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二.塔の前にて

 こうして、春飛サスケは、不思議の国の中心にある、大きな大きな塔の近くまでやってきました。

 なんだかんだ言って、サスケも忍者。冬の冷たい風をも追い越して颯爽とここまで走ってきました。

 さて、これからどうするかと物陰から塔を見やります。


 なんということでしょう。


 大きな大きな塔が、氷の中に包まれているではありませんか。

 あまりに寒い日々が続いたせいで、凍ってしまったのでしょうか。

 窓という窓、扉という扉が凍って入れそうにありません。

 その塔を、冬の忍者達が守っています。扉の前や物陰に隠れて、見張りをしています。サスケの手にかかれば、見つからずに塔の中に入ることもできますが、そもそも入れる仕様になっていません。

 さて、どうしてこんなことになったのかと、冬忍者達に訊いても、彼らは話をしてくれないだろうし、捕まって袋叩きにあうでしょう。

 冬の者は、春の者と仲良くしたりしません。特に忍者同士は。

「さあて、思案のしどころだぞう。冬の女王様に会うにはどうすればいいか」

 その時です。

「おい、そこの怪しいやつ」

 誰かに呼び止められました。

 サスケはびっくり仰天です。

 まさか、見つけられるとは思っていなかったものですから。結構、天狗なサスケです。

 呼びとめられた方を見ると、結構イケメンな冬の忍者の格好をした美青年が立っていました。

「怪しいやつめ、そこで何をしていた」

 サスケはもちろんとぼけます。

「おいらは冬の女王様のいる塔を見物に来ただけだよう。ただの観光客だよう」

 イケメンは鼻で笑います。

「この雪の降りしきる道を足跡一つつけずにここまで歩いて来るような観光客はいまい。それに気配を完全に消していたぞ。何より観光客の癖にカメラも持ってないではないか。さては貴様、どこぞの間者だな」

 と、このイケメン突然足元の雪を一掴みすると手裏剣の形にして投げつけてきます。

「ええい、忍法雪手裏剣を喰らえ」

 道具を持ち歩かずに使える冬忍法です。

 サスケは飛びのきます。

「待ってくれ。おいらは敵ではない大王様の密命を受けて調べに来ただけの春忍者の春飛サスケだ」

 こういう場合は、嘘をつかないというのも、一つの詭道(嘘をついて相手を騙す術)であります。

 しかし、イケメンは全く信じてくれません。

「そんなでたらめ信じるものか。サスケ? ああ、聞いたことがあるぞ。馬鹿ドラ息子の甲斐性なしのサスケだな。そんな奴が何をしに……。何やら怪しい! お前はこの霜隠しもがくれサイゾウが成敗してやる」

 と、どうやらイケメン特有のヒロイックな勘違いをしているようです。これだから顔のいい男は困ります。

「冷静になれと言っても聞けないようだな。仕方ない、一度頭を冷やしやがれい」

 と、サスケも抗戦意欲をむき出しにします。


 二人の忍者は雪原に足跡も残さず、他の警備忍者に気付かれることなく戦います。

 冬忍は降り積もる雪を武器にする忍法を使います。対するサスケは春忍法が使えませんが、鍛えた体術で応戦します。

「むむ、ドラ息子との噂だったが、やるじゃないか」

「そりゃ、皆が仕事をしている間、こっそり外に出ては修業していたからなあ」

 二人はしらばくの間手裏剣を投げて、それを投げ返して、突いて蹴ってと打ちあいます。

 互角の戦いを繰り広げ、少し頭に登った血が降りてきました。

「おい、ここまでにしよう。息が荒くなってきた。白い息が見つかって他の忍者に横槍を入れられてもつまらん」

 どちらともなくそう言って、一度その場を離れることになりました。


 さて、塔から少し離れた蕎麦屋で、二人は話します。

「霜隠、一体何が起きているってんだい?」

「俺のことはサイゾウと呼べ。それが誰にもわからないから困っている。四か月前、女王様は一人で塔にこもられて祈祷を始めた。本来ならとっくに出てこられてもいい時間なのに、まったく扉が開く気配はなく、塔も国も全てが凍り始めて慌てて無理にでも扉を開けようとした時には、すでに凍ってしまった後だった。もう、冬の忍者の力ではどうしようもない」

 蕎麦をすすりながら、サスケは呆れます。

「だったら、よその里にでも助けを求めればよかったんだ。夏忍ならあっという間に氷くらい解かすだろう」

「しかし、このような異常事態、忍法しか考えられない。もし他の里の忍者の仕業かもしれないと思うと助けを求めるのも危ないと思ったのだ。」

 ふうむ、とうなった後、汁まで飲みほして、サスケは言います。

「それで、サイゾウ。俺のことは信じられるのかい? 助けを求められるのか?」

「お前のような立派な忍びは久しく見ない」

 サイゾウは、少し悩んで。

「いいのか?」

「いいとも」

「頼む、春飛」

「サスケでいい。行こう」

「行こう」

 そういうことに、なったのでした。



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