エピローグ
外から鳥のさえずりが聞こえてくる日曜の朝、俺は学校に向かっていた。理由はえ~と……体育大会のクラス出し物の準備、だったかな?体育大会は9月なのに、2ヶ月も前から準備のために休日を潰すことになるとは……。
あの日、目を覚ますと俺は自室のベッドにいて、日付も7月15日(月)になっていた。1週間も7日間だったし、父さんは死んだままだった。
けれど、変化した部分もあって、啓介とは高校が同じになっていて今日も一緒に登校中だ。啓介とはクラスが違うのだが、サッカー部の練習があるとかで学校に行くのだそうだ。それから……つむぐは、学校からいなくなっていた。それどころか、存在自体が無くなっていたのだ。禁忌を犯した罰ということなのだろうか?
学校に向かう途中、交差点で止まったときにその啓介が話しかけてくる。
「あ、そうだ……聞いてくれよユウちゃん!」
「だーかーらー!ユウちゃんって呼ぶのやめろって。で?今度はどうした?また、フラれたのか?」
友人を横目で睨みつつも答える。
「ひどくね?!いや、クラスの女子なんだけどさぁ…。」
聞くと、クラスの女子の1人が自分のことを『ちゃん』付けで呼ぶらしくそれに困っているらしい。て、自分のことは棚上げかよ。
「もしかしてその子、啓介のことが好き…とか?」
「それはないね!あったとしても願い下げだよ。俺はもっと女の子っぽい………」
と、今度は好きなタイプについて語り始めた。
「ほら、信号変わったから行くぞ。」
「俺の話スルー?!」
啓介の話を聞き流しながら自転車をこぐ。後ろからは啓介がなおも話を続けようと声をかけてくる。
「ユウちゃんも、好きやつぐらい作れよー?」
「もう、いるよ。」
「まぁ、ユウちゃんにはまだはや…て、え?いるの?!誰?名前は?!」
「交野つむぐ、だよ。」
「かたの…?そんなやついたっけ?」
啓介がうんうんと唸っている。うん、よし、放っておこう。そうこう言っているうちに俺たちが乗る自転車は例のコンビニの前まで来た。
「あ、俺ちょっと寄って行くわ。」
「え?でも……。」
「大丈夫だよ。それより啓介、お前時間大丈夫なのか?」
啓介が携帯で時間を確認する。うちの高校って、たしか携帯の持ち込み禁止だったと思うんだけどなぁ…。
「やべぇ。じゃ、俺先に行くわ。」
「おー。」
啓介が行ったのを見届けてからコンビニの入口付近に自転車を停めて屈んでみる。手を合わせ目をつぶって少しの間色んなことを考えてみる。
啓介のことを『ちゃん』付けかぁ……などと、どうでもいいことを考えて笑う。
『言葉は力』なら……言葉に出せば…。
「つむぐに……大好きな彼女に、また会えますように。」
言ってて恥ずかしくなった。早く学校に行こうと思い立ち上がったときだった。
「ばっかじゃないの?」
背後から、懐かしい声が聞こえてきた。後ろを振り返ると……そこには正真正銘、交野つむぐがいた。
「えっと………ただいま…?」
少し照れ臭そうにそう言う彼女に俺は駆け寄り抱きついた。
「えっ?ちょっ………」
「おかえり!つむぐ」
彼女の手がゆっくり俺の背中に回された。
「……うん、ただいま。」




