表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/54

STEP0-4 『シミュレーション結果:蒼馬梓が日記をつけていたなら(3)』より抜粋-2

 俺は何をやっているんだ……

 ガチにナナ狙いできたお嬢を見た瞬間、モーションをかけていた。

 ナナを幸せにしてやりたいんじゃなかったのか、俺は。

 うさぎちゃんにはそのまま演技を続けろ、そして調査終了直前に振られろと命令された。

 報酬はなんだと聞いたら君の命だと返された。シスコンこええ。

 みーにゃんは癒し。



 七瀬の塔の探索はちょろかった。

 それよりあのオリエンタルイケメン野郎だ。ナナへの態度が怪しい。

 亜貴と連携して、万一がないようにしなければならない。

 つか、エリカちんもなんだか怪しい気がするんだな……つかこいつエリカ・エトワールに激似。目赤くしたら完全に本人だろこれ。

 ホークちんのプチマフィンがゲキウマだった。ダークホースすぎ。



 うさぎちゃんに壁ドンされた。

 お嬢の水着姿を見た、さらにはお姫様だっこしたって……

 俺はまじめに人命救助しただけなのに!!

 おにーちゃんによると、気に入られてるからだそうだ。嫌っ!

 ナナと此花たちは相変わらず仲がいい。

 ナナは、俺もその一員だといってくれる。

 でもそれが事実ではなく、願いであることは俺にだってわかっている。



 今日もまた痛感した。おふくろさんは苦しんでいる。

 なんとか、俺をナナの友として、受け入れようとして。

 旦那に傷を負わせ、息子たちを病院送りにし、家を荒らしたクソヤロウを。

 あのひとは、そんな気持ちをすてきれずとも、歩み寄ろうとしてくれている。

 やはり、俺はナナから離れよう。

 この調査が終わったら、離れる方策を考えよう。

 これではおふくろさんが不憫すぎる。そしてナナも。

 大事なやつや、そいつの大切な人にあんな笑い方させてまで、でかいツラなんかできない。

 ナナがしあわせで、何の心配もなく笑っていられるなら、それさえわかるなら俺はいい。

 明日はナナと思い切り遊ぼう。

 これからの、一生の思い出にできるように。



 ナナがどんぶりプリンつくってくれた! 俺のためにって!!

 そうして言ってくれた。俺のためにビーチパーティー企画してるって。無理になってもフォローしてくれるって。

 ダークヒーローじゃない、ほんとのヒーローにしてやるから、ずっと一緒にがんばろうって。

 嬉しかった。

 そうできたら、どんなにいいか。

 家族に無理ない範囲でと答えた。つまり、時限式の断り文句だ。

 だまくらかしてすまない、ナナ。

 でもここで泣かれるのは耐え難かったし、せめていまはまだ、ナナの笑顔を見ていたかった。

 この笑顔が嬉しい。それは、本気で本当なのだ。

 これはどういうきもちなのだろう。俺にはわからない。

 でも、明日なんかこなきゃいい。



 エリカ・エトワールとオリエンタル野郎どもにクーデターをくらいかけた。

 ナナは全てを知ったうえで、全てを許してやった。

 ほんとにもう、あいかわらず聖人すぎだろ。

 だから、ほっとけなかったんだが。

 どうしよう。これじゃ、離れられなくなっちまう。



 打ち上げで酔っ払ったユーのやつめがナナを抱えて「明日から会えなくなるなんてさびしいですー!! もうホンキでうちの子になってくれませんかー?!」とのたまっていた。

 完全に通報案件だ。とりあえず軽く後頭部どついておいた。

 ともあれやつらは『真面目に、竜樹に移ってはいかがか』と言ってくる。

“俺にとっては”願ってもない話だ。俺は首輪ナシで大手を振って外を歩ける。そうすればナナの悲しそうな顔も減る。

 でもナナは、家族とほとんど会えなくなる。YESは言えなかった。

 だが、ジゥはアドレスをよこしてきた。

 お詫びのしるしです、困ったときには連絡してください、なんでもひとつ願いをかなえて差し上げますと。

 いや、まずそのなぞの青だぬきの着ぐるみの理由を教えろ。よっぽどそういいたかったが、んなことを言えばそれが願いと取られるのだろう。

 へたにこいつを使えば付け込まれる気しかしないが、まあそこはやりようだろう。



 俺とナナはけんかした。

 ナナは、七瀬と此花の顔合わせの席に俺も連れて行くといったのだ。

 馬鹿言うな、めちゃくちゃになるぞ。だいじょうぶ、めでたい席だもの。

 そんな押し問答の末におふくろさんに電話して、俺の予測どおりの答えを聞いて、案の定しょんぼりしていた。

 此花心配するぞ。まずは祝ってやれよ。俺は外で待ってるからと説得したら、笑顔を作って出て行った。

 でも、宴会が始まってすぐ飛び出してきた。

 俺の胸に飛び込んで、声を殺して泣いていた。ひたすらに自分を責めて、泣いていた。

 もう、だめだ。もう、耐えられない。

 こんなにも優しいやつの、こんな顔をもう見たくない。

 いますぐ殺したい。愚かな俺の過去を。悪魔の取引だろうがなんだろうが利用して。

 例のアドレスに連絡すると、奴はすぐに現れた。

 そして思い起こさせてくれた。神の御座『高天原』の存在を。その持つ可能性を。

『高天原』は上空数千メートルにあるが、そこまでの足もやつらは都合してくれた。

 というか、俺と亜貴と一緒に来てくれた。

 もちろん都合も好奇心もあるのはわかっている。

 かまわない。俺はなんとしても、ナナをしあわせにする。

 そのために、愚かだった過去を殺すのだ。

 ナナを救ってやれるなら、何だって改変してやる。世界だろうが、俺の存在だろうが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ