第4話 再会①
本日も2話投稿します!
俺達3人を轢いた電車のライトと同じくらいの眩しい光が、俺の瞼の上に当たっている。
(そうか…ここが天国なんだな。死ぬとこんな感じなのか。紗雪、音羽の2人に会えるかな。)
俺はまっ先に2人のことが頭に浮かんだ。
早く2人に会いたい。
心配だ。
俺は目をゆっくりと開けた。
光が大量に差し込んでくる。
そこは雲の上だった。いや、正確には雲のような柔らかい白い物だ。実際の雲だと立てるはずがない。雲らしき物、ここからは雲と呼ぼう。その雲には一切の切れ目がない。雲の上には所々に見たことがある花々が咲いている。木などの植物もあり、桃色に染まって満開になった桜がある横に、紅色に染まった紅葉がある。桜の花びらを拾って形を見てみたが、この形はソメイヨシノだろう。本来、同じ時期に見頃を迎えるわけの無いこの2つが共演している。どうやら時間の流れはないようだ。それと同時に、もう現世ではない、天国に来てしまったのだと実感した
『まず、どの方向に行こうか…』
そうポツリと言うと、「ピコン!」と耳鳴りがしそうなほど高い音を鳴らしながら、頭の上に立体的な赤色の矢印が出てきた。
『うぉっ!?なんだこれ?』
俺は突然の出来事を理解出来ず、その場に立ち尽くしていた。すると、
『その矢印の示す方向に進んでください。』
と、頭の遥か上から、声が聞こえてきた。その声をどこかで聞いたことがある気がした。だが、ここはおそらく天国って所だ。知り合いがいるわけがない。俺は、声の主に語りかけてみることにした。答えてくれるかは分からないが、今はこの声だけが頼りだ。
『あなたは何者ですか!!』
『その答えは矢印の示す先にあります。あなたの妹達もそこにいますよ。』
『紗雪と音羽がいる!?本当ですよね?!』
俺はそう叫びながらも、『妹達に会える可能性があるなら』と、走り始めていた。空から聞こえる声の主は誰か分からない。だが、今は信じるしかない。俺はどうせもう死んでいる。これ以上失う物もない。妹達に会える可能性が少しでもあるなら行くしかない。
『元気が良いですね。では、ここで待っていますので。』
また頭上で何か言っているのが聞こえたが、必死で走る俺は言葉を完全に聞き取ることが出来なかった。頭の中は、愛する妹達のことだけだ。「早く紗雪と音羽に会いたい…!!」この思いがどんどん強くなっていく。
10分ほどたっただろうか。俺は建物の前に立っていた。その建物が立つ場所には日本庭が作られていて、風情を感じる。俺を案内していた矢印が消えたので、どうやらここに妹達がいるようだ。微かではあるが妹達の気配を中から感じる気がする。
「ガラガラガラー」
『お邪魔します。』
入ってすぐ、真っ直ぐ奥まで続く廊下が眼前に現れた。廊下の1番奥には襖が見える。
(きっとあそこに紗雪と音羽が!待っとけよ!)
俺は他人の家だという事さえ忘れ、廊下を猛ダッシュした。
そのせいで勢い余って襖に手をついてしまい、横に開かなければいけない襖を、正面から強く押してしまった。
「ガコン」と、襖の外れる音がした。
『あっ、やべっ、』
襖ごと俺は部屋に転がり込んだ。部屋の中に、目を通すと、俺が倒れているすぐ左側に、紗雪、音羽の順に、ちょこん、と可愛らしく座っていた。そして、目の前には、今日、駅まで送ってくれた、ガンダさんが座っていた。
『紗雪?!音羽?!2人共大丈夫か?』
紗雪と音羽は襖がいきなり倒れてきたことに驚いていたが、そこに俺がいることに気づき、一気に笑顔になった。
『お兄ちゃん!!』
『ゆづ兄!!』
2人は、一斉に俺に飛びついてきた。音羽が目を潤ませながら、笑顔で飛び込んでくるのは分かる。だが、紗雪まで飛び込んでくるとは思っていなかった。俺としてはとても嬉しいのだが…それに…紗雪が俺のことをゆづ兄?どうしてなんだ…あと……
『私のこと忘れてないですかね?』
ガンダさんが俺に向かって口を開いた。そうだ、そう言えば彼もいるのだった。妹達と再開出来たのが嬉しくて、彼の存在をすっかり忘れていた。ここはおそらく死者の世界である天国。なのに、なぜ彼はいるのだろうか?
『なぜガンダさんがここに?』
『それは、私が皆さんを天国に招待したからですよ。』
『どういうことですか…ね?』
展開が早すぎる。頭の処理が追いつかない。俺は自分の聞き間違えかと思いもう1度聞き返した。
『だから、私の言葉の通りです。優月妃さん、音羽さん、紗雪さん。皆さんを天国に招待、お連れしたのは私です。』
どうやら聞き間違いではなかったようだ。その言葉を聞くと、俺は妹達が怪我をしないように、ゆっくりと体を起こしながら、ガンダを睨んだ。
『つまり、お前が紗雪と音羽を殺したってことか?』
俺の殺気が部屋中に広がる。拳には自然と力がこもり、いつでもやつの間合いに入ることができる。
『まあ結果的にそうなりますね。実際、音羽さんを線路に落としたのも私ですし。』
俺は縮地を使い、一瞬でガンダが殺せる距離まで近づいた、はずだった…
だが、気付くとガンダは俺の後ろに座り込んでいた。
『最後まで話を聞いてくださいよ。怖いですよ。』
『お前!いつの間に俺の後ろに回った!これでも俺は様々な格闘技を極めているから、強いはずだ。なのに、お前はなぜ、俺に氣を感じさせることもなく、後ろに立っているんだ!
音羽を落とした?さらには紗雪と俺が飛び込むように仕向けたってことだな?お前が何者だろうが殺す。絶対に!』
『だからそれには理由があってですね、』
だが、その声が届くわけもなく…
『妹達に痛い目合わせて殺してる時点でお前を生かして帰させねぇよ。ここが天国で殺せないってなら、俺がお前を地獄に送ってやるよ。』
俺は、目にも止まらぬスピードで奴に攻撃をした。反撃はしてこない。全ての攻撃を避けている。本当にコイツは何者なんだ?
『その様子じゃ、当分話を落ち着いて、聞いてくれないですね。タクシーの時から思っていましたが、すごい妹ラブな方なんですね。申し訳ないですが優月妃さん、1回寝て、落ち着いて貰いますね。』
そうガンダは言い、手から小さな雷ようなものを俺に向かって放った。俺は避けることが出来ず、その攻撃を真正面から受けてしまい、眠りにつくのだった。
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