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サンタクロース株式会社  作者: 所長
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「そんな事ないよ」

 僕は何度も横に首を振った。

 僕の手を温めている、女の子の手に僕はもうひとつの僕の手を添えた。

 女の子の小さな手はとても温かかった。

 僕の中で何か堅く尖ったものが解けだしていくようだった。

「ありがとう」

 そう口にした途端、僕の両目から涙が溢れ出した。

 女の子の手が、ビクッと揺れた。

 僕はあわてて手を離して涙を拭った。

「どうして泣くの?」

 心配そうに女の子が聞いた。

「うれしいから…」

 僕は涙を流しながら微笑んだ。

 心に宿る真の願いの灯りに、知っているよ、忘れないでね、と共に祈ってくれる人が居るのは、なんて素敵ことなんだろう。

「うれしいのに泣くの?」

 不思議そうに女の子が聞いた。

「変だね」

 僕はそう言うと、女の子の頭に手をのせた。

「とても素敵なプレゼントをありがとう」

 女の子は目をぱちくりさせて僕を見た。

「サンタクロースお母さんと同じこと、言った」

「えっ?」

 今度は僕が目をぱちくりさせた。

「サンタクロースが祈ってくれるのは、素敵なことだって、お母さん言ってたの」

 女の子は、ぎゅっと両の拳を握りしめ、少し興奮したように言った。

 そんな女の子の様子をみて、僕は、自分が柔らかい笑みを浮かべているのを感じていた。

「そうだよ。君の祈りで僕の願いは叶ったから」

 女の子はまるで、花が咲き誇ったかのような笑顔を浮かべた。

「ほんとに?」

「うん」

 僕は力強く頷いた。

「さあ、もう、おやすみ。今度は僕が祈る番だよ」

 女の子はコクンと首を縦に振ると、布団に横になった。

「おやすみなさい、サンタクロース」

 僕は女の子の額に手をかざした。

 まもなく女の子は安らかな寝息をたてた。

「ほんとうに、ありがとう」

 僕は女の子を起こさないように、そっと呟き部屋を出た。

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