手いな。風晴のやつ」

 ふと、同じ野球に出場する男子、斎藤が口を開く。指さす先にはバスケットコートで練習する諌矢達の姿。


「くっそおお、止めらんねえ!」

 大柄の須山鉄明がブロックしようとするも、諌矢はそれをいとも簡単に交わしてゴールを決める。すると、コート脇で見ていた女子達から歓声が沸いた。


「まけたーっ!」

 須山が根を上げてコートに倒れる。サッカーしているから体力には自信がありそうなのに、手も足も出ない。


「風晴、お前強すぎだって!」

 もう一人の男子生徒もキレたような声で叫ぶ。その剣幕に思わず俺はびくっとさせてしまう。

 彼は確かバスケ部に所属する男子で須山や西崎とも仲が良い。しかし、見た目が明らかにヤンキー系で俺は少し苦手だったのだ。普段の発言も結構オラオラ系なので、今の大声は俺の防衛本能を呼び覚ますに十分な効果を発揮したようだ。


「俺、中学じゃバスケ部だったし。半年やらないくらいでも全然動けるんだよ」

 諌矢はバスケットボールを小脇に抱えながら、もう片腕でバスケ部員の肩に組み付く。


「うぜー」

 バスケ部員は冗談じみた口調で返しながらも諌矢と笑い合っている。なにこれ、リア充同士のコミュニケーションなの? ここからリアルバウト始まると思っちゃったじゃないか。


「つーかお前。何でバスケ部入んなかったんだよ」

「ほら、高校だったら彼女とかとイチャイチャしたり、イチャイチャしてる奴をイチャコラしたり、忙しいんだよ」

「テメエが言うと笑えねえ」

 諌矢はそんな事を言われても飄々とした顔。嫌味にならない爽やかさがある。


「じゃあ今度は俺と勝負しようぜ」

 拭いたタオルをひらりと投げ、バスケ部員は諌矢とワンオンワンの対戦を始める。

 流石は現役部員。すばらしいフットワークで翻弄するも、諌矢はそれに食らいついていく。


「さっきの話。風晴が言うと、嫌味にならないのがすげーよな」

 一緒にいた斎藤がそんな事を言いながら、二人のバスケ対決を見物していた。

 確かに、高身長で相手の喧嘩混じりの言葉にも爽やかに返す上手さ。

 こういうデキる男を女子がほっとく訳がない。


「あいつが焦るのもわからんでもないかな……」

「一之瀬君?」

 思わず呟くと、白鳥は不思議そうな顔をしていた。俺は何でもないと咄嗟に首を振る。

 バスケ経験者同士の漫画みたいなワンオンワンは暫く続き、結局諌矢のダンクシュートに終わった。




「ごめん、待たせて悪いな」

 それからしばらくして、練習を終えた諌矢達が俺達に合流する。


「つーか、諌矢。テニスの練習はしてるの?」

「へ?」

「バスケも野球もいいけどさ。テニスは大丈夫なのかよ? 西崎とペアだろ?」

 テニスダブルスは二人の息の合ったプレイが不可欠だ。練習をおろそかにはできない。


「大丈夫だって。西崎ってテニス部だったから。それに、俺もテニスなら多少出来るし」

 しかし、諌矢はどこ吹く風。けろっとした顔で俺の懸念を聞き流す。


「ちっ。リア充って何で皆テニスやるんだろうな。どうせ大学でもテニスサークル入るつもりなんだろ?」

「そう思うか?」

 否定も肯定もしない諌矢。爽やかな笑みを向けたまま、表情の奥の感情の片鱗すらも見せてくれない。

 本当にこいつはポーカーフェイスが上手い。嘘をついてもすぐ顔に出る俺とは大違いだ。


「まあ、何とかなるっしょ。夏生は自分の心配しとけって事だ」

 そう言うと、肩を叩いて先に言ってしまった。俺はそのまま取りつく島を失う。

 普通、告白されたら顔や態度に変化がありそうなものだけど、諌矢はいつもと全く変わらない。まるで、西崎が言っていた今朝のやり取りが無かったかのようだ。


「まさか、これって西崎の妄想じゃないよな?」

 あのギャルは派手な見た目に反して重くてめんどくさそうなタイプだし、有り得ると思う。

 俺はそんな事を考えながら、諌矢の後を追った。


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