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私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~  作者: ビオラン
対物語令嬢 案件

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障害発生 異世界での孤立

 扉の召喚ができず帰れない。

 即ち、異世界統制省にある本物の扉と、魔法省にある接続用の扉の連携が正常に機能していないと推測される。


 試しに別の魔法省連携の召喚もしてみた。

「リンちゃーん」

 妖精リンデンを召喚しようとするが……応答はない。

 妖精の転移もできないということは……これは何らかの要因でこの世界と私の世界であるゼロバンとの接続が途絶えていると窺える。

 これは……異世界に孤立した?


 一気に血の気が引いたような気がした。


 --どうしよう!

 焦って黒い扉をどんどんと叩いてみるものの、壊れることも、扉が開かれることもない。しばらく叩いていると、黒い宝石のような柄が浮かび上がった。しかし、何か起こることもなく、浮かび上がっただけで行き来はできない。


 もしや、扉の接続に関して何か問題が発生しているのかもしれない。そうであれば、こちらから魔法省に干渉することが出来ないので、復旧を待つしか方法は無い。

 幸いにも、アリアはずっと丘で歌ってくれている。そのため、物語が急激に進展する気配は今のところ見受けられない。


 仕方なく野営セットを取り出し、その日は待機することにした。



 翌朝、私は再び扉を召喚した。……が、やはり変化はないようだった。

 これは本当に世界に取り残されたのかもしれないと思い始めた。変化の無い黒い扉を見ると、復旧の気配さえ感じない。


 ーーさすがに私も怖くなってきた。ずっとこの世界に取り残されるのではという思いが勝り、足に力が入らない。へたり込んでしまった。ピンチの時こそ平常心を忘れるなと言われていたが、そうも言ってられなさそうである。まだまだ私は未熟だ。


 ーーしかし、落胆した次の瞬間、空間に丸く虹色の穴が開いた。中からは聞き覚えのある声が。


「エミリー、無事か?!」

 その中から出てきたのは……タロウだ。


「タロウさん?!」

「良かった、もしやと思ったがやはり孤立していたか」

 焦りと安堵の混じったような複雑な表情をしたタロウの顔を見て、私は孤立を免れたことを知った。


「……救助しに来てくれたんですか?!」

「ああ」


 ーー救世主だろうか?もはや後光が見える。


 「今助けるから」という声と共にタロウの両腕がこちらに向けられる。片足を空間に残しつつ、手を伸ばしたタロウに腕をグイっと引っ張られ、私は穴の中に掘り投げられた。


 引っ張られた勢いで、でんぐり返しをするように穴に飛び込んでしまった私。穴の向こう側は床だったらしく思いっきり尻餅をついてしまった。助けてくれるのは良いが、もう少し丁寧に扱えないものか。後光が見えたのは取り消しだ。


「痛い!もう少し扱いを丁寧にですね……」


 お尻をさすりながらも立ち上がり目を開けると……なんとそこはステンドグラスに囲まれているような不思議な空間だった。

 空間全体は螺旋階段のようになっており、壁沿いに様々な形や大きさの虹色の膜が張られた板状の物が並んでいる。大きなステンドグラスに似ていると思ったのは、虹色の膜だったらしい。

 ーー息を吞む美しさとはこういうことだろう。


「……あの、タロウさんここは?」

「ここは、クロニゲートだ」

「え、ここが噂のクロニゲートなのですか?!」


 クロニゲートとは、異世界統制省、世界管理局、世界間移動部の扉管理課が異世界間を繋ぐ扉の管理をしている空間だ。いわば本物の扉が集められ管理されている空間である。

 全ての扉が保管されており、基本的に異世界間を移動するときは接続の扉で間接的に使用するため、この空間には関係者意外立ち入りが出来ないことになっている。部外者の私は許可なくこの空間に入れない。


 なのにこの空間にいるということは……


 「……もしかして、私、本物の扉から直接この世界に帰ってきたのでしょうか?!」

「そうだ、こうせざるを得ない状況だったんだ」


 タロウの話曰く世界間接続に使用する扉の一部でトラブルが発生したらしい。


 タロウが元の世界に戻ってしばらくした後、異世界統制省の世界間移動部で障害が発生したとの連絡が入った。

 扉接続課の担当が接続に失敗したらしい。規模は小さいが一部の世界との接続が途切れたとのこと。


 最初は気にも留めてなかったのだが、接続が途絶えた世界番号の一覧を見て、タロウは焦ったらしい。なんと、一覧には世界番号960があったのだ。それは先ほどまで自分がいた世界。そして同時に私がまだ残る世界だったのだ。

 それは即ち私が、孤立して帰還困難に陥っているとのことを示す。


 一大事だと思ったタロウは、上司に相談し自分の課の職権をほぼ乱用する形で、異世界の扉の本体を保存する空間「クロニゲート」に入った。そして、魔法省設置の接続の扉を使うことなく、本物の扉を使って直接救出に来たという話だ。


 この空間に来ている時点で、私は本物の扉を使ったことが証明される。


 ここがクロニゲートなのか。改めて周囲を見渡してみた。どのフロアなのかは分からないが下にも上にも壁沿いに虹色の扉が並び、果てが見えない。その為、本当に虹色のステンドグラスの空間にいるような錯覚を感じる。全ての扉が存在する空間は圧感だだと評されるが、噂の通り美しい。


 タロウと初めて会ったときにした、扉を管理している空間についての会話を思い出した。私はどうやら意図せぬ形で、憧れの空間に来てしまったらしい。


 少し感動していると、呆れたようにため息をついたタロウ。

「お前、自分がさっきまで危機に陥ってたのに余裕だな」


 見惚れていて、自分の状況をすっかり忘れているのに気づき、慌てて仕事モードに切り替える。

「いえ、そんなことはありません! 助けてくださってありがとうございました!」

 危機一髪だったのは確かだ。思いっきり頭を下げた。


 そして私は無事課長の下へ送り届けられた。課長は扉の障害が発生したのを把握していて、心配していたらしい。タロウが救出に向かったと聞き、私の帰還を待っていてくれたそうだ。


 課長は私の顔を見るなり「よかった」と言い、息を吐いた。無表情だけどどこか力が抜けた様子だった。

 課長に元気な姿を見せると、タロウも安心したらしい。何も言わずに立ち去ろうとしていたので、タロウのマントを掴んで慌てて引き留めた。


 ぎょっとしているタロウ。そう言えばまだ正式には御礼を伝えてなかったのを思い出した。私は恩人に礼を言わないほど恩知らずでもない。誠心誠意深々と頭を下げた。


「タロウさん、この度は私の担当のサポートに加え、異世界での孤立に対する救出、ありがとうございます。とても心細かったので助かりました」


 すると、こちらが畏ったのとは反対に、タロウからは目線を逸らしつつ頭を掻きながらの適当な返事が。


「自分の管轄内での協力だ。大したことはしていない」


 ーー嘘つきだ、絶対無茶したんだと思う。でも正直に言いそうに無い。


 私が口を開こうとしたら、制止するかのように私の顔の前にタロウの手がズイッと近づいた。顔が掴まれるかと思ってビックリしていたら、手は顔の前ギリギリで止まる。


「貸し2つね」


 そう言うとタロウは顔の前の手をピースに、いや指を二本立てる。そして満足げに笑うと、そのままくるりと踵を返して異世界統制省に風のように帰って行った。


 ーーさらっと去って行ったタロウ。

 しかしその姿を見送りつつ私は気が気じゃなかった。だって、貸し2回分も何を要求されるのか恐怖でしかない……

 バンジージャンプとか絶叫系アトラクションに乗せられるとかそういったことではありませんように……とただ祈った。

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