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私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~  作者: ビオラン
対物語令嬢 案件

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童話の世界

新章が始まります。

 無事アニーサ関連の合同調査チームは解散。

 タロウとローリンが去ると一気に部屋は静かになった。紆余曲折あったが、無事案件は成功したのだから、結果オーライと思うべきだろう。私は内側にぐるぐるしたものを抱えつつも、気持ちを切り替えるべくその日は帰路に就いた。


◇◇◇◇◇


 次の勤務日、私はまだ気持ちを切り替えることが出来ず、憂鬱な気分で出勤した。あんな話を聞いたからだと思われる。どこかわだかまりを残していた。


 そんな深刻そうな顔をしている私を見かねた課長は、空気を換えようとしたのだろう。一冊の本を私に手渡してこう述べた。


「さて、派閥の話はもう忘れよう。普通に勤務していれば問題ないだろうからな。ここからは君の新しい案件について話す。気持ちを切り替えるんだ」


 気乗りしないが、差し出された本を受け取った。可愛らしい表紙の絵本のようだ。


「……この本は?」

「次の案件の重要な参考となる。この物語を知っているか?」


 手渡された本には『アリアのおうた』というタイトルが書かれていた。


「特に存じ上げません。」

「そうか、一部では有名な童話で、ミュージカルアニメとして映像化もされているような作品だ。ひとまず読んでみろ」

 

 私は絵本なんか読んでいる気分じゃないのになと思いながらも、課長に言われて渋々本を開いた。

 可愛い女の子と、王子様らしき2人の姿が挿絵で描かれていた。



『アリアのおうた』

 むかしむかし、とある国にそれはそれは美しく歌が上手な少女がおりました。少女の名前はアリア。 

 このアリアという少女には不思議な日課がありました。それは、毎朝お城の見える丘で歌を歌うことです。


 アリアはお姫様になり、城に住んで素敵な王子様と出会うことを夢見ていました。でも、貧しい暮らしをしているアリアはお城に近寄ることができません。だから、せめてお城の見える場所で毎日歌っているのです。

 立派なお城にむけて歌を歌う時間だけはまるでお姫様になったような気分になれます。お城や王子への思いを歌に込め、いつしか自分も報われることを信じ歌を歌い続けました。


 一方、王城では毎日のように歌が聞こえてくるようになりました。

 王子様はその美しい歌声に次第に興味を持ち始めます。ついに歌声の主が気になった王子様は、こっそりと城を抜け出し、声の聞こえる丘までやって来てしまいました。


 そこで王子様はアリアと出会います。王子様は歌声の主であるアリアを一目見て気に入りました。それからというもの、二人は惹かれ合い、毎日会うようになります。


 でも、このことはすぐ国の次期王妃である令嬢アレグロに知られてしまいました。もちろん、アレグロは婚約者である自分がいるにも関わらず、王子様が平民の娘に会いに行くことを大層嫌がりました。

 しかし、王子様はアリアと会うのを止めません。


 ついに怒ったアレグロ。アリアを王子様から引き剥がすことにしたのです。


 ある日、城では仮面舞踏会が行われました。アレグロは魔法を使って別人に化けると、わざとこの舞踏会にアリアを導き入れます。


「美しい歌声のお嬢さん、貴女の歌声に感動しました。私が貴方を舞踏会に招待しましょう」

 そう言うと、アレグロは歌を歌いながら魔法でアリアにドレスと顔の隠れる仮面を用意しました。舞踏会に参加できるとあって喜ぶアリア。


「この仮面を外さないようにね」

 そう告げると、アレグロは風のように去って行きました。


 アリアは城の中に入っていきました。豪華な室内、そして踊る人々に感動するアリアでしたが、立派な椅子に座っている人物にすぐ目を奪われました。なんと、丘で会っていた王子様です。仮面をつけていても、一際目立っていてアリアにはすぐ分かってしまいました。


 思わず、自分が来たことを知らせるために、アリアは王子様の下へ駆け寄りました。

「王子様、私です。アリアです」

 しかし仮面をつけ、ドレスを着ているため、王子様はアリアだと気付きません。


 ついにじれったくなったアリアは、アレグロの忠告を忘れ、素顔を見せるために仮面を外してしまいました。

 するとどうでしょう。たちまち豪華な衣装は無くなり、元の姿へと戻ってしまいました。

 周りの貴族たちは、みすぼらしい姿のアリアが舞踏会にいることに騒ぎ始めます。衛兵がアリアを連れ出しました。王子様は、平民の娘と仲の良いことが知られてはいけないため、連れ出されるアリアを止めることはできませんでした。


 捕まって閉じ込められてしまったアリア。牢屋は怖いけれど希望を捨てることはしません。アリアは牢屋から毎日のように王子様への思いを乗せた歌を歌い続けることにしました。きっと王子が助けてくれると信じて。


 しばらくが経ち、王子様の耳にふとアリアの歌が聞こえます。アリアが囚われていることを知った王子様は、再び牢屋にこっそりと忍び込み、アリアと会うようになりました。


 それには再びアレグロが怒り出します。

 ついに怒りの力を制御できなくなりアレグロ。怒りと魔力で醜い怪物へと姿を変えてしまいました。自我を失い、街を襲い始めます。暴れたアレグロはもう誰にも止めることはできません。

 ついに王子様はアレグロを退治することを決意しました。しかし、戦いを挑んだものの、アレグロの力は強く、歯が立ちません。


 皆が諦めかけたその時、牢屋からアリアの歌声が聞こえてきました。するとどうでしょう、アレグロの力が弱まり始めます。なんと、アリアの歌には癒しの効果があったのです。

 弱ったアレグロは国を脅かした物として捉えられ、王子様とアリアの前に姿を現すことは2度とありませんでした。


 そしてアリアは国を救った者として認められ、貴族の称号をもらいます。

 ついにアリアと王子様は結婚。2人は末永く幸せに暮らしましたとさ。



ーーちゃんちゃん。


 読んだ。平民の女の子がお姫様になるタイプの話だった。

 率直な意見を言うと……アレグロという令嬢はかわいそうである。自分の立場をとられた上に、暴走して怪物になるなんて。


「課長、読みましたけど、なんかこの悪役って散々ですよね。もはや同情しますよ」

「そうだろう?」


 課長はニヤリと笑って見せた。いや、無表情なのだがニヤリと笑ったように感じた。そして、私の前にわざとらしく資料をちらつかせる。


ーー嫌な予感がする。


「課長、もしかして、次の案件……まさかとは思いますけどこの悪役令嬢であるアレグロが相手じゃないですよね……」


「おっ、察しがいいじゃないか。その通りだ」


 なんと、波乱万丈の予感。


「令嬢アレグロに転生した者からの救済依頼だ。乙女ゲームの時にも経験したかと思うが、自分の結末を知っているが故の救済依頼だ」


「え、でも本になっているのだったら、物語の結末を変えてしまっても大丈夫なのでしょうか?あまり干渉しない方がいいんですよね?」


「ああそうだな。本来は童話の内容が変わってしまうので干渉すべきでないが……内容変更はこのゼロバンの関係者しか把握しないので影響は少ない。変更後のストーリーが元々の正式な話として広まるだけだ」

「ストーリーの変更……」

「そこでだ、違う全く別のストーリーでハッピーエンドにもってこれないかと思っている。君の斬新な発想が活かされる機会だと思って君に頼んだ訳だが」

「そんな簡単に……」


 そんな簡単に頼まれても困ると思ったが、仕事だから仕方ない。

 やや渋々とだが、受けることにした。


「悪役令嬢おたすけ課、魔法少女エミリー、只今から捜査開始致します」

 そう言うと、私は転移の扉の前に進んだ。

今回は童話の紹介でした。

いざ、新規案件へ!

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