プロジェクトと心臓に悪い先輩
後半です。
タロウは荷物の方に向かうと、荷物の中身を整理し始めた。どうやらお菓子を抜いていくようだ。
「すみません、タロウさん。こんなことまで手伝っていただいて……今日非番だったんじゃないですか?」
「まったくだ。俺も暇じゃないんだ。たまの休みくらいゆっくりさせてくれ」
ごもっともです。
申し訳ないので、後輩達にも荷物の整理を任せつつ、私もタロウの近くで荷物の整理を始めた。
「いいんですか? せっかくの休みを無駄にしてしまうようなことに、巻き込んで」
「ああ、その辺は気にしないでくれ」
「気にしますよー。来る意味なんて別に無いじゃないですか」
「意味はあるぞ?」
「またまたー」
「君に会えることかな」
「……え?」
私が思わずタロウの方に振り向くと、タロウの顔が目の前にあった。後数センチといったところだろう。
ギョッとして思わず固まると、タロウはニッと意地悪な笑みを浮かべ顔を離した。
「なーんてな」
からかうように私に向けられた笑顔。耳だけが照れ隠しできて無いのか赤く染まっていた。
ーーなんて男だ。
私はふとあの屋上での出来事を思い出した。
あの時、告白されたと気付いた時には、タロウの顔は私から離れていた。
正直何が起こったのか混乱して記憶が吹っ飛んでいるが、目の前には意地悪な笑みを浮かべたタロウがいたことだけは覚えている。
「どう? 少しは意識してくれるようになった?」
そう私に伝えたタロウの耳は、赤くなっていた。
ーーあの時、初めて自分の「恋愛」というものに気づいたのだった。
あれからしばらく経つ。
あの時と同じような表情のタロウの顔が今目の前にある。
ーーしまった、今思い出すんじゃなかった。
少し優位ない笑みを浮かべてくるところに腹立たしさも感じるが、一方で恥ずかしさが勝ってしまう。思わず私は顔を背けてしまった。
「あれ」
残念そうなタロウの声が聞こえたが、無視してやる。
なんて、やりとりをしていたら、後ろの方から3人の声が聞こえてきた。
「先輩ー、ちゃんと仕事してくださいー」
「なんて見苦しい」
「ふおおお……素晴らしい」
どうやら後輩達に見られていたようだ。
「さっさと自分の仕事に戻りなさい!!」
恥ずかしい所を見せてしまい慌てて叱ると、後輩達は呆れたように持ち場に戻った。
ーー危なかった。
と、思ったがマナだけ戻らない。
「ふむふむ、良いですね! その角度がありましたか! いいぞもっとやれ」
などと妄言を繰り返し、何やら手帳にメモしている。とても顔がイキイキとしており、声にも張りがある。動きも俊敏だ。
いや、マナよ。キャラ変わり過ぎじゃないか。
心持ち創作意欲とか聞こえてくるけど、怖いから聞かないようにしよう。
おとなしいはずのマナも持ち場に戻らせて、再び荷物整理という名のお菓子の没収を開始した。
しばらく作業を続けると、荷物からお菓子がほとんど抜き取られて、やっと4人で運べる程度の適度な量になった。
後輩とタロウを含め私達は荷物を持って備品輸送課を訪れることに。
到着すると、沢山の妖精と職員が忙しなく行き来していた。前に来た時はイチロウがいたが、同じ空間に今は見知らぬ職員が代わりに仕事をしている。
現在、イチロウは異世界統制省の大臣をしているため、私には関わることの無い天上人となってしまった。
あの豪快な笑い声が聞こえないのは残念だが、それも平和な証拠であると考えると、なんだかこの景色も良いものだなと思える。
1人の職員に荷物を預け、私達は輸送課を後にした。
課に帰る最中、タロウがとても疲れたと言わんばかりため息をついた。
「俺は何をしに来たんだ……」
そりゃそうである。荷物を運ぶためだけに来てくれた上に、荷物の仕分けまでさせてしまったのだから。
「すみません、本当にありがとうございました。私がしっかりしないとですね」
私はすかさず謝った。すると、後輩達が後ろからヤジを飛ばしてくる。
「本当、先輩しっかりしてくださいよー」
「笑止」
「あ、あうう」
「あなたたちはお黙り!」
私が一蹴してまたも後輩を黙らせた。
もはやデジャヴである。
タロウは私と後輩の会話を呆れたように聞きつつも、少し微笑んでこう述べた。
「お前も大変だな。まぁ後輩がいるってことは自分の成長にも大きく繋がるだろうし、良い機会だと思うぞ」
タロウなりの激励だろうか。少し感動した。
「た、タロウさん……」
思わずウルウルとした目でタロウを見てしまう。
「よかったですね、成長できますよ!」
「聡い私から学んでいただきたい」
「学ぶ方なんですね」
感動する私とは裏腹に、またも発言で雰囲気をぶち壊していくスタイルの後輩達。
まずは、後輩達の私への態度を叩き直す必要があるなと強く思った。
以上、番外編でした。




