終わらないという選択
「わたし……小学校が皆と別で、入学式のときから浮いてて…仲良くしたいのに、話しかけても……無視、されて。」
彼女が語った自殺理由はイジメだった。たづきちゃんはこの春、俺たちと入れ違いでこの中学に入学したのだ。
「たんにんのせんせい、に相談……して、仲良くするよう言ってもらっ…たけど、やっぱり無視…されて……物とかもなくなり、だして……」
担任の、先生……?岡ちゃんだろうか?つむぐも同じ疑問を持ったのか、話の途中に質問を挟む。
「それって、岡ち…岡先生のこと?」
「ううん……岡先生は…学年主任、だから。」
へぇ……あの先生偉いんだ。などと感心してみる。なおもたづきちゃんは続ける。
「ネット…の、裏サイトに悪口……いっぱい、かか……私、もう…怖く、てつらく…て……何で?!私は、なに、も…してない、のに!もう嫌……だから、死ん…で、後悔……させたく、て。」
彼女はそこで口を閉ざす。理由はもう述べた、ということなのだろう。俺たちは何も言わなかった。沈黙。岡ちゃんの声だけが下から微かに聞こえてくる。何言ってるか全然分からないけど。少し落ち着いたたづきちゃんが再び口を開く
「だから、邪魔…しないで、ください…。」
そう言って、たづきちゃんは飛び降りようとする。つむぐの顔には諦めが、たづきちゃんの目には決意が……それぞれがそれぞれの想いを胸に動こうとしていた。あぁもう!やらない後悔は嫌いだ!俺はたづきちゃんの腕を掴んだ。
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「あのさ、そんなことして何になるの?」
「えっ?」
「自殺して、確かに君のことをイジメていた奴らは後悔するかも…いや、後悔するだろう。もしかしたら、テレビが取り上げることで社会から非難を受けるかもしれない。」
「なら……」
「でもね?そんなの、一時的なんだよ。早かったら1ヶ月、長くても半年。1年もすればほとんどの人が忘れるよ。喉元過ぎればなんとやらってね。それじゃ、君をイジメていた奴らへの仕返しにならない。」
「じゃ……じゃ!私は…どうすれば……。」
「生きるんだ。生きて、何をされても耐えるんだ。そして、立派な人間として生きるんだ。」
「でも!私今まで1人で耐えてきて……もう…耐えられない…。」
「本当に1人なのか?」
「え?」
「確かに、誰も助けてくれないかもしれない。そういう意味では1人だ。けれど、心配してくれる人がいる。同じように、耐えて、生きてる人がいる。」
「…………。」
「心配してくれる人がいるから、俺とつむぐはここに来た。」
「…………。」
「俺の父親は事故で俺を庇って亡くなった。俺は今でも自分を責めている。それでも…生きている。」
「…………。」
「つむぐも、1度は自殺しようとした。」
「…………?!」
「それでも、その辛さを克服して今も生きている。」
「…………。」
「もし、君が辛くなったときは俺たちを思い出すんだ。直接助けることは出来ないかもしれないけど、支えにはなれると思うんだ。俺も辛くなったら君のことを思い出す。思い出して、また生きる。」
「…………。」
「だから、一緒に…強く生きようぜ?」
俺は少女の腕を離し、代わりに手を差し出した。
「………うん。」
少女はゆっくり、俺の手を握った。




