STEP8-4 そのこたえは、衝撃の~咲也と朔夜の場合~
その後。
俺は思い切ってサクを呼び出した。
場所は、唯聖殿の前庭。
雑談しながら散策し、話の途切れたタイミングで切り出した。
「あのさ、サク。そろそろ聞いてもいいよな。
あのときスノーに言われてたことって、なんだったんだ?
『キオク』のことじゃ、ないんだよな?」
「……すでになくなった過去だ」
とたん、サクはびみょーな顔で目をそらした。
「えー! めっさ気になるんですけどー!!」
「お前はそれについてすでにヒントとなる言葉を聞いてしまっているはずだが。
まあ、すでになくなった過去だ。わからなければ気にするな、忘れろ」
「逆に気になる!
っていうか、そんなに隠さなきゃならないこと?
その……親友の俺、相手でも?」
サクはあのあと、いってくれた。
心配をかけて悪かった。もうあんな隠し事はないし、これからは本当の親友として、お前にもっと、いろいろ話すことができるからと。
それでも、目の前のサクはいう。
「……それを聞いたら、お前は俺の親友でなくなる。そういった類のことだ」
しばし記憶を探った俺は、ほどなくして『ある結論』にたどり着いた。
ああ、そうだ。そうだった、サクはあのときも、あのときも。
確かに、口さがないやつはいろいろ言うかもしれない。
けれど、俺はぜったい、そんなことしない!
俺はサクにまっすぐ向き直ると、しっかとやつの目を見て告げた。
「あのさ、サク。
俺、これでも理解はあるつもりだぞ?
そんなことでお前を軽蔑したりするもんか!」
「サキ……!」
「いいじゃないか、お互いの愛があれば。
俺は応援するぜ? ミーコがいいっていうなら、人の姿になってもらって堂ど」
「それだけは絶っ対にないからな。」
しかし、返ってきたのは衝撃のNOだった。
「え……
違うのっ? だって、こないだだってミーコとらぶらぶに」
「むしろどうしてそうなった?!
今の俺は人類だからな一応! 猫を相手に不埒なことは考えないからな?!
ったく、この天然ボケは……」
「えっ……
だ、だって、サクレアってサクスの好み全部のせだったんだろ?
つまりサクスの転生であるお前も根本的ににゃんこがタイプ」
「んなわけないだろ、このポンコツ神王!!
人生子猫からやり直して来いっ!」
「え――!!」
なんでだ、どうしてだ。俺にはさっぱりわからない。
だが、とりあえず子猫にされちゃたまんない!
俺は即座に逃げ出した。しかしやつは追っかけてくる。
まもなく襟首とっ捕まえられた俺は、それでも必死に抵抗した。
「ぎゃー! やめてー! にゃんこにするの反対!!
ホンモノの猫になる夢はもうかなったから二度目はいいですっ!!
話しあおう、話しあおうサクさん! モフモフはんたいいい!!」
此花 咲也:神王・豊穣神
もとフリーター。心優しくたくましく、ちょっとおっちょこちょいな愛され神王。
幼馴染で親友のサク、半身であるスノーとは、命がひとつにつながった一蓮托生の間柄。
白地に若草色のポイントをもつ、猫耳尻尾がときどき生えてくるらしい。
↑
<前世>ヴァル・サクレア=ユキマイ:(旧ユキマイ国)神王・豊穣神
サクスの『この大地は病んではないけど、もっと豊かに、幸せになっていい! 俺のちからでそうしてやりたい!』という想いから生まれた、ユキマイの大地の化身。
サクレアの花びらに混じってサクスの頭に降ってきた、小さくも元気あふれる子猫。
愛くるしく人懐こいその姿に、村中がうちのこに! と名乗りをあげるが、最初に拾ってくれたサクスとルナを選び、ヴァル家の子に。
ある日、水撒き忙しいから猫の手も借りたい! といったら、人のすがたに。
ヴァル家の末子として、緑を育む豊穣神の子として、ささやか~にみんなを助けるように。
その後ユキマイの王様になり、限りない優しさとすぐれた知性を発揮。
慈愛に満ちた善政をしいて広く世の敬愛を集め、幸せな一生を送った。
Sakuya Iwanaga May サクヤ・イワナガ・メイ:騎士長・ユキシロ製薬株式会社創業社長
むかしやんちゃぼーず、いまだいたい沈着な『完璧王子』(ただし末期シスコン)。
サキの幼馴染にして右腕。前世から騎士長としてお目付けをしてくれていた。
サキに対してはいろいろ、複雑な思いもあるらしい?
↑
<前世>ヴァル・サクス:神王の騎士長
もとは、真なる神の片鱗たる神猫。
ひとりはさびしいからと、月明かりで泉に映った自分の影から、妹のルナを創り出す。
その後すぐに旅の賢者ヴァル・メイに拾われ、人の姿になる。
ユキマイの大地を深く理解し愛し、その想いによってサクレアを生み出す。
愛するものたちを守るため文武を極め、当代最高の美丈夫と称賛される立派な青年に成長した。
即位前からサクレアの一の騎士として命を繋げており、その後も仲良く一生を共にすごした。




