試験結果
本部に戻ると、課長が私の机の前で待機していた。
無表情すぎて、何を考えているのか全然わからないが、腕を組み、時計をチラチラと忙しなく見ている。ソワソワとしているのは何となく分かった。
私が帰るのを確認するや否や、すぐに駆け寄ってくる。どうやら案件が無事解決したかどうか、心配して、私の帰りを待ってくれていたようだ。
結果が気になるらしく、報告を急かし始める。
「おお、帰ったか。……報告は?」
「只今帰還しました! 無事ノン悪にだった令嬢を救出することが出来ました」
渾身のドヤ顔を決めて言ってやった。
「ほう、解決したのか」
安堵したのか、大きなため息をつく課長。
「では胸のバッジを……」
すかさず報告の準備に入った。よほど内容が気になるらしい。私が苦戦していたのを知っているので、仕方ない気もするが。
ーーついに、私の試験結果が分かる。
課長は報告を受け取るため、前回同様に胸のバッジにカードをかざした。バッジとカードは共鳴し、ピンクの光が放たれる。
今回は正規メンバーへの登用試験だった。案件は無事解決したが、結構無茶をしたと自分でも思っている。
試験の結果はカードとバッジによって、案件の成功と解決過程が報告判断される。結果が成功だとしても、過程で落とされることがあるらしい。
正規メンバーへの登用が許可されるか内心とても不安だ。
しばらくすると、私の成績を計算しているのか、光りが点滅し始めた。それはそれは、私の処遇を決めるのを迷っているかのように……
……お願い、合格してください!
これでもかと私は一生懸命お願いした。せっかく解決したのだ、無駄に終わって欲しくない。少しこの職場にも慣れてきたのだ、中途半端で終わりたくもない。点滅する光が不穏な空気を醸し出すので、ハラハラとしながら見守った。
そして、光の点滅が落ち着くと、私の制服の襟元に変化が現れた。ピンクのハートだった刺繍は金色のハートに代わったのである。
「……おお!」
課長が驚いたような声を発した。
「か、課長?」
「おめでとう、無事試験に合格したらしい。」
「……本当ですか?」
「ああ、晴れて君も悪役令嬢おたすけ課の正規メンバーになれたらしい」
どうやら私は合格できたらしい! それを知った瞬間、腹の底から声を出していた。
「や、やったーーーー!!!」
さらに嬉しくてついその場でぴょんぴょんと跳ねまわった。
めちゃくちゃうるさいのだが、今回ばかりは周りの先輩方も、私の結果を聞いてくれていたらしく、にこやかに拍手を送ってくれた。
金色の刺繍は正規メンバーの印らしい。そういえば、周りの先輩も金色の刺繍がついている。
課長も喜んでくれている。と思いたいが無表情で全然わからない。拍手してくれているから喜んでいると判断しよう。
そして、しばらく熱りが覚めただろうタイミングで課長が言った。
「だが、まあ……上も評価については非常に迷ったらしいな。そりゃヒーロー課を巻き込んだりと色々しでかしたらしいしな。寛大な対応だったんだろう。今回は大目に見てもらったらしいが、くれぐれも自分勝手に判断するのはやめるように」
褒められると思っていたのに、怒られてしまった。解せぬ。
だが、今の私は機嫌が良い。少しくらいのお叱りも聞いてあげようと思った。
と、同時に私の無茶なお願いや相談を聞いてくれた課長を思い出した。追加戦士課の課長は部下の意見をあまり聞いてくれそうな雰囲気ではなかったが、うちの課長は相反して私の意見を聞いてくれた。割と大変だっただろうに……。気になったのでお礼も含め聞いてみた。
「あの、課長。今回は色々とフォローして下さってありがとうございました。私の意見は自分でも無茶があると自覚していたくらいには、課長から許可が下りるか不安だったのですが……私の意見を受け入れてくれるのですね。」
すると、課長は気にしていないと言わんばかりの口調でこう答えてくれた。
「なぜ私が否定しなければならないのだ。合理的で且つ、形式に囚われない斬新な発想は大事だ。エミリー、お前がこれで出来ると思ったんだろう。なら私はそれを手伝うまでだ」
なんていい先輩なんだ……部下の意見を頭から否定することもなく、きちんと聞いてくれる。それだけでも焦っていた私にとってとても頼りになった。
イレギュラーの事案の担当を試験に言い渡された時には恨んでしまったが、やはり悪い人ではないらしい。
今後もこの人の下で頑張ろうと思えた。
◇◇◇◇◇◇
そして、私に新たな案件が言い渡された。
「今回は再び王道案件を担当してもらう。前回は少し無茶をさせてしまったからな。これでまた初心に戻りつつ、解決をしておくとよい。」」
「ということは、ノン悪令嬢で、しかも本当の令嬢を相手にするってことですね」
「そうだ」
今回は平和に進められそうだ。思わずガッツポーズをする。
正規メンバーになった私にはもう余裕である。意気揚々と出発した。
しかし正規メンバーになったからと言って、油断してはいけなかったのだ。
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