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STEP1-3 突入・高天原~咲也の場合~

2019/07/02

表現を修正しました。

ふわりと頭髪が→全身の毛が


接続詞が直後とダブっていたため、修正しました。

 しかし、俺たちの中ではじけそうになっていた緊張感が、……

 まあでも、(以下同じ)


2019/08/02

 サク組の状況は、イザークによればこんな感じだ。。←このまるをいっこに

 雲の島の神殿。それが『高天原』の第一印象だった。

 しらじらと月色をした建物が、雲を固めたような地面に建っていた。

 前庭とおぼしき部分には何の飾りもなかったが、ひとつだけ、虹色の輝きが見える。

 それが意識に上ると同時にYUIから、通信でのフォローが入った。


『『テンペスト』です。中は無人です』


『テンペスト』。それは、サクたちが乗っていった小型機の名前だ。

 すぐ思い出した。虹色の輝きは、対『高天原』用特殊コーティングによるものと。

 あえかにゆらめく色彩の向こう、パールホワイトの地色と、緑で描かれたユキマイ国の紋章が透けて見える。

 間違いない。これは昨日、城の屋上から見送った機体だ。

 俺はYUIに頼んで、その近くに並べるように、俺たちの艇を着陸させてもらった。


 艇側面のドアを開き、展開したタラップを踏んで外に出れば、ふしぎな感触が靴底越しに伝わってきた。

 白い雲をかためたようなその地面は少しだけふわふわとして、それでいてふらふらとはしない、ふしぎな立ち心地、歩き心地。

 しかし同時に、ふわりと全身の毛が静電気で立たされたような、いわく言いがたい感覚にも襲われた。

 おそらくこれが『御座トロン』の影響だろう。

 出発前にカイルさんが言っていた――


『一度『高天原』に入ってしまえば、そのコアである『御座トロン』の影響力により、異能の力を発揮し続けている状態に強制的にされてしまうのです。

 少しでもきついと感じられましたら、無理せず一度、艇に戻り、お休みをお取り下さい。

 艇の中にいさえすれば、『高天原』用特殊コーティングにより、力の強制的な消耗は防がれますゆえ。

 前庭まで戻ることは難しくありませぬ。ただ、戻ることを念じさえすれば『神殿』が、自ずからその者を送り届けるようになっております』


 ――と。


 まさに至れり尽くせり。

 来るべきこの日を見越し、このようにしたのだとも教えられた。

 まったく、夜天族たちの先見の明には驚くばかり。

 目先のお菓子にあっさりつられて騙された、どっかのポンコツ神とは大違いだ。

 サクに言わせれば、そのへんはあまりかわってないそうだが……いやいや、そんなことはない。断じてそんなことはない。そう思う。たぶん。

 ともあれ、艇の脇に全員そろったのを確認し、俺はみんなに一声かけた。


「みんな、ここで最終確認しとこう。

 サクやアズールたちはすでに『御座トロンの間』にいると考えられる。

 俺たちはとりあえず、そこを目指す。

 彼らを見つけて、手助け、もしくは保護をして、艇にもどる。

 そうして、みんなで一緒に、無事にユキマイに帰る。

 ――それが、俺たちの目標だ。

 また、神殿は入るものによって内部構造を変えてくるらしい。そのため、気をつけていてもはぐれることがあるそうだ。

 けれど、戻りたいと思えばすぐ前庭に戻してくれるようになっている。

 もしはぐれたり、何かあったなら、すぐ連絡しあおう。

 なにより、これは忘れないでくれ。『すこしでもきついと感じたら艇のなかにもどること』。

 絶対、無理はしたら駄目だからな?」

「うん、ぶっちゃけ最後は誰よりサキにいいたいわね。」

『同意です。』

「あ、ハイ、ワカリマシタ……」

 スノーとYUIに畳み掛けられ、俺は形無しだ。

 まあでも、俺たちの中ではじけそうになっていた緊張感が、笑いとともに和らいだのだからよしとしよう。

「それじゃ、行くぞ!」


 * * * * *


 しかし、大きく開いた神殿の入り口をくぐって五分もしないうち、すでに俺たちはバラバラになっていたのだった。

 飛び交う戸惑いの声をイヤホンから聞きながら、YUIと意識接続エンゲージ。簡易マップを脳裏に展開すれば、こんな状況であることが判明した。


 俺、スノー、ルナさん、ナナっちはそれぞれバラバラ。

 シャサさんとイサ、ゆきさんとロク兄さんの二組は、それぞれ相方と。

 皆、俺が今いるような、白くがらんとした一本道の通路にいるらしい。


 サク組の状況は、イザークによればこんな感じだ。

『いま俺たちは『御座トロンの間』ってとこにいる。二人とも無事だ。

 サクがプレイヤーになって歴史改変のシミュゲーやってるんだが、難度が高くてな。なかなかうまくいかねえんだ』

「マジか……

 わかった、俺たちもできるだけ早くそっち行って、手伝うよ」

『あー……まあ、そうだな。

 お前らがここいるってことは、もうサクの指定したリミットはすぎたんだろ?

 来てやってくれ。その間は俺にまかせとけ』


 アズールと亜貴はなんと、ユーさんとジゥさん――竜樹国代表の二人といて、これまた歴史改変のシミュレーション中らしい。

『ユーがうまいことやってさ、ビークルごと『御座トロンの間』にいるんだ。俺たちはもうしばらくここで粘ってみる』

「え、ちょ……あれっ? サクたちといっしょじゃないん?

 サクとイザークも『御座トロンの間』でシミュゲーやってるみたいなんだけど……」

『え、マジ? いや、ここにいるのは俺たちと、ナビ役のこうさぎちゃんだけだよ?』


 カイルさんやしあな、YUIによれば――

 現状は『神殿』が俺たちをそれぞれ導き、それぞれにふさわしいと判断する位相を提示している状態と考えられる、とのことだった。

 一度艇に戻ろうかという声もあったが、そういうことならば繰り返しになるだけだろう。

 各々いまの状態で、できる限り進めてみよう。話し合いはそういう結論となり、俺たちは再び動き出した。


 同時に俺は、脳内マップへの仲間の位置の投影を諦めた。

 実はああやって話している間にも、各パーティーの位置表示が変わっていたのだ。それこそ100回は下らない勢いで。

 おかげでいいかげんくらくらしてきていたのだが、そういうことなら納得だ。

 しばらくは音声通信だけでつながりながら、探索を進めてみるのがよさそうだった。


 * * * * *


 俺の目の前には、一本の白く、果ての見えない通路がひたすらつづいていた。

御座トロンの間』にたどり着いた二パーティー以外は、似たような状況にあるらしい。

 この道で、本当に大丈夫か。一度だけ沸いてきたそんな気持ちを振り捨て、ひたすらに歩を進めていくと、通路はいつの間にか広間になっていた。

 通路の幅が広がった様子でも、扉をくぐったわけでもなかった。本当に“気がついたら”そこは、白い柱に囲まれた、謁見の間のような場所に変わっていた。


 がらんとした、白っぽい部屋。

 明るいとも、暗いともいえない、微妙なひかりが、どこからともなく室内を照らしている。

 熱くもなく、寒くもなく、乾燥してもいなければ、湿っぽくもない。

 まるで、夢のなかにいるかのような感じがした。

 しかし、これが夢ではないのははっきりしている。

 そこにはひとつ、圧倒的な『現実』が鎮座していたのだ――


 白い、ひかりの輪。


 広間中央にぽつんと、30cmほどの高さの台座と、その側面に刻まれた三段の階段でたどり着く、シンプルな玉座がある。

 その玉座の上に、まるで座したものの冠となるかのように、それが浮かんでいるのだ。

 まちがいない。これは『御座トロン』だ。

 かつてサクレアだったころに見たそれと、寸分たがわぬ輝きをたたえつつ、それは音もなく静かに回転し、異能の力をあふれさせ続けていた。


 しかし、やはり、誰の姿もここにはない。

 うん、どうしようか。無駄と知りつつも俺は、人影を求めて視線をあちらこちらと飛ばしてしまう。


「サクたちは、亜貴たちは、どこにいるんだ……?」

「サクたちは、サクのへやにいるよ」


 ひとりごちれば、鈴をふるような澄んだ声。

 えっ、と振り返って俺はさらに驚いた。


「ル、ルナさん……?!」


 玉座の前に、黒い髪、白い服の子供がひとり。

 いつの間にか立っていて、じっ、とこっちを――俺を見ている。

 その子の頭に猫耳が生えてなくて、腕にちっさな黒い子猫を抱いていなかったら、俺はたぶん悲鳴を上げてた。

 しかし、実際俺が上げたのは別の声。


 そう。その子の顔は、まるっきりルナさんにそっくりだったのだ!

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