STEP7-4 その後の世界のひとかけら
「行ったぞ梓!」
「っしゃあまかせろー! うりゃー!!」
「させるかオラァァ!!」
「ナイスクロウ! どぉりゃぁぁぁ!!」
そして今。
俺たちの目の前で『異能OK! 男女混合ビーチバレー大会!(夜間の部)』は佳境を迎えていた。
むかって右のコートには、サクとアズの最強攻撃力コンビ。
くじ引きでこの二人が組んでしまったときにはやり直ししようかとの声が上がったが、もう一方がまたすごかった。
むかって左のコートにいるのは、渡辺さんとクロウ。
実はこの二人は、ともに夜族の血を引いている。それもあって、夜間警備においてはツートップをつとめる実力者なのだ。
当然そんな二人が、やり直しなど要求するわけもなく……
もはやエキシビションマッチと化した試合は、決勝戦の後にぶっこまれることになったのだった。
ちなみに俺とナナっちは、昼間の部でかなりいいとこまで行った。
次回はぜひとも、優勝を狙いたいところである。
もっとも、アレらに戦いを挑む気には、正直なれないけれど……
『カリスマ』による事象コントロール(レシーブの補助にしか使わないが)。
ナイトウォークを絡めた変則移動。
さらには、重力・弾性操作による球威球速の爆上げ。
目の前のチートどもの戦いは、もはや外の人に見せちゃいけないシロモノと化していた。
俺の隣でナナっちが、でっかいため息をついた。
「すごいね、あれ……」
「まー夜間補正かかってる夜族と神だからなー……」
「っていうか、アズとメイちゃんがあんな仲良くなるなんてね。
俺も正直、ビックリだよ」
「それはいえてる」
そう、あの過去を葬ったあと、二人はみるみる仲良くなったのだ。
最初こそぎこちなかったが、ツイブレ談義を始めたらあっという間。
もっともサクは青、アズは赤というのはかわらないが、お互いの健闘は響くものがあったらしく、そこからのペースは早かった。
「俺、メイちゃんの気持ちちょっとだけわかっちゃったかも。
なんていうのかな……うん。ときどきやきもちやけてくる」
「え? サクがやきもち? だれに?」
「俺に。
あれっ、サクやん気づいてなかった?
最初の頃、メイちゃんちょっとだけ俺にやきもちやいてたんだよ」
「えー……気づかなかった……」
「だいじょぶ、今はそんなことないから、忘れてあげて。
メイちゃんは、お前を生んで育てて、ずっとまもってきた筋金入りのおやじさんだもん。
……大事にしてあげてね」
「ああ、もちろん!」
そのとき、サクのダイレクトリターンが決まった。
「ゲームセット! 勝者、メイ・蒼馬ペア!」
審判の松田さんが、ホイッスルを響かせ宣言した。
ビーチいっぱいの歓声のなか、ふたりはいっぱいの笑顔で、こっちに向けてかけてきた。
石川 琥郎:ユキマイ国防省・夜警騎士隊副長
夜族の血を引く青年。絵に描いたようなツンデレぶりが、不思議にみんなを和ませる。
長の立場は渡辺さんに任せ、トラブルにはまっさきに飛び出していく頼れる兄貴。
↑
<前世>クロウ:夜警騎士隊長“闇鴉”
少年時代、怪盗アズールに憧れて唯聖殿に忍び込む。しかしサクレアと鉢合わせ、そのほんわかぶりに『俺が守らなくちゃ!』という義務感に駆られ、その場で衛兵に志願した。
能力、人望、忠誠心とも申し分なく、すぐ夜警騎士隊の長に。
過ぎるほどのサクレア大好きっぷりからサクスのライバルと目されるが、さまざまな勝負ののちに負けを認め、以降サクスを兄貴と呼ぶようになる。
渡辺 美穂:ユキマイ国防省・夜警騎士隊隊長
普段はどちらかというと控えめ、けなげにがんばる系女子。ちょっとボーイッシュ。
冷静な判断からの支援を得意とし、長の立場を引き受けた。
シャサとは気の置けない友人。クロウとは……?
↑
<前世>渡辺 瑞穂:神王の戦乙女“月影の翼”
かつてイメイ半島に降り、夜族と交わったのちユキマイに戻った『渡辺』家の出身。
伝統の『弾む大地』と夜族の特徴を生かし、ユキマイ城の夜間警備に実力を発揮した。
シャサとはよき友人。クロウとはライバルとして切磋琢磨した仲である。
松田 明:ユキマイ国防省・参謀本部付
書生さん風の穏やかな青年。正反対のしあなとは仲がよく、いつもサポートしている。
和装のたもとやふところには、しあなお手製の秘密兵器がいろいろ眠っている。
↑
<前世>マーズ・ラフーラ:神王の騎士“暁の瞳”
ユキマイの民の一人。イサと同じく学者志望。
光の精霊の血を引いて視力が高く、見張り役をすることが多かった。
徐々に磨きがかかる能力を制御するため、メイ博士特製の眼鏡をかけていた。
はじめは調整が難しくよく物にぶつかっていたが、のんびりやの本人は気にしていなかった。




