令嬢第一事例 報告1
本編開始です〜
ここはとある世界の貴族の建物が集まる一角。依頼によると、この世界のオリヴィアという令嬢が悪役に仕立て上げられそうになっているらしい。
私は草むらに隠れながら渡された資料をめくり、内容の確認をした。
ノン悪事案 No.1
場所:世界番号084
救済対象:悪役化可能性令嬢
真悪役疑惑:不明
依頼主:ノン悪疑惑である令嬢本人(接触可否:可)
魔法の存在:有(認知度:中程度)
備考:転入した平民の女生徒が王子にアプローチ。令嬢が前述の生徒にいじめをしたことを理由に結婚破棄となる可能性あり。
物語によくありそうな話だな……と思いながら私は資料を閉じた。今回、この事案が初の悪役令嬢おたすけ課職員および魔法少女としてのデビューとなる。
幸い、令嬢本人との接触は可能である上に、魔法が認知されているため、初戦としてはやりやすい。令嬢本人から事情聴取もでき、魔法が使えるので色々怪しまれにくい。とても好都合である。気合を入れて臨もうと決心した。
まず、私は草むらにて怪しまれないよう、見た目を変えることにした。今はいかにも魔法少女であると分かる服装をしている。魔法省では胸のリボンでチームの判断をしており、私は悪役局所属の紫ベースとした大きなリボンの上に悪役救済部の愛を表すピンクのダブルリボンがついている。さらにリボンの中心には悪役令嬢おたすけ課を示すドレスの装飾の入った金のバッジがついている。あとはラベンダーカラーのワンピースにとんがり帽子、魔法少女らしいフリフリとした服装でひと通りの制服となる。
「マジカル チェンジ!」
呪文を唱えると私は小さな妖精の格好に変身した。大きな屋敷などを訪れる時、この方が何かと便利だと思ったからだ。ラベンダーカラーワンピースにピンクのリボン、大きな羽のついた、どこからどう見ても可愛い妖精だ。
準備はOK!まずは、依頼主の令嬢の下に向かうことにした。資料の通りに場所に向かうと、令嬢の屋敷を早速発見。お妃様になるかもしれない令嬢とあって、非常に立派な屋敷に住んでいる。
空からゆっくりと敷地内を見渡した。すると、依頼主であろう令嬢が庭で花を見ているのが見えた。
令嬢の姿を見た瞬間、私は吹き出しそうになった。
だって、あまりにも悪役令嬢らしく見えたからだ。
流石悪役令嬢候補。確かに物語に出てくるような縦巻きロールの髪に釣り上がった少し怖そうな目をしており、これでは何をしてなくても見た目だけで悪役令嬢に仕立て上げられそうだ。
私は笑いそうな気持ちを切り替えると、早速令嬢にアプローチすることにした。
しかし、令嬢に近寄ると、すこし違和感を感じることに。何故なら、花を見る姿はトゲがなく見た目の怖さに反してとても優しそうな印象を受けたからだ。そんな不思議な感覚を覚えつつ、勇気を振り絞って声をかけてみる。
これが最初の一歩、第一印象が大事!と言い聞かせ前へ出た。
「こんにちは、オリヴィアさん。」
令嬢は不意に振り向いた。
「きゃぁ!」
私が急に声をかけたせいか、振り向くやいなや驚かれてしまった。怪しまれないよう、慌てて自己紹介をすることに。
「こんにちは、オリヴィアさん。私は魔法省の悪役令嬢おたすけ課から参りました、魔法少女のエミリーです」
「あ、あぁ。おたすけ課の方ね。驚いたわ、本当に存在していただなんて……」
魔法省の存在、ましてや悪役令嬢おたすけ課は存在を一般的には隠している。知る人ぞ知る機関なのだ。
その為、秘密の方法により救済の依頼を出すことになる。ほぼ半信半疑の状態で依頼を出す人が多く、実在していることに驚かれることがほとんどだ。
たまにパニックで大騒ぎになることもあるらしい。今回は比較的静かに驚いてもらえ、騒ぎにならずに済んだようだ。着任一日目にして大騒ぎから対応することがなくて良かったと心底安心した。
「ときにオリヴィアさん、今回ご依頼いただいた件についてですが、詳しく説明してもらえますか?」
オリヴィアは周囲の様子を確認すると自室に案内してきた。どうやら人に聞かれたくない込み合った話は場所を変えて話したいらしい。そこは素直に従っておこう。
部屋はとても広く、豪華な装飾が施されている。こんな部屋に一度は住んでみたいななんて思った。
「実は、私には昔から政略結婚のため婚約者がいるのですが、婚約者様には最近懇意にしている平民の女生徒がいるようなのです。婚約者様曰く、嫉妬した私がその女生徒に対し酷い仕打ちをしていると耳に挟んだようでして、そのような者とは婚約できぬということで近々婚約解消を考えているとの情報を得ました。
そのため、濡れ衣を着せられそうになる前にこのように一か八か連絡を差し上げた次第ですわ」
話す令嬢の姿は、強気な見た目に反してみるみる哀愁がただよいはじめた。
「で、実際のところどうなのでしょうか?」
令嬢は悲しそうに首を横に振った。
「私は一切その女生徒に対して酷い仕打ちなどしておりません」
その発言で確定だ。私はノン悪案件であると認識した。
「分かりました、オリヴィアさん。それではお相手の方にオリヴィアさんの無実を証明すれば良いのですね」
「はい、そうしていただきたいです」
「分かりました、では少しご協力をお願いするかとは思いますが、解決していきましょう」
「は、はい……」
自分が助かるかもしれないというのに、オリヴィアの返事は元気がない。
すんなりと話を進めた私に、オリヴィアは少し戸惑っているようにも見えた。無理もない、話がトントン拍子に進んでいくのだから。
「あの……本当にわたくし救われるのでしょうか?」
やはりまだ半信半疑のようだ。
解決するか否かは、協力する令嬢と私の腕にかかってくる。ここで相手を心配させてはいけないため、精一杯の自信のある顔をして見せた。
「大丈夫です。だって私は悪役令嬢おたすけ課の魔法少女ですから!」




