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私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~  作者: ビオラン
対乙女ゲーム令嬢 案件

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令嬢第四事例 報告4

ここのダリアとエミリーの温度差が好きです。

「お嬢さん、どうしたのですか?」


 エドウィンは木漏れ日のキラキラと輝く下で、困っていそうなリゼットに和かに笑いかける。乙女ゲーム補正でイケメンになっているようだ。


 ダリアが横で「グハッ」と言っているが聞こえなかったことにしよう。


「実は、迷子になってしまって……」


 リゼットが困り果てた顔でエドウィンを見上げると、エドウィンは微笑みながら腰を低くし、リゼットに目線を合わせてこう続けた。


「そうなのか……いや失敬。背後の花の魅力も相まって、君が麗しい花の精のように見えてしまいました」


 うーーーわ。

 身震いするくらい甘い。コーヒーをシロップに変えることが出来るくらい甘いのではないだろうか。いや言い過ぎか。


 横でダリアは目を輝かせてこの様子を見ていた。


「先程挨拶したリゼット嬢ですよね?よろしければ、私が案内しますよ?」

「え、でも王族の方にそんな……」

「大丈夫です、入り口で私は別れますから」


 そう言うとエスコートするように、道を案内し始めた。途中、庭園の花を一緒に見て回る様子も見られた。そして場面ごとに甘い会話がなされる。「君の笑顔は花のよう」だの「花も君の前では色褪せる」だの。なんだこれ。


 度重なる甘言に私は脳内で何回コーヒーをシロップにしただろうか。エドウィンはシロップマシーンなのかな?


 ダリアは阻止する様子も無く、必死に鼻をハンカチで押さえながら監視している。横で実況をしてくれるが、実況アナウンサー顔負けの説明力と熱さだった。


「エドウィン様ってぱっと見は俺様系なのかと思いきや、甘いタイプの方なのですね」

「そうよ、優しくて麗しい正真正銘の王子様って感じのキャラクターなの。惚れないわけがないわ」


 物語に出てくるような麗しの王子様か……これは主人公に気に入られ、攻略されるのも時間の問題かもしれない。


 そしてイベントは終了に向かう。やっと会場の入り口に着いたようだ。

 「リゼット嬢、君とはまだ話がしたいが、どうやらここまでのようだ。また私と仲良くしてくれるかい?」

 そう言うとエドウィンはリゼットを覗き込むように目線を合わせ、ほほ笑んだ。

「はい、喜んで」

 多少社交辞令が入るものの、まんざらでもなさそうにリゼットはにこやかに同意した。


 ーーこうして出会いイベントは終了した。

 なんだかんだ私達は初イベントを一通り見てしまったらしい。


 唐突に、どこからともなく音が聞こえてくる。


「「パララ、ララリラーン!」」


 とても軽快な音色。某ゲームなどで聞こえそうな機械的な音だった。


「……なにこの音」

 私は辺りを見回すが、何も音のでるようなものはない。

「ん? 何か聞こえました?」

 ダリアには聞こえていないようだ。結構な大音量だったのだが……


「いま、パララ、ララリラーン! って聞こえたんですけど」

「あぁ、ゲームのクリア音ね、懐かしい!」


 確かにゲームをクリアした際に流れる感じのメロディだ。登場人物であるダリアには聞こえず、部外者である私にだけ聞こえたらしい。


 このメロディ……今の私の立場的にはちょっと腹立つ感じに聞こえそうだ。失敗したときに聞こえたらイラッときそう。


 だが、このよく分からない音が流れることで、無事エドウィンルートが解放されたのは確認できた。


ーーいや、ついにエドウィンルートが解放されてしまった現実が突き付けられた。



◇◇◇◇◇◇



 私たちは、エドウィンとリゼットが出会ってしまったのを確認したので、更なるイベントの回避をするべく、対策を考えることにした。


「ちなみに、ゲームではダリア様はどのように登場するのですか?」

「エドウィンに近づくリゼットに対して、嫌がらせをする描写がよく出てくるわ。断罪の理由も嫌がらせ行為のせいだもの」

「……でしたら、嫌がらせをしなければ断罪されることはないのではないでしょうか?」


「確かにそうね! いじめなければ断罪される要因が無いんだもの」


 納得したようにダリアは頷いた。今まで気づかなかったんかい。


 私の助言を受けて、試しにダリアはゲーム内で想定される初期の嫌がらせを、行わないように意図的に避けることにした。

 

 ーーこの作戦は正解だったらしい。

 ストーリーの進展がいくつか確認されたが、エドウィンにもリゼットにも、ダリアの悪い印象が生まれず進んでいる。



 しかし……順調に嫌がらせをせずに済んでいると安心した矢先に事件は起こった。


 学園での実技授業の時間のことであった。

 この世界では魔法が使えるので、実技授業があるそうだ。

 ダリアによると、ゲームではこの魔法実技の時間で大きめのいじめイベントが行われるらしい。


 私は、一応警戒してこの世界で一般的である小さな妖精の姿に変身し、ダリアの様子を窺うことにした。


「では次、エドウィン様」

 水を的に当てる練習なのだろう。名を呼ばれたエドウィンが手を的に向けると、水が指先から発射される。そして的確に的を狙い打った。

 見事な魔法捌きに周りから黄色い悲鳴が聞こえてくる。さすが王子様、どうやら学園でも人気者なのなのだろう。「狩りは得意だからな。射的も上手いぞ」と胸を張っている。


「では、次、ダリア様」

 ダリアの番になる。ダリアも的を狙って水の魔法を解き放った。エドウィン同様水は真っ直ぐに進み的に当たる。……と思いきや


 ーー水はカーブを描き、リゼットに向かっていったのだ。


 ダリアの放った水によりびしょ濡れになるリゼット。

「きゃあ」

「大丈夫か! リゼット嬢!」

 エドウィンが咄嗟に駆け出した。


 実は、今回のいじめイベントはダリアが意図的にリゼットに水を当てる嫌がらせをするといったシナリオだったのだ。

 それを予め知っていたダリアは、リゼットに当たらないように的を狙ったつもりだったのだが、ゲームの強制力が働いたのだろうか。リゼットを狙っていなくても、リゼットに水が向かうように修正されたらしい。


 なんと身に覚えもないのに、エドウィンの前でリゼットをいじめたことになってしまったのだ。


 エドウィンはダリアを睨む。

「まさか、狙ったわけではなかろうな?」

「滅相もございません!」


 慌てて訂正をするダリアだったが、エドウィンは聞く耳を持たない。リゼットを抱え上げると医務室に連れて行ったのだった。



 放課後、急いで振り返り会を行った。

「私、狙っていなかったのよ? ゲームではがっつり攻撃していたけど、今回はあえて外していたのに……」

「わざとではないのは承知してます。あの曲がり方、違和感しかありません」


「やはりゲームの強制力かしら。恐ろしいわ……」

「ゲームの強制力がこんなにも強いとは……今後もダリア様の意図しない語りで反映される可能性がありますね。」


「イベントが進むのを阻止しながら、自分の身を守ることも考えなければならないわね」

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