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最後は笑顔で

「あのね…私は、ずっと君のことが好き……だったの。」

 つむぐは、絞り出すようにそう言った。俺には、嬉しさを勝る驚きと疑問があった。

「…………なんで?」

「中1の頃、私の命を…この世界をあなたは救ってくれたの。そのときの君の言葉が、本当に嬉しかった。」

「………………。」

「…………君は、覚えてないかもしれないけど。」

「…………。」

 …あぁ、思い出した。俺は確かあのときこう言ったんだ。

「『逃げたいなら逃げればいい。逃げて、向き合えると思える力をつければいいんだ。前に進むことだけが正義じゃないんだから。ただし、逃げ方を間違えちゃ駄目だ。向き合う準備が出来なきゃ駄目だ。生きて、前を向く力をつけるんだ。』」

 つむぐがゆっくりと口にする。思わず笑ってしまう。よく覚えてるなぁ、と。

「なんというか……ガキだったなぁ。」

「ううん…私は、その言葉に救われたの。ありがとう。だから、今度は私が……。」

 そう言うと、彼女はあの端末を取り出した。どういうことだろう?

「君のお父さんを救ってあげる、君の苦しみを……。」

 彼女の手が震えながら端末を操作する。いや、そんなことより…………考えるより先に動いていた。

「……?!ちょっと、何するの?!」

 彼女は俺が手を掴み止めたことを疑問に思ってるようだった。

「もういいよ、つむぐ。」

「でも……」

「俺はもう大丈夫。母さんもいるし、啓介、たづきちゃんも頑張ってるんだ。一緒に強く生きるって約束したんだ。それに……つむぐと出会えた。」

 彼女の手を引っ張って抱き締める。その状態で話を続ける。つむぐも、初めは戸惑っていたがすぐに落ち着きを取り戻していた。

「お前と出会えて、短い間だったけど…楽しかった。色んなことを考えられた。何より……大事なことを学べた。」

「それって……?」

 つむぐが上目遣いに俺のことを見上げてくる。やっぱ可愛いなぁ。その視線に俺は笑顔で返して目を閉じる。とてもあたたかい。心地よい、人の温もりだ。

「『言葉は力』だよ。ありがとう、つむぐ。大好きだよ。」

 彼女の嗚咽が聞こえてくる。それも、俺の意識とともに遠のいていく。俺の耳に微かに聞こえたのは、つむぐの最後の言葉だった。

「また会おうね。大好き……佑ちゃん。」

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