障害発生
急展開です。
◇
次の出社日、ミハエルから呼び出しがあった。どうやら前の案件のサブリナに関することらしい。
「一度片が付いたので、サブリナは保釈されることとなったんだ」
罪を認め、誠心誠意説明をしたことで元の世界に戻ることが許されたらしい。あとの罰則は元の世界での法律に任せるとのこと。
「そこで、エミリーちゃんにサブリナの護送をお願いしたいんだ」
「私がですか?」
「うん。今回の騒動を知る一人だし。何より僕は少し今日は立て込んでてね。少し寄る程度でいいんだ……任せられるかい?」
「分かりました」
あの案件は、私の管轄でもあるため気になっていた。快諾すると、私はサブリナを元の世界に送ることにした。
久々に会ったサブリナは大層しおらしくなっている。言葉にトゲが無くなり、声に張りもない。余程反省したのだな。私といる間も反省と謝罪しか話してこなかった。
サブリナを無事届け終えた私は、職場に戻るべく転移の魔法を使うことに。
ーー早速扉を召喚したところで、異変に気づいた。
見覚えのある黒い幕が現れたのだ。いや今回は黒い板と言ってもいいかもしれない。
どうやらまた閉じ込められたようだ。
普通に考えれば、ミハエルに言われた時点で警戒するべきだったのだ。
自分の迂闊さに嫌気がさしてしまう。
今回も前回のように私の不在に気づいて、リンデンやタロウ達が迎えに来てくれることを待つしかない。、ただ……リンデンにもタロウにも、私がこの世界に来ていることまでは伝えていないのが気がかりである。
唯一課長にはサブリナの護送について伝言で残してあるぐらいだ。ただ、現場で寝泊まりを普通にする我が部署なら平気で連日の不在はある。そのため、私が本格的に帰って来ないことに気づくのは相当後だろう。
腹を括り、野営セットを鞄から出して、しばらくはこの状況をしのぐことにした。いつか迎えが来ると信じて。
◇◇◇◇◇◇
この世界での基準で、三日が立ったころだろうか。
ーーさすがに遅い。
ここまで私が音信不通になると、普段ならリンデンが真っ先に気づき、駆け付けてきそうだ。しかし、なんの兆候も無い。
もしや、本当に私が帰れなくなっていることにまだ誰も気づかれていないのではないか、と思い始める。
でもさすがにリンデンに関しては、ここまで音信不通になることは滅多に無い。従って、リンデンが来ない今の状況は、なにか妨害が入っているのではないかという別の心配が出てきた。リンデンでも干渉できないなにかあるのかもしれない。
救出を待つのではなく、自分で帰る方法も模索する必要があると思い始める。
私はもう一度、扉を召喚してみた。しかし、一向に変化はない。以前同様に、黒い板が現れている。
さらに何回か叩くと、前回同様に黒い宝石が現れるだけであった。恐る恐る、宝石に触れてみると、宝石は取り出せるようになっているらしく、私の手の中に収まった。まぁ、宝石を取り出したからといって黒い板は消えなかったが。
取り出した宝石を握りながら、ふと私は異世界統制大臣のランドムの黒い瞳を思い出した。宝石があのランドムの瞳の色と瓜二つだからだ。
ーーもしや私はウルフ派に本格的に標的にされたのかも?
なんて底知れぬ不安が込み上がる。最悪の場合、世界の取り替えといわれるものがなされてしまったかもしれない。
考えたくもないが、あのウルフ派ならやりかねない。扉が完全に遮断され、世界が入れ替えられてしまったら、タロウやリンデンは太刀打ちが出来ない。そこを狙ってきたか?
考えれば考えるほど、ありえそうな仮説がどんどんと出てきた。そのたびに冷や汗が出てくる。
もし仮に今の仮説が本当だとすれば、今回は本格的に自分で対処する必要があるかもしれない。ここで悠長に待っていられない気がした。
可能な限り帰る方法を絞り出す必要がありそうだ。
最悪、もし帰還が無理であればここで暮らすことも視野に入れる必要があるだろう。……それは避けたいが。
私は一生懸命対応を考えた。しかし、経験も知識も無い私では発想に限界があるらしい。
野営セットを出し、箱に入っていたビスケットをむさぼりながら頭を抱える。
そういえば、こうしている間に、ポシェットの中に蓄えている食品が尽きてしまう恐れがある。食糧は死活問題だ。
だがしかし、次の瞬間ふと脳裏に疑問が。




