表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/54

STEP0-3B 突入・高天原~梓の場合~

 アユーラ製小型飛行機のガラス越し、月色の牙城が浮かんでいるのが見えた。

 かつて自分テメェが作らせたものとはいえ、改めてこう見ると、威圧感がパねえ。

 まあ、そうでないとヤバいのだから、いいとしよう。

 そんなことを考えていると助手席からユーが振り返り、ニコニコしながら言った。


「さて、設計図によれば『御座トロンの間』は、正面入り口からまっすぐ50mの地点ですね。

 じゃ、いったん力を解除してください皆さん。行きますよ」

「いや、マジだいじょぶなのかそれで。」

「理論上はいけるはずです♪」

「かんっぜんにフラグじゃねーかそれ……」

「わざわざ毒の沼地を徒歩で突っ切るなんてあほらしいでしょ?

 お宝のところまで来てから『浮上』すればいいんですよ」

「そりゃーそーだけどよー……」

 だが、その表現に『ツイブレ』マニアのおにーちゃんが食いついた。

「うんうん、まったくその通りだよ!

 さ、梓。いい子で解除しよう、ね?」


 解説すると『ツイブレ』――『ツインブレイブ』にはこんなエピソードがある。

 勇者一行が重要アイテム『女神のたてごと』を手に入れようとするのだが、先回りした毒使いの四天王の手によって、『たてごとのほこら』のまわりは広大な毒の沼地とされていたのだ。

 さらにはその上空を、巨大な飛竜が巡回しているという無理ゲー状態。

 勇者たちは幼馴染の発明家が作り上げた潜水艇にのりこみ、飛竜の目を盗んで沼地にもぐる。

 そのまま水中をつっきって、無事にたてごとのほこらにたどりついた。

 だが。


「んでもって、帰り道には飛竜に見つかって襲われるっつーパターンじゃねーのかえっ、おにーちゃんたちよ?」

 するとユーはあっけらかんと笑った。

「はっはっは、これは一本取られましたね。

 確かに我らは『竜』樹ですが、そんなことはしませんよ。

 ……これは、君たちへのお詫びなんです。

 奈々緒くんには我々も、しあわせになってもらいたいですからね」


 運転席で、今日は着ぐるみを着てないジゥが、前を向いたままぽりぽりとほっぺたをかいているのが見えた。

 あの調査の間に知ったのだが、これは奴が照れくさいときにやるクセだ。

 まあ、信用していいだろう。何だかんだ言って、こいつらも奈々緒のことは大好きなのだ。


「『高天原』についてのデータも取れますしね♪」

「結局そこかいっ!」

 突っ込みつつも、これはわかっていたこと。前提を覆すに足ることでもない。

「っじゃーとっとと行くぞ、ホレ」

 軽く言いつつ能力の準備を解除すれば、すっと目の前の景色が消え去った。

 残ったのは空の向こう、こうこうと輝く満月だけ。

 いや……なんつーか、わかっていてもシュールなものだ。

「はーい、それじゃいいって言ったらまた準備お願いしまーす」

 一方ユーは平然。ちびっ子を引率する先生のようにのたまわる。

 脱力しつつも、俺は深呼吸を繰り返し、自分のテンションを調整した。

 心の中で繰り返す。


 俺はなんとしても、ナナをしあわせにする。

 そのために、愚かだった過去を殺す。

 ナナを救ってやれるなら、何だって改変してやる。世界だろうが、俺の存在だろうが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ