女子高校生の日記 二
__五月十日__
こんなにも長い日記を書いたのは初めてだ。昨日のは信じられないくらいに長い。
お父さんが、近所の赤子の夜泣きがうるさくて眠れないと言っていた。
__五月十一日__
信じられない。また床の扉が開いた。でもこの前中に入ったし、今日はそのまま閉めた。
家の中でもまだかなり寒い。でもまだ暖炉をつけるほど寒くはないので、どうしようもない。あーあ、早くあったかくならないかなあ。
__五月十二日__
廊下に紙縒が落ちていた。捻ったあとがあり、『武』『ミツコ』と書かれてある。『武』の方は、後ろに何か文字があったように見えるが消えていて読めない。薄汚れていてかなり古そうなので、少なくとも家族の誰かが書いた訳ではないだろう。なんとなく捨てるのも躊躇われて、私は部屋に持ち帰った。
お父さんの言っていた近所の赤子だろうか、夜泣きがうるさくて眠れない。
__五月十三日__
また、昨日の夜のことだ。日記を書いて布団に潜り込んで睡魔を待っていたけど、一向に眠くならなかった。本当に至近距離で泣かれているように、ぎゃあぎゃあ煩いのだ。でもじっとしているうちに、あることに気がついた。
近所じゃない。下だ。泣き声が下から聞こえる。その瞬間私はあの隠し部屋を思い出して、ぶわっと鳥肌がたった。でも、あの部屋には何も無かった。あそこに赤ちゃんがいるわけない……。
いつの間にか私は、布団を出てあの隠し部屋に行こうとしていた。そして、扉がすぽっと外れる。あのときから枕元に置きっぱなしの懐中電灯を持って、私は恐る恐る暗闇に足を突っ込んだ。
降りていくうちに、泣き声はどんどん酷くなっていった。この前よりもずっと寒い。ああ、この下にいるんだと直感的に悟った。そこからはなぜか落ち着いていて、泣き声はどんどん酷くなっていくのに、私はどこかぼうっとしていた。
とうとう床に足が着く。やっぱり二階に上がる階段と同じくらいの段数か。でも今回は少しだけ少なく感じる。
両足を着けたとき、全身が物凄い寒気に襲われた。真冬みたいだ。私は懐中電灯で周りを照らすのが怖くて、もう上に上がろうとしていた。言い訳のように、階段の段数を数えようと自分を誤魔化した。
一、二、三、四……。十三段だった。西洋ではたしか十三という数字を嫌っていなかったか? なぜ? 忌み嫌うものでは……。
私は汗をぐっしょりかいた体で、なんの躊躇いもせずに布団に頭まで潜った。
__五月十四日__
お母さんが死んだ。口から血を流して。(病名などの記述はありませんでした)
__五月 日__
家の中が寒い。
この家で過去に殺人事件があったなんて、知らなかった。(ここから日数が空欄になります)
__五月 __
お父さんがおかしくなってしまった。どうしよう。私はお母さんじゃないのに。痛い。
__五月 __
お父さんが死んだ。首を刃物で切られていた。
__五月 __
もう駄目かもしれない。
__ __
おかあさ
(これ以降記述は一切ありません)