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私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~  作者: ビオラン
対物語令嬢 案件

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令嬢第六事例 報告5

 目の前に跪きだしたタロウ。

 私が戸惑っていると、キラキラ笑顔を作ってみせ、こう言ってきた。


「お嬢様、私とお相手願えますか?」


 そう言うと、そっと手を差し出してきた。


 これは……踊りのお誘いだ。

 アレグロの貴族マナー講座にあった踊りの挨拶を思い出した。この服装で踊りを披露する作戦を思いついたらしい。


 確かに、今の目立つ赤い服で踊れば周囲の目線も独占間違いなしだ。良い手かもしれない。それに、踊る練習もしたし、私の腕の見せ所でもある。


ーー名案だ。


 でも、なんか王子じゃないのに無駄にキラキラオーラを放つタロウのせいで、王子様に誘われた感覚に陥りそうである。私は演技力の塊であるタロウを知る身なので、そうやって状況に合わせた対応を素直に器用だと感心した。


 折角の優雅な誘いなので、私は「喜んで」とタロウに負けないくらい優雅に貴族らしく手を置き、ダンス会場に歩き出した。


 ーー早速踊り出す私達。練習の通り上手く踊れている。


 案の定、皆は派手な私達に目線が釘付けのようだ。一部は軽蔑したような表情をしているが、目立つ為なら少し歌舞伎者になるくらいで丁度いい。


 踊りながら周囲の様子を気にしつつ……チラッと王子のいるであろう方向を見ると、王子に駆け寄るアリアの姿が見えた。王子との接触は避けられなかったらしい。


 そして、踊りながら観察していると……心配している通りアリアが仮面を外す姿が。


 ーーたちまち美しいドレスは消える。


 元の姿に戻り、明らかに戸惑うアリア。アレグロが慌てたように飛んで行った。


 今後の展開は、周囲にいる貴族に気付かれ、騒がれて連行される流れだ。その為、貴族達に騒がないよう会場の気を晒させる必要がある。

 恐れていた事態となってしまった。


 ーー貴族たちの目線をさらに独占しなくては。


 私は貴族達の視線を独占しようと思い、咄嗟にやや強引に動きの多いダンスを披露した。

 タロウは少し驚いたがアレグロ達の様子に気付いていて同じ様に焦りを感じたらしい。私に食らいつくように必死に合わし始めた。


 場の空気をぶち壊すようなダンスなので、多少情熱的になるが仕方ないだろう。


 すると貴族たちは珍しい私達のダンスを見て、盛り上がり出した。私が独特の動きをする度に、歓声が上がる。

 なんだか外野がノリノリになってきた。


 さらに、気を利かせた演奏家達により、BGMもリズム感のあるものに変わる。手拍子も合わさり、会場が一つになるのが分かった。


 タロウも必死ではあるが、すごく楽しそうな顔をしている。ダンス中にたびたび目が合うが、ニコッと笑ってくれた。


ーーそして気になるアレグロ達だが……


 盛り上がる会場の端では、嫌がるアリアを半強制的にアレグロが引きずり出している様子がチラッと見えた。が、がんばれ……


 しばらくして会場からアリアとアレグロの姿が消えた。無事追い出したのだろう。


「タロウさん、そろそろ終わって良さそうですよ」

 私が耳打ちすると、踊りに集中していたらしい。タロウは少しビクッとした。

「お、そ……そうか」


 アリアが無事会場を出たならもう私達の出番は無い。キリの良いところでダンスを切り上げた。


 私達は優雅に礼をすると、タロウのエスコートで会場を後にする。会場からは盛大な拍手が送られたのだった。


◇◇◇◇◇◇


 私とタロウはそそくさと一目につかない所まで避難し、植込みの陰に二人とも腰を下ろした。


「ここまで来れば安全でしょう。アレグロ様は成功したのでしょうか」

「あの様子なら大丈夫だろう」


 2人でふーっとため息をついた。

 激しいダンスをしたので少し休憩だ。


 ふと、舞踏会の方を見ると、中で華やかに着飾った人々が踊り、綺麗な音楽が流れている。舞踏会のキラキラした光がこの距離でも分かった。疲れもあったのか、思わずボーっと眺めてしまう。


 ーーすると、横から視線を感じた。横に座っていたタロウが私の顔を見ていたらしい。

「ん? 私の顔に何かついてますか?」

「い、いや……」


 タロウはよく目を逸らすのだが、珍しく黙って私に目を合わせている。

 そして、何故か私の髪の毛にそっと触れると……ボソッとこう言った。



「ドレス似合うな」



 突然の言葉にキョトンとしてしまう。


 ーーん?褒めてくれた?


 ドレス姿を晒してしまったが、タロウのことなので私に対する日頃の扱いからは、褒めるなんてことはしないと思っていた。


「……褒めてくれるのですか?」


「……あっ! これはそのっ」

 何故か急にタロウは慌て出した。


 タロウの挙動不審さが多少気になるが、なんだか素直に嬉しい。私も褒め返そうと思い全力で褒めてみた。


「タロウさんも、さすがの判断でした! あの状況で目立つ服装でダンスをすれば、一発で会場の視線を独占できますもんね!」


 すると、ぎこちなくタロウが聞く。

「……俺とのダンス、嫌じゃなかったのか?」


 何を言っているのだろうか? 嫌以前に、案件の対応策としてとても良い判断だと思える。


「何を言うのですか、ファインプレーだったと思いますよ!」

 全力で肯定をしておいた。


 しかし、タロウは喜ぶかと思いきや何故か複雑そうな顔をしてきたのだった。



◇◇◇◇◇◇


 アレグロと合流した私達。

「ありがとうございます、おかげでアリアが連行されることなく無事追い出すことができました!」

「本当に良かったです!」

 作戦は成功したらしい。あとは今後の物語の運命を探るだけだ。


 そして、無事役目を果たしたタロウは戻ることになった。今回以降出番はないはずなので、自分の仕事に戻ってもらう。


「すみません、別の仕事もあって大変だと思うのに……わざわざ手伝っていただきまして。ありがとうございました」

「本当だ。俺も暇じゃないんだ。今度お礼を楽しみにしている」


 さらっと対価を要求された。何を要求されるのか非常に怖いが、その顔は機嫌が悪いように見えて実は少しほほ笑んでいる。多分大丈夫だろう。


「まあ俺も良い経験が出来た。続き、がんばって」

 そう言うと、タロウは元の世界に帰って行った。


「優しい方でしたね」

 アレグロがそう言った。

「本当に、とても優秀な方です。少し素直じゃない感じではありますが」

 


 さて、これからはアリアの動向を探るのが中心だ。物語の運命がガラッと変化したため、アレグロの運命、そして連行されなかったアリアの今後の行動を監視する必要がある。


 翌朝、私達が城の見える丘に行くと、アリアがいつものように歌っている姿が見えた。


「もしかして、牢屋から丘に歌う場所が変わっただけであまりストーリーは変化してないのでは?」

「それは困ります! それならばまた王子がアリアと接触するので私は怪物になってしまいます!」


 ーーこれは一大事だ。


 なんとかせねばと思い考えを巡らせていると、ふと気が付いた。

 異世界で本として既に発行されているのであれば、別世界の本の中ではイイ感じにストーリーができているのではないかと。


「アレグロ様、私一度元の世界に戻って本の変更の様子とストーリーを確認してきます」

 アレグロもこれには賛成らしい。


 私は早速元の世界に戻るため、扉を召喚した。

 しかし、いつもなら虹色の幕が現れるはずなのに、真っ黒の壁が現れた。向こうに行こうとしても、ゴンゴンと叩くと固い音がするだけで向こうに行けない。


ーーこれは、帰れなくなった?!



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